週刊PONTE vol.142 2021/08/02

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.142 2021/08/02
===========================
—————————
PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
—————————

◆Contents◆

・青木直哉/板津大吾…PM & PONTEのジャグリングセッション または瓶に詰めた手紙 第6回「いろいろジャグラー – 安西水丸展を見て」

・ハードパンチャーしんのすけ… 日本ジャグリング記 舞台編 第2回

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

—————————

◆PM & PONTEのジャグリングセッション または瓶に詰めた手紙◆
話し手・板津大吾(PM Juglling)& 青木直哉
構成・青木直哉

第6回「いろいろジャグラー – 安西水丸展を見て」

芦花公園駅付近の喫茶店で、大吾さんは「ビターコーヒー」、青木は「チャイ」を飲みながら。半分民家のような、清潔で静かな店内。僕たちの声が大きく響く。
今回は、世田谷文学館という美術館で行われている「安西水丸展」(※)を一緒に見てきた感想。
安西水丸さんは2014年に逝去した、日本を代表するイラストレーター。名前は知らずとも、あなたもきっと彼の絵をどこかで見たことがあるはず。

青木直哉(以下N)
オリンピック、見てますか?

板津大吾(以下D)
見てるね。子供にいろんなスポーツを紹介するのに役立ってる。これは水泳、これは卓球、って。子供は、新しいものを見るとすぐに感化されてるよ。柔道見たら、「柔道やる!」って言って、フラフープを床に置いて、その中で技を掛け合ったりしてる。

N
かわいいな。

D
でもブリッジで耐えて、「まだ背中付いてないよ!」って主張してきて。それでいいんだっけ、ってルール調べたり……。

N
そういえばスポーツのルールって、身近なものでもほとんど知らないな。さて、安西水丸展、どうでした?

D
展示の一番初めにあった文言がよかった。水丸さんは、デザイナー、装丁家、小説家、漫画家、エッセイストといろいろやっているけど、職業を聞いたら「イラストレーターです」と答えるんじゃないか、という。それがすべてだなと思った。なんでもできるけど、あくまでイラストレーターだ、っていうことに勇気づけられたね。自分も、「PM Juggling」から「ピザ回しドットコム」まで振り幅の広さっていうか、いろんな顔があっていいんだな、って。なおくんは?

N
水丸さんの本を三冊買っちゃうくらいよかった(合計4500円分)。ただ、今回展示されていたのはシンプルな線の絵ばかりだったじゃないですか。それこそが水丸さんらしい画風なんだけど。でも、実際にはデッサンとか、もっと写実的に描こうと思ったら、絶対に描けた人だと思う。そういう別のスタイルもいくらか見たかったなって思った。唯一、中学生の時のノートには写実的な内臓の絵があったけど。どれくらい「あえて」あのスタイルにしているのか知りたいんだよなあ。

D
なんかさ、水丸さんはいろんな活動をしていて、旅をしても、皿を集めても、なんでも、いろんな活動が全部評価されてるよね。これはなんでなんだろうね。そもそもの根本って何なんだろう。

N
……人との繋がりじゃないかなぁ。

D
やっぱり、そうだよね。

N
自分で自分の作品をアピールすることって難しいからなぁ。水丸さんの場合は、たとえば村上春樹ともたくさん仕事をしてるし。そういう繋がりの連鎖が評価を形成している気がする。

D
そうだね。PM Jugglingの場合だって、ジェイ(・ギリガン)が注目してくれなかったら、今頃誰も知らないと思うよ(笑)外に出るのってそういう意味で、やっぱり思いがけない人と繋がるためにも大事だなと思うね。最近のFLIKCUBEの企画(※)だってそうだしね。

N
補完してくれる存在がいないとね。そもそも絵にしてもなんにしても、客観的、絶対的な価値なんてないと思う。それはどんなに偉大と言われるアーティストでも一緒で。ただ、「自分がその作品をいいと感じるかどうか」だけだと思う。値段がつくのは、理由がなんであれ、「それを欲しいと感じる人」との関係でしかないと思うんだよなあ。

D
それだ。

N
話は変わるけど、僕は美術に関しては、触れたり、近くで見たりできるものが好き。そこで初めて、欲しいなぁ、ってなる。欲しいと思った上に持って帰れる、っていうのがいいな。だから美術館に行くと、売店が一番好きだったりします。

D
自分もそういう意味では、道具を触って欲しいな。なんか、ジャグリングショップでなくても、お店に置いてもらったらいいのかな。あ、そうそう、あともう一つ文章でよかったのが、水丸さんは、水平線(ホリゾン)を描いて、そこから絵が始まっていく、というようなことが書いてあったんだけど。まさになおくんなんかも言っていたよね、一本の線から始まるんだ、って。

