7月30日(火)

 今日も起きて空を見る。また、曇っている。朝はいつだって雲が出ている。そういう地域なんだな。8時ごろを境に、またいつも通り晴れ渡ってゆくのだろう。

 今日は大橋昂汰くんを迎えに、空港に行く日だ。いつもよりも少し早起きして、Uberを使ってオヴァール駅に行く。朝一番の急行電車に乗りたかった。しかし駅に着いたら、急行が目の前で発車してしまったので、逆にゆっくりと、駅舎の中にあるカフェでガラァオ(ミルクコーヒーだ)を頼み、ちびちびと飲みながら二十分ほど電車を待った。待ち合わせをしていた中田くんも現れて、一緒にポルトに向かう各駅停車に乗る。

 一時間早く宿を出れば、昂汰くんのフライトが到着する三十分前に空港に到着できたはずだった。だが電車に遅れがあったので、昂汰くんが着陸してから一時間ほど経った頃に空港着。

 四月に一緒にオーストラリアに行った時と同じように、到着の瞬間を撮ろうとカメラを持って近づくと、向こうもカメラを構えていた。

 地下に降り、切符を買って、メトロの駅に向かう。この道のりは二回目だから、とてもスムーズ。今日もEJCの方ではイベントがたくさん進行している。でもほとんど参加しないような心づもりで来ている。サン・ベント駅で、先ほど一旦別れた中田くんと再び合流。しばらく駅舎の中の綺麗なアズレージョを眺めた。

 昂汰くんはスーツケースを持っていたので、それを預けようと思ったのだが、サン・ベント駅のロッカーはどれもいっぱい。しばらく待っても開かなかったから、少し離れたアリアドス駅まで5分ぐらい歩いて、そこのロッカーに荷物を預けた。せっかくだからポルトの街を見よう、と3人でドン・ルイス一世橋まで歩く。橋の上からは、歴史地区の中心を流れるドウロ川と、その両側には赤い屋根の家々が立ち並ぶ様子が見られる。中田くんは橋を渡るのが二回目だけど、それでもやっぱり綺麗ですねえ、と言っていて、昂汰くんは、うんうん、とうなずきながら写真を撮っていた。

 初めてポルトに降り立った時に優弘くんと一緒に行ったピッツェリアへ、今日も行く。それほど高くなくて、そこそこ美味しいので再来というわけだ。中田くんはポートワインを決めたいですねえ、と言っていたし、僕も冷たいビールを飲みたかったからちょうどよかった。昂汰くんも、普段お酒を飲むタイプの人ではないのだけど、ポートワインを頼んでいた。ポートワインは、蜜ぐらい甘い。食事中に飲むようなものじゃないのだが、せっかく来たので、やはり飲みたいよな。

 疲れていたので観光はほどほどに切り上げて会場に向かう。三十分近く待って到着した各駅停車に乗ってオヴァールヘ。

 オヴァール駅からUberでユースホステルまで。荷物を置いて、今度はヌノに連絡する。どこかで会おう。早めにお金をもらっておかねばならぬ。

 とりあえずキャンプ場の方に行ってみると、イスラエル人のガルがいて、声をかけてきた。お前、昨日のステージ良かったなー、と言われた。六年前、君と同じステージに立ったよ、と言ったらどうやら僕のことを思い出したみたいで、改めて嬉しそうにしていた。

 ヌノからの連絡はまだ来ない。ガルが音楽をかけて踊り始めた。僕はその姿を見ながら筆ペンで描き、ガルの去り際に渡した。これも、とても喜んでくれた。

 ようやく連絡が来て、会場にいるよ、と言われた。そこで優弘くんにも連絡をとって、昂汰くんと三人でそちらで落ち合うことにした。昂汰くんも会場をチラッと見られるし、ちょうどいい。ビッグトップの裏を覗きに行ったら、ヌノがいた。僕と昂汰くんと優弘くんを車に乗せてくれ、レストランに向かう。

 レストランではいつもの落ち着く食事。肉と魚が選べるけれど、みんな肉を頼む。ご飯を食べようとしたら、ヌノが「家からお金を持ってくるから食べて待っててくれ」と言ってテーブルを離れた。僕らが最後のコーヒーを頼む頃に再び帰ってきて、ポケットから折り畳んだ札束をどっさり出し、そのままぽんと渡してくれた。

 昂汰くんは疲れを癒すために宿に戻り、僕と優弘くんは会場に戻る。

 会場のすぐ横にはスーパーがあった。ジムを出て、そのまままっすぐ歩くと五秒でショッピングモールで、その奥が大きなスーパー。会期中このスーパーはずっとジャグラーで溢れかえっていた。

 僕が水とコーラとシードルを買おうとセルフレジに並んでいると、レジに通す直前で、黒人ドレッドヘアのおしゃれな帽子を被ったお兄さんが、俺のやつも一緒に買ってくれないかね、と声をかけてきた。もちろん、と言って持っていたジュースを一緒にレジに通すと、会計を自分のカードで済ませてくれた。粋な人だ。話していると、彼は僕が四月にアデレードに行った時に会っていた人だった。 でもあの時はちゃんと話せなかったからな、としばらく出口で話した。

 今日は外のファイヤースペースで、オープンステージがあった。火を使った道具を扱う人たちがパフォーマンスする。そのあとはファイヤージャム、つまりみんなで入り乱れて練習する。その様子を見ていたら、僕が2012年から毎年のように会っているコウヘイさんが話しかけてきた。優弘くんのステージを見て、感動したわあ、という。普段はファイヤーをやっているから、ジャグリングのことはそこまで詳しくないんだけど、それでも鳥肌たった、ありがとう、と。なんか日本人でよかったわあ、って思った、と。僕もそういう気持ち、すごくよくわかる。優弘、すごいだろう、と誇らしい気持ち。

 ビールを片手にファイヤーを見終わり、もう一時を回っていたので僕はそのまま、宿に帰った。