暗い部屋の中で起床。スッキリした目覚め。夜、金属製のしっかりしたブラインドを下げっぱなしで寝たので、朝も暗くて、何時なのかわからない。起き上がってブラインドを上げて、空を見上げる。曇り模様だ。
昨日はベッドに倒れたら起き上がれなくなってしまって、シャワーを浴びなかった。起き出して、身体を綺麗にしてから、九時に朝食会場に行く。数人がすでに食事をしていた。ある男女が、明らかに EJCの関係者で、混ざれそうな雰囲気だった。声をかけて一緒に食事。メキシコから来たフェルナンダとホルヘだ。ホルへのことは前から知っていた。フェルナンダのことも、インスタグラムで見たことがあって知っていた。フェルナンダは今回ゲストで、ホルへはホリデーとしてついてきたのだそうだ。メキシコでは賃金が高くないから、今はアブダビで仕事をしてるよ、お金を貯めたらどこかヨーロッパに家を買おうと思っているんだよ、など、しばらくお互いの仕事の話をしたのちに、僕は宿を出る。歩いて会場へ。
まずビッグトップでオープンステージの全体ミーティング。パフォーマンスをしたい人が集まる。ここで、EJCの期間中にパフォーマンスをする人が決まる。優しそうな女性が取り仕切りながら、それぞれ何の道具をやるのか聞いていく。クラブとボールのジャグリングが多い。それ以外の道具はそれぞれ一、二組ずつしかいなかった。ディアボロも一人だけ。これは珍しい。年によっては、ディアボロだけで五組も六組もいたりする。
僕は、八年前に知り合ったデヴィンと話しながら、パフォーマーたちの演順が決まるのを待っていた。
来る前は、今回はパフォーマンスをしないつもりだった。パフォーマンス以外のEJCでの活躍の仕方を模索しようと思ったのである。ミーティングに来たのは、優弘くんのサポートのためだった。だが様子を見ているうちに、こちらがワクワクしてきてしまった。ディアボロ、一週間でひとりしかいないのかぁ。そうかぁ。優弘くんに、出たくなってきたなぁ、と冗談半分で言ったら、出ちゃえばいいじゃないですか、と背中を押してくれる。デヴィン、俺出たくなってきちゃったよ、と言ったら、気持ちに素直になればいいじゃん、出たいと思ったなら出たほうがいいよと言う。
司会の女性に近づいて、あの、ディアボロの演技もう一個追加してもいいですか、と聞いた。
僕はオープンステージに出ることにした。
ミーティングを終え、次のイベントはパレード。だが、もうすでにパレードは始まっていた。出発場所が街の中なので、歩いて四十分ほどかかる。正直なところ、行くのが面倒くさい。しかも明日、ステージに立つことになったから、そもそも演技を思い出すために(最後に演技をしたのは四月で、それ以来この演技を通したことがなかった)場所を探して練習したり、ダラダラと出発を引き延ばした末に、新たに到着した中田くん、砂原くん、そして優