N
そうですね。まずはなんでもいいから引いちゃわないと始まらない。永遠に迷っちゃって。

D
ジャグリングなんかも、道具しまっちゃうと、やらないよね。その辺に道具が転がってるから、練習できるっていうか。

N
それはそうですね(笑)「なんとなく始めちゃう」からそこから先ができて上達しますね。

D
そうそう、最初に気が重いのがダメなんだよね。それでいうと、最近は、もうなるべく60%ぐらいの出来で、ぽんぽんいろんなことをしていった方がいいんじゃないかっていうことを思ってる。道具にしても、何か作ったら、早めに出しちゃって、あとは自由に遊んでください、ってジャグラーに委ねちゃうとか。

N
僕もそっちの方が合っていると思う。なんか色々やってる方がいい。1日の中でも。多動なジャグラーであるべき。

D
自分は、一週間単位ぐらいで別のことやっているのがちょうどいいかなぁ。いろんな活動をする中で、「自分なりのジャグラー」の在り方を作り上げられたらいいね。

-「イラストレーター 安西水丸展」… 東京の世田谷文学館で、9月20日までやっています。時代、テーマを横断的に紹介されていて、ボリューム満点でした。https://www.setabun.or.jp/exhibition/20210424-0831_AnzaiMizumaru.html
– FLIKCUBEの企画…クリエイティブユニットTENTと共同で、つい先日、新商品「FLIKCUBE」を作ったこと。商品は、現時点では下北沢の店舗でのみ見ることができます。https://twitter.com/tent_1000/status/1421302672737505280?s=20
……今週は、以上。

—————————
☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介するコーナー☆
いつもの公園で
https://note.com/daigoitatsu/n/nc0ba0c764428
「明日からはまた自由に仕事で、楽しみである。仕事が楽しみだっていうのは幸せだなと思う。このままこの気持ちのままで、ずっといた」
(記事本文より)
—————————
◆日本ジャグリング記 舞台編◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ

第3回

「プロ」とはなんでしょうか。

かつて(2011年くらいに)「プロジャグラーになる方法」
http://www.juggling-style.net/index1.html
と題してコラムを連載しました。
当時のぼくが持っていた問題意識、ジャグリングで生きて行く方法を模索したコラムです。
改めて現在を見渡すと、ジャグリングへの関わり方やアウトプットの仕方も少しずつ多様になってきていますね。ワクワクします。今は、個人の活動の積み重ねでシーンと可能性が広がって行くのを目の当たりにしているんだな、と実感します。

さておき。
2002年頃の「プロ」とは、大道芸人・パフォーマーとして生きて行くことを指しました。
具体的には、大道芸人(バスカー)としてジャグリングを行ったり、イベントでのショーを仕事としているのが「プロ」でした。同じ活動をしていても、学生だったり、サークルメインで活動していると「アマチュア」とみなされることがしばしばありました。
そう映るのは、もしかすると覚悟の問題で、芸で生きて行くことと趣味でジャグリングをすることとの間に自然と境界線が引かれていたのかもしれません。

とは言っても、ヘブンアーティスト以前は、路上で大道芸をするには「無許可」で決行する他なく、それなりに覚悟がいることでした。警察や管理者に注意されることもあれば、その筋のひとに怖い目にあうことも(ぼくは幸いなことにないけど)。
様々なひととの出会いや衝突があり、路上でのパフォーマンスは面白かったのですが、それを続けてゆくことは不安と不確かさが付きまとうことでもありました。

そんな中登場したのがヘブンアーティスト制度 。東京都が審査して合格した「アーティスト」が指定した場所で表現活動できるライセンスです。
ヘブンアーティスト審査第1回の合格者はいわゆる「プロ」がほとんどでした。
回を重ねるごとに、かつて「アマチュア」と呼ばれたひとたちがライセンスを取得して行くことになります。リスクなくジャグリングを表現する場を得るだけでなく、大道芸フェスティバルや様々なイベント出演へと繋がり、「プロ」として歩むきっかけとなったのでした。(続く)
—————————
☆編集長より
「プロジャグラーになる方法」、リアルタイムで読んでいましたね。「ジャグリングとの関わり方」は最近のPONTEのビッグテーマです。僕は最近「職業」という言葉のことを考えています。「職」という漢字のおかげで、専門性により意識が向く気がして、「仕事」というよりは、自分の「職業」はなんだろう、と考えます。ジャグリングが職業、ってなんかいいですね。
—————————

◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-PONTEのサイトの公開が遅れています、ごめんなさい。今週中には。

-僕は基本的に朝はパンとコーヒー派だったんですが、ここ最近、なんだかパンとコーヒーに全然ときめかなくなり、ご飯と納豆派へと移行しようとしています。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (PONTE)

Mail info@jugglingponte.com

HP http://www.jugglingponte.com

Twitter https://twitter.com/jugglingponte

Instagram https://www.instagram.com/jugglingponte

これまでのメルマガアーカイブはこちら。
https://jugglingponte.com/weekly/archive/

メールマガジンの解除はこちら。
https://jugglingponte.com/weekly/unsubscribe/

【週刊PONTEは、転載、転送を歓迎しています。ご自由にシェアしてください。】
========== PONTE Weekly ===

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です