週刊PONTE vol.165 2022/01/10

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.165 2022/01/10
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉/板津大吾…投げないふたり Season2 第2回「大ボケ小ボケ ソール・スタインバーグ展を見て」

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

◆ジャグリングの雑想◆ 文・青木直哉
投げないふたり season2

第2回「大ボケ小ボケ ソール・スタインバーグ展を見て」

2022年1月6日。前日の晴れが嘘のように、お昼頃から大粒の雪が降り始める。都内もしっかりと雪が降りしきる中、銀座を歩く。2つの展示会(※)を見た後に、地下鉄有楽町駅付近にあるドトールコーヒーで対談。

(※)
「ソールスタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み」(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)
「無印良品と縁起物 福缶10周年企画 CREATIVE IMAGINATION 展」(無印良品 銀座店)

※※※

青木直哉(以下N) スタインバーグ展よかったな。絵も良かったけど、見ている最中に、絵の魅力をうまく言語化できたのが今日のハイライトです。

板津大吾(以下D) そうだね。「確固たる技術の上に、大ボケと小ボケがうまいこと混在している」っていう。

N (展示会のメインビジュアルを見ながら)この絵で言ったら、紙を握りつぶしたような質感を入れる工夫とか、線の迷いのなさ、構図的なバランスの取り方が技術の要る部分ですよね。

D でもそこで「顔半分を自分でもぎ取っちゃってる」っていう大ボケがある。さらに、輪郭を手で雑にちぎっている感じとか、テープが雑に留めてある感じとか、よく分からないスタンプが押してある感じとか、そういう「小ボケ」も随所にある。ずっと見てられるよね。

N 気の抜けた箇所があるおかげで、巧みな部分も、嫌味なくすっと受け入れられますね。あとは「あれ、なんかちょっと足りてない」という部分がある方が、想像で補う余地が広くて面白い。これね、『スター・ウォーズ』と一緒なんですよ。

D どういうこと(笑)?

N 初代のエピソード4、5、6だと、エイリアンたちが明らかにゴムの着ぐるみっぽいんですね。次に続く1、2、3のCGに比べたらお粗末なんです。でも、ここ5、6年の新しい作品群では、また着ぐるみっぽい質感に逆戻りしてるんです。そっちの方がファンが喜ぶんです。僕もそっちの方が好き。これをなんでか、って考えると、まぁ、もちろん単純に70、80年代映画で青春を過ごした人のノスタルジアでもあるんだけど、実際問題、こっちの方がより映画の中に没入できるからじゃないかって思う。「あ、これ人間が中で動かしてんだろうな」ってちょっと分かっちゃう場合って、自分が積極的に創造の世界に入り込むように、「思い込む」努力をしないといけないじゃないですか。でも実はそのおかげで、自らが作品に入り込んでいく感覚を無意識に助長する作用があって、余計に面白いんじゃないかって思うんですよ。

D なるほどね。確かに隙があるといい、っていう感じはわかるな。この間子供をウルトラマンショーに連れていったんだけどさ。途中で、出演者の1人がセリフとちっちゃったのね。

N うん。

D 周りのみんなが一生懸命フォローしてて、そしたら悪役が「なんだかお前ら楽しそうだなぁ」とかアドリブ言って笑いを取っててね。なんか、人間の温かさが見える感じが良かったよね。完璧なショーを見せられるよりも、そっちのほうがファンになっちゃう。

N そういうのいいな。それこそ、全部大真面目じゃなくて、多少緩めている部分がある、っていうことで……(いったんコーヒーを飲む)……いや、僕ね、実は今日、絵を見ている間、意識して「自分はなんでこれをいいと思ってるんだろう」って一生懸命言葉にしようとしたんですよ。それは、ジェイの影響。

D ほうほう。

N Object Episodesのエピソード10で、ジェイが(「Object Episodesを聴く(10)」には書きませんでした。内容が多いので記事には漏れていることもたくさんあります。関心のある方はマジで、聞いてみてください。示唆に富む内容がたっぷりです)言っていたんですね。カッコいいものはいくらでもある。だから何かいいものを見たら、「カッコよかったな」で終わらないで、それが「なんで自分の心に刺さったのか」を考えるようにしてる。「僕はこれが好きだ、なぜならそれは、車が赤かったから」とか具体的な要素に還元するんだ。って。

D なるほどね。ジェイってやっぱり論理的だ。

N 「自分が何に興味があるのか」も、突き詰めると「ジャンル」では語れないはずなんですよ。「ジャグラーだからジャグリングに興味がある」って無意識に思っちゃいがちだけど、もっと細かく精査すると、実は「ジャグリング自体」が好きな訳ではないことも多いと思う。ただジャグリング「にも」共通する何かが好きだ、っていうだけの可能性が大いにある。ま、これも、エリックが言っていた「ジャンル・オブ・グッド」(Object Episodesを聴く(7))っていう概念の延長です。ジャグラーだからジャグリングをやるんだ、って固執するんじゃなくて、ただ「いいもの」を取り入れていくんだ、みたいな。

D いいね。なんかそれは、自分たち2人の目指すところにも共鳴するよね。けどなんだろう、ジャグリングで言うと、まさひろくんみたいな、誰も追いつけないような純粋な技術の高さ、も結局、いいよね(笑)。シンプルイズベストだな、って思ったりもするよ。

N いや、それは大いにあるなぁ。技術の高さの極地、ってもうそれだけでいいですね。なんか、絵も修行しないとな。一日一枚とか言って喜んでる場合じゃない。あ、でも、この絵見てください(リュックからここ2週間ほどのボールペン画を出して見せる)。実物で見てほしい。

D たしかに、画像だと潰れちゃってる塗りの部分とか、実物で見ると全然違うねー。

N 展覧会やりたいや。

D ネットの「いいね」より、直接の感想がいいね。……なんか、絵ってどこでも描けて羨ましいなぁ(笑)。旅に出て文章を書くとかもそうだし。自分の道具作りは、どこででもできる、っていう感じじゃないから。

N けど、最近編み物始めましたよね。

D そう、編み物はね、どこでもできる。まぁこれがどうなっていくかわからないけど、とりあえず今年は「実物を拡げていく」っていうふうにシフトしていきたいね。

N ええ、ええ、ほんとに。今年もよろしくお願いします。
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☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介☆
ビーンバッグの裏側
https://note.com/daigoitatsu/n/n9138ab24b45b
「雪による歩きづらさよりも、車がいない快適さのほうが勝っていた。しんとした世界で、子どもと安心して歩けることがこんなに快適だとは。気づかなかったけれど、普段、車が走っていることに自分はこんなにストレスを感じていたのかとびっくりした。いまの環境が本当にいいのだろうかと、やっぱり考えてしまう。」
(記事本文より)
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◆寄稿募集のお知らせ◆

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800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-大吾さんとの対談を復活させました。やっぱりこれだ。

-徳島県にある大歩危小歩危も僕はすごく好きです。

-新潟は十日町市に向かう一両電車の中でこの後記を書いています。目の前に、雪に覆われた真っ白な山々が広がって、麓にはポツリポツリと民家があります。

また来週。

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発行者:青木直哉 (PONTE)

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