週刊PONTE vol.172 2022/02/28

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.172 2022/02/28
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉/板津大吾…投げないふたり Season2 第9回「みちたりる風景 – 『グランマ・モーゼス展』を見て 」

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

◆投げないふたり season2◆
話し手・板津大吾(PM Juggling)& 青木直哉

第9回「みちたりる風景 – 『グランマ・モーゼス展』を見て 」

世田谷美術館で、「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」を見た帰り。美術館附設のセタビカフェにて。モーゼスさんはアメリカの国民的作家と言われる。70歳から絵を描き始め、農婦としての生活をしながら、1961年に101歳で亡くなるまで農場を取り巻く風景を描き続けた、「絵を描くおばあさん」である。
参考:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00207

青木直哉(以下N)
先日また新潟に行ってきたんですけどね。

板津大吾(以下D)
雪かきの手伝いするって言ってたね。どうだった?

N
猫が7匹いる家で、可愛かったなぁ。……僕が行った十日町市は、新潟県でも特に豪雪地帯で。一晩で1mとか積もることもある。雪掘り(と現地の人は呼ぶ)をしないと、最悪の場合、家から物理的に出入りできなくなっちゃう。

D
東京にいると想像できない世界だね。

N
でも、大変ではあるんだけど、生物として「必要に迫られた仕事」があるのって、充足を感じるなとも思った。

D
ほう。

N
「とにかく雪掘らないと」っていう状況。都会でフリーランスなんかやっていたら特に、仕事をするタイミングも、それをどれぐらいするかも、とにかく全部自分で決める。外からの要因で決めることってあんまりない。もっというと、「この仕事はなぜ自分にとって必要なのか」すらも、折に触れて自分で言葉で確認しないといけない。「お金がないと生きていけないからお金を稼ぐ、そのために仕事をするんだ」って納得することは多いですけど、でもそれって生物的な必然じゃないから、どこか歯痒くて。それに引き換え、「これをしないと生きものとして死んじゃう」っていう仕事があるのは、もちろん大変だけど、孤立していなければ充足感もあるなと思った。

D
そういえばグランマ・モーゼスは、ロウソクを動物の脂肪から作る様子とか、農耕の風景とか、村のみんなでやっていた「生活に必要な仕事」を、これでもかっていうぐらい、同じような構図でたくさん描いていたね。それこそ、「これをしないと死んじゃう」っていう仕事のことを描いてたかもね。

N
うん。あれはモーゼスさんの生活にとって必要不可欠だった風景ですよね。キツイけど、充足があって、その風景のことを好きだったんでしょうね。好きだからうまく描けたんだと思う。

D
実際、「綺麗なものが好きです、それを描きます」っていうようなこともキャプションで書いてあったね。

N
モーゼスさんの絵が受け入れられるのは、人には「生き抜くために必要な仕事の風景」を求める気持ちが奥底にあって、その気持ちが絵によって呼び起こされるからかも。

D
絵そのものも、タッチとか結構抽象化されていたり、題材も全部かなり似通っているところがあるけど、実直な感じこそが、まさに素朴で、いいよね。

N
そうそう。あくまで自分のために描いてるのがよく伝わってきますよね。あとは、それがとにかくたくさんあるっていうのがまたいい。同じような絵が4、5枚ぽろっとあるだけなのと、500枚あるのとでは、与える印象がまったく違いますよね。「かさ」によって想いが物語られてる。

D
油絵以外にも、刺繍の絵なんかもよかったねぇ。

N
ね。いろんな表現のものが池の周りの石みたいに集まることで、その中にある大きな輪郭が見えてる感じがした。大きさを伝えるために、小さいものをたくさん作っていくみたいな。この対談もそういう部分はある。グランマと比べるのもなんなんだけど。

D
ああ、でも、自分がnoteでやっていることも、まさにそういう感じ。

N
毎日欠かさず書いてますよね。……あ、そういえば、僕は大吾さんが時折書く、息子についての文章がすごくいいと思ってて。まさに、「生物的な必要でやっていることについて」の文章だから。別に僕は子育てしてるわけじゃないんだけど、生物として、何か深いつながりを感じて、心が動きますね。

D
おお、noteで書いた文章の評価って、初めてもらった(笑)。そうか、なるほどなぁ。

N
あとは、毎日きちんと書かれていることへの信頼感も大きいな。モーゼスさんが自分と結び付きを感じる風景をひたすら描き続けていたのも、力強いし。故郷と毎日の仕事に持っている愛着というか、情熱に、繋がることができる。これ、ジェイの”REFLEX”と一緒だ。

D
その情熱をうまく形にするプロデューサーがいたっていうことも似てるね。展示で紹介されていたけど、グランマ・モーゼスにも、オットー・カリアーという、画廊主でプロデューサーみたいな人がいたから、こうして世界に知られていると。

N
うん。いろいろなことが繋がるなぁ。なんか、語る以外にも、情熱を形にしたいな、っていう気分にもなってくるな。

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☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介☆
遊び道具のひとつ
https://note.com/daigoitatsu/n/nbfc525989ec6
「こんな感じで遊び道具のなかに適当に混ぜるのが、ジャグリングに思いがこもりすぎている自分にとっては新鮮で心地いい。」
(記事本文より)
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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-最近、対談ではジャグリングについてあまり話していません。

-ウクライナにいるジャグラーの友人が心配になって連絡をとってみたところ、とりあえず今は無事だ、ありがとう、という返事でした。

-身の回りの人のノリだけを基準にして自分の立場を決定的に定めないようにする、情報が来たら、当然そこには感情が発生しますが、即座に反応する前に、いったんクッションを置いて、今問題とされていることはどういう様子をしているのかまずは把握しようと努めよう、その上で自分は何をするのか、しないのか決めよう、ということをコロナ禍の始まりくらいに学んだ気がします。

-遠くから届く情報はどんどん媒介者としての人が入っていくから、真偽が本当にわかりづらい、解像度が悪いことが多い、という問題もある。

-戦略としてユーモアを持つ、深刻すぎる捉え方をしない、ということがまず第一に大事だとおもう。不安や心配でいったんこわばった顔をほぐしてから、直視する、という順番がいい。感情は最後の砦である方が物事は進むんじゃないか。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (PONTE)

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