週刊PONTE vol.136 2021/06/21

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.136 2021/06/21
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉…ジャグリングの雑想 35.赤道直下の世田谷区

・ハードパンチャーしんのすけ…ジャグリングで出会うこと 第10回

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

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◆ジャグリングの雑想◆ 文・青木直哉

35.赤道直下の世田谷区

バイクに乗って横浜から世田谷まで行った。このぐらいの距離だと、もう大変だとは思わなくなった。先日下道を使って名古屋まで行ってきたからだ。延々と走った末にもう一回延々走る、という感じがする旅だった。もっとも、横浜から東京だって、距離が短いとはいえ、出発する瞬間に、ああ、これから50分走るのか、と面倒な気持ちにならないでもない。でも電車代は浮くし、風は気持ちいいし、歩く必要がない。ま、これぐらいはいいだろう、と気を取り直して出発する。世田谷まで行く目的は、室内で PM Juggling のだいごさんとジャグリングをすることだ。もともとは一人で練習する予定でだいごさんが近所で予約をとったのだが、どんな場所で練習するのか見てみたいという気分もあり、一緒に練習することにした。教えてもらったところをGoogleマップで調べたら、小さな地区センターの付属施設だった。住宅街の中にあるようだ。
国道246号で、混雑している車の列をすり抜けながら地区センターに着いた。センターのすぐ横には公園があった。大きいとまでは言わないが、10人ぐらいで来ても余裕を持って遊べそうな広さだ。遊具もいくつかある。その入り口にカブ(バイクの名前である)を停めて、地区センターに入った。建物はわりに古くて、パッとみた感じ、建ったのは昭和の終わりごろぐらいだろうか、と想像する。中に入ってすぐ、受付がある。枠が木ででてきていて、そのしつらえはまるで古い病院だ。奥は薄暗くて見えないものの、しんとしていて、誰もいないようだ。ガラス戸に大量のお知らせの紙が貼ってある。明かりがついていたとしても、どのみち中はよく見えないだろう。窓口の脇にはピンクの電話が置いてあった(ダイヤル式、思わず回した)。建物は古いのだが、部屋と設備の大半は綺麗で新しく、立派だった。調べたら、どうも去年大幅な改修が入ったようだ。どこから練習部屋に入るんだろう、と迷っていると、だいごさんが大きな窓を開けて出てきて、中に招き入れてくれた。
その部屋には、「会議室」という名前がついていた。しかしどう見てもその部屋は、体育館だった。僕だったら決してこの部屋を会議室とは呼ばない。卓球台も置いてある。天井は5mぐらいある。だが、あくまで「会議室」であるということだった。広さも100平米以上はあった。しかしやっぱり、会議室である、ということだ。だいごさんは「ほら、ホワイトボードがあるから」と言った。
その会議室で、少し離れて、二人でそれぞれにジャグリングをした。だいごさんはもうすでに1時間以上前に来て、すでにたくさん練習をしていたようだった。
外の公園では、作業をしているおじさんたちが手持ちの草刈り機でブイイイン、と植え込みを整えたり、ブロワーで散った枝や葉を吹き飛ばしていた。静かな住宅街で、それ以外にする音といえば、鳥たちがピチピチ、ギースカと鳴く音だけだ。部屋の大きな窓を開け放してジャグリングをしていたので、砂埃と、植物の青くさい匂いが、そのまま室内に入ってきた。雨が降るんだか降らないんだかはっきりしないぐずぐずした天気で、部屋の中は少し蒸し暑かった。しかし体育館の上部には、旧式のでかいクーラーが据え付けられている。おかげで、ジャグリングをしていても暑いとは感じなかった。
練習を始めて10分ぐらい経った。周りの環境に意識を向けたとき、ふと、シンガポールの景色が見えた。
あの国では、いたる所で大規模な工事ばかりしていて、埃っぽい。ほぼ赤道上にある国だから年中暑くて、湿度も高い。でもクーラーはガンガンに効いているから、室内にいる時には、人工的な涼しい風を感じる。生命力の強そうな熱帯の植物がたくさん生えていて、いつでもかすかに湿った植物のにおいがする。鳥たちの鳴き声は日本で聴くのとは少し違って、少しうるさい。その声から一体どんな姿をしているのか、ちょっと想像がつかない。でも、行く場所行く場所で、いろんな鳥たちの声が聞こえる。
そんな情景が、濃い感触を持ってありありと目の前に思い起こされた。
僕はシンガポールを数回訪れている。最後に行ったのは3年くらい前。だから具体的な情景はかなりうろ覚えになっていることが多い。
でもその体育館でジャグリングをしていたら、シンガポールの空気と、匂いと、温度と、音と、一人で旅先にいる寂しさの、すべてを思い出した。
僕はとてもうれしくて、この練習が終わったら、安い食べ物がわんさかあるフードコートに行って、お気に入りの店で中華麺を食べて、甘ったるいコーヒーでも飲みに行くんだ、と思った。
しかしここは、世田谷の誰も知らないようなところにある地区センターだ。なので、それはできない。フードコートはないし、甘いコーヒーも売っていないし、Tシャツの下からお腹を出したおじさんがプラスチックの椅子に座ってタバコを吸ってはいないし、残飯をついばんでいるハト達もいない。
ただ束の間、僕は、安い麺と甘いコーヒーを腹に入れるんだ、と本気でそう思い、楽しい気持ちになった。

