週刊PONTE vol.171 2022/02/21

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.171 2022/02/21
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉/板津大吾…投げないふたり Season2 第8回「“REFLEX” by Jay Gilliganに触れて」

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

◆投げないふたり season2◆
話し手・板津大吾(PM Juggling)& 青木直哉

第8回「“REFLEX” by Jay Gilliganに触れて」

アメリカ生まれのジャグラー、Jay Gilligan(ジェイ・ギリガン)。
”REFLEX”と題して、2022年1月28日から2月19日までソロショーを行った。*1
会場はアメリカ・NYだったが、ライブ配信によって日本でもオンライン視聴が可能だった。二人でお互いに鑑賞し、その後に感想を語り合う。

青木直哉(以下N)
どうですか、率直な感想は。

板津大吾(以下D)
ジェイはやっぱり研究者肌のジャグラーなんだって思ったね。地道に研究してきた成果を発表した、って感じでね。

N
そうですね。個々の演目自体は、すでに見たことがあるものも多かったな。招きネコがテルミンを鳴らす演目とか、毛糸玉をジャグリングする演目とか。「今までの総集編のような演目を作りたかった」とジェイは言っていた。今回の演目で際立っていたのはトークだな。半分ぐらい喋ってたんじゃないかな。

D
大学の講義みたいだったね(笑)。

N
ジャグリングの「これまで」と「これから」について、きちんと言葉を使って説明していました。あとは、ジャグリングの概念を拡張しようとしてた。「40年以上前に打ち上げられたボイジャーは、今最も地球から遠く離れた人工物だ。つまり、人類が成した最大高度のジャグリングだ。僕たちはまだ、何かが返ってくるのを待ち続けている」みたいな詩的な表現もあったり。全体的に、ほんの少しノスタルジックな公演でもあった。

D
全部聞き取れたわけじゃないんだけど、宇宙関係の話が多かったよね。BGMでも、ロケット打ち上げ時の通信の音声みたいなのが使われてたり。

N
そうですね。ジェイのお父さんがNASAで働いていたらしく、それも関係あるみたいですね。トークでは、太陽系の動きもジャグリング、水がコップに流れ落ちるのもジャグリング、とマクロとミクロ両方で視点の転換をして、目の前のジャグリングをより立体的に見せていた。しかし、ジェイが思うジャグリングをそのままぶつける、という、「手加減なし」のスタンスでやったのは英断でしたね。特に、興行的に失敗の許されなそうなNY(あくまで想像ですが……)でやったのはすごいんじゃないかと思う。ジェイも初めは逡巡、不安があったみたいなんですけど。プロデューサーを見つけてきて、協力してくれるサーカスカンパニーも見つけて、実現にこぎつけてね。

D
いや、そう、ジェイって、何かを「実現する力」が本当にすごいなって思うよ。

N
ホントにね。カリスマ性もありますね。やっていることにかかわらず、なんかすごいことしてるぞコイツは、って思わせる力があると思う。

D
同時に、だからこそ、ジェイのジャグリングは「これこそがジャグリング」っていう風には捉えず、むしろかなり振り切れた特異なものなんだと思った方が的確かも、と思ったりするね。

N
そうですね(笑)。その通りだと思う。でもジェイは、シルク・ドゥ・ソレイユ、ガンディーニ・ジャグリング、IJA最多メダリスト、ジャグリングの教授、とか、いろいろなところでジャグリングをする経験をしてきて、最終的に今これになっていて、やっぱりそのおかげで確たる信頼感が生まれていると思う。

D
そうね、正統派のジャグリングも十分に通過してきてる人だもんね。

N
演目の中で具体的に印象に残ったシーンってありますか。

D
クライマックスで、大きいボールみたいなものをカスケードしてたじゃない。中から次々にいろいろなものが出てきて、最後はなくなっちゃう、っていう演出。あれはガツンときたね。ボールがボールじゃない、違う存在に見えて。こんなやり方があったか! って悔しかったというか(笑)。あとは、機械がジャグリングをするとか、ジャグリングで音楽を奏でるとか、そういうシーンは、やっぱりいかにもジェイらしいなぁと思った。

N
うんうん。クラブを投げるリズムで音楽を作るところも、カッコよかったなぁ。

D
なおくんはどう?

N
終盤で、舞台が暗くなって、円盤とボールだけが映って、ジェイが円盤をコマのように回して、その円盤が静止する直前まで4ボールファウンテンを投げて、ボールに繋がれた糸がどんどん編まれていく、っていうところ。あれが一番でした。

D
なんでだろ。

N
あのシーンに一番、演者の「孤独」を感じたから。ジェイって我が強いし、考え方も独特だし、なかなかの一匹狼だと思う。だから彼のジャグリングも、どこかで突っ走っちゃってる感じを抱えてる気がするんですよ。でもそのままそれを伝えても、なんか、伝わらないから。だから毛糸でジャグリングしたり、「ハイ!」みたいなポーズしたり、ポップでキャッチーな感じのパッケージで包んで伝えることも多いんだけど、あのシーンだけは、「どうせ誰も理解してくれないとおもうけど、俺にとってはこれこそがジャグリングの面白いところなんだ」って真摯に言われたみたいで。胸がチクッとした。

D
なるほど……。なんかさぁ、ジェイがここまで堂々と”かぶきもの”できるの、すごいなって思うよね(笑)。やっぱり実現力がとてもある。

N
ほんと、かぶいてます。今回に関しては、プロデューサーのキャプテン・フロド・サンティーニ(Captain Frodo Santini)の貢献が大きいと思う。「生きる中で、大好きなものを見出した人の『情熱』には、誰しもつながることができるんだよ」(“we can connect to the passion of somebody who has found a deep interest in their life.”)ってポッドキャスト*2 で言っていた。だから、ジェイに「君はTEDトークでやったのと同じことをやるべきだ」って言ったそうなんですよ。喋りとかも入れたらいいんだ、って。

D
なるほど。プロデュースあっての今回の演目だったわけだね。

N
以前のメルマガでも言ったけど*3 、やっぱり情熱があって、それを開く人がいたからこそ可能だったんだなって思う。

D
なんか、自分の築いてきた研究をそのまんま見せてきたジェイに、「お前はお前でやっていけよ」って励まされているような気もした。自分達もかぶいていこう(笑)。

*1
REFLEX 公式ウェブサイト
https://www.reflexshow.com

*2
ジェイとフロドがReflexについて語るポッドキャスト
https://static1.squarespace.com/static/61608c8744d6a328d59acf5f/t/61720a3be526cc197bf12c5c/1634863696094/Final+Edited+Combined+Audios+Reflex+Intro+Pod_mixdown.mp3/original/Final+Edited+Combined+Audios+Reflex+Intro+Pod_mixdown.mp3

*3
・青木直哉/板津大吾…投げないふたり Season2 第4回「情熱にふれる」
https://jugglingponte.com/weekly/ponte-weekly-vol167/
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☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介☆
延長線上の人
https://note.com/daigoitatsu/n/n8dc20f971013
「自分の人生をかけた自由研究を、こんな形で堂々と発表できる、それがまずすごいことだ。」
(記事本文より)
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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-先月に引き続き、また、新潟に二日間雪掘りをしに行きました。雪が降るのは今週あたりがヤマだということでした。たくさんの猫に囲まれて楽しく雪掘りをしてきました。

-東京に帰ってきて暖かかったのですが、池袋でたくさんの人とすれ違ううちに、すぐさま新潟に帰りたくなりました。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (PONTE)

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