週刊PONTE vol.120 2021/03/01

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.120 2021/03/01
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉…ジャグリングの雑想 19.「キーボードが作る身体」

・ハードパンチャーしんのすけ…日本ジャグリング記 青春編 第13回

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

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◆ジャグリングの雑想◆ 文・青木直哉
19.「キーボードが作る身体」

タイピングをする仕事が多い。だが長時間続けていると指、肩が疲れるので、投資のつもりで先日(メルカリで)ちょっといいキーボードを買った。「リアルフォース」というタイピングの世界では定評がある機種。
10年間MacBookで使用しているキーボードの配列は、表面にひらがなの書いていないアメリカのもの。もちろん今回買ったのも、そのUS配列。
リアルフォース、届いてみると確かに押し心地がふかふかしていて気持ちがいい。キーを押すしたときの沈み込みは深く、また反応速度もとても早い。流れるようにキーを打っても、かなり正確に判断してくれて、今までにない体験であった。

だが使ってみて初めて気がついたのだが、僕の身体はもうMacBookのキーボードに最適化されてしまっていた。
しかも、自分が思っていたよりも細かいところまで。

まず指の開き方だ。これは明確に違う。
僕は文字起こしの仕事をするときに、上部にある音声コントロールキーというものを頻繁に使う。Macのキーボードでは全部のキーが等間隔で並んでいるので、音声コントロールキーも、すぐそこにある。これがリアルフォースだと数字キーから若干遠い。結果として、文字起こし中に何百回もそこに指を届けていると、それを押す指である中指が疲れてくる。
それだけではなく、そもそもキーが深いので、上下運動が多くなってそれも疲れる。1時間打っただけで、手が今までにないハリを持った。慣れないスポーツをした気分である。
最適化されていたのは、何も指だけではなかった。
リアルフォースは、Macシリーズに比べて少し高い位置にキーボードがある。その分、姿勢を正さないとタイピングがしづらい(というかもはやできない)。要は、上からしっかり手のひらを被せるような状態でないといけない。
対してMacのぺったんこなキーボードを使っているとき、僕は思っていたよりも背を椅子に預けるような姿勢で打っていたのだ。その方が楽な角度だからである。
そのため椅子は少し低めでないといけなかった。なので以前僕は、仕事をしている最中にいきなり思い立って、「椅子をちょうどよくしたい!!!」と思って、ノコギリを取り出して椅子の脚をカットした。
だがこの椅子の高さは、まさに、Macのキーボードを打つ、という限定された目的のためにちょうど良い高さだったので、リアルフォースを使うようになってすぐ、椅子が低すぎる、と感じるようになった。

これは驚きである。
姿勢のみならず、住環境の多くが、MacBookに最適化されていたのであった。
結局このキーボード、数日の使用ののちに、やっぱり手放すことにした。一ヶ月ぐらい使って慣れたら感想は変わるかもしれないが、そもそもキーボードが1kg以上あって、外に持ち出すのも現実的でなく、頻繁に出かける僕にとっては、あんまりいい選択肢ではなかった。

さて、ジャグリング道具にも、やっぱり人の身体を作り上げる機能があるんだろうなあ、とそこで思うわけですね。
知らず知らずのうちに、住環境を規定されていたりもするだろう。
ああ、そういえば僕は、ジャグリングをするスペースを確保したくて、ベッドは使わず、布団で寝ているしね。
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☆勝手にPM Jugglingを紹介するコーナー☆
【Weekly PM】#54:試し投げという名の練習
https://pmjuggling.com/blogs/weeklypm/20210228
「最近はこんな感じで、Twitterに試し投げ(という名の練習…)のタイムラプス動画をのせてみています。」
(記事本文より)

人がジャグリングを黙々と日々練習している姿を見ると、自分もジャグリングがしたくなってきます。
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◆日本ジャグリング記 青春編◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ
第13回

(前回)
世の中は、ジャグリングを求めていた。
そんな気がします。その一方で、技術が高まっていたジャグラーたちの一部は自分たちが「道化」として扱われることへのフラストレーションも感じていたように思います。
自分たちがやりたいのは「大道芸」ではない。


承前。
先日、ジャグリングの英語本をAmazonで漁っていました。
その中にジャグリングの練習記録用ノートなのかな、”Juggling Practice Planner”という商品がありました。表示されている表紙と思われる画像たちには、
”BE THE NEXT ANTHONY”
やら
”BE THE NEXT WES”
など、力強い言葉が並んでいますが、その中に
”NO, I’M NOT A CLOWN”
という言葉もありました。
日本でもジャグリングをやっていると伝えると、「あーピエロの」「大道芸ですね」と言われることがありますが、海外でも同じような反応があるのでしょうね。面白い。そして、これはサーカスや大道芸の文脈とは関係なくジャグリングを楽しんでいるひとにとっては、違和感を感じる返答なのだろうと思います。
ジャグリングをしているひとの多くにとっては、ジャグリングはジャグリング。
(ジャグリングとはなんだろうと考える時に、連載されている「Object Episodesを聴く」シリーズ、示唆に富んでいて面白いですね。)

そう、「ジャグリングはジャグリングなんだ」という感覚と世間一般の認識とのズレは、2000年くらいからすでにあり、今よりも大きかったように思います。もちろん、ジャグリングをしているひとがすべてそのズレを深刻に考えていたわけではないだろうと思いますが、そのズレが時にジャグラーを自虐的にし、時にジャグリングの世界が広がって行く原動力のひとつになったように感じています。具体的には、ジャグリングの舞台公演という形になってやがてジャグリングを拡大して行く推進力へとなって行きました。ジャグリングをジャグリングとして魅せるには、自分たちで場所をつくって行くしかない。
一方で、個性的なジャグラーがじわじわと現れてきていて、やがて拡大が始まるジャグリングシーン(2000年を起点にして10年くらい先かな、と思いますが)を牽引して行くことになります。
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-編集長コメント-
「クラウン」として扱われる系のネタは、欧米の人が発信するSNSの投稿などを見ていても結構王道ですね。
僕はあるフランスのジャグラーに「フランスはジャグリングがアートとして認知されていて、支援も充実していていいよね」と話したら、「そうは言っても、プロのジャグラーなんて伝えても家はなかなか借りられないし、普通の人に自分の仕事を言ったって、何をしてるかなんて伝わらないよ」と答えていました。まぁ、そうですよね。
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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-Object Episodesをまとまって聴く時間が取れません。申し訳なし。

-数日間、一日にコーヒーを5杯以上コンスタントに飲んでいて、流石に健康被害がないか心配です。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (旅とジャグリングの雑誌:PONTE)

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