練習を終えて、僕はだいごさんを昼食に誘った。
僕らは、最寄りの駅の地下にある中華料理屋に行って、大盛りの麺とチャーハンを食べた。店内には僕たち二人しかいなかった。途中でおばあちゃんが一人で来て、「おそば」と一言言い放ち、テーブルについた。ご飯を食べ終わったら、もう少し話したい気分だったので、地上に上がり、駅前のドトールコーヒーに入った。体育館のお礼に、と僕はだいごさんにブレンドコーヒーをおごって、僕も同じものを頼んで、それを飲みながら1時間ぐらい話をした。
コーヒーを飲んだあとは、それぞれ、お互いの仕事に向かった。

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☆勝手にPM Jugglingを紹介するコーナー☆
ジャグリング練習日記 #31 身体が重いときに
https://note.com/daigoitatsu/n/nda6d3b48b88a
「子どもを保育園に預けて、自転車に乗り、その瞬間、「やっぱ行こう」という気持ちになり公園に向かった。」
(記事本文より)
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◆ジャグリングで出会うこと◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ
第10回
最近、はじめたばかりのひとにジャグリングを伝えることがしばしばあるのです。
まだジャグリングの右も左もわからず、動機はそれぞれであっても、まずは3ボールカスケードを覚えたい!と練習に励んでいます。

自分がカスケードを覚えた時もこんな風に熱中していたなぁ、と、たくさんのひとのはじめてに出会っていても、いまだにそのまっすぐな感じにちょっとした懐かしさを感じます。

カスケードのやり方を理解した後のちょっと大きな目標は、多くの場合、カスケード100回に設定しています。
いろんなひとをみていて、達成するまでにそれぞれのドラマを感じます。
あるひとは無理だと思いつつも投げ続け
あるひとは黙々と、でも自己記録更新すると静かに喜び
あるひとは自分の経験と重ねながら研究し
あるひとは積極的に質問をし知識を吸収しつつ目標達成に向かう。

もちろんどの姿勢が良い、ということはなくて、個性がジャグリングから感じられて、そのひとを感じられる時間になることがなんだかうれしい。

ジャグリングに過剰に意味を持たせるわけではないのだけど、ぼくにとっては、ジャグリングはそのひとを感じるための手段のひとつなんだな、と思いました。

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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-外でジャグリングをしているとやたらに蚊にくわれる時期になってきましたね。嫌だなぁ。僕は、蚊がたくさんいる場所に数人で一緒にいると、真っ先に狙われる人間なのです。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (旅とジャグリングの雑誌:PONTE)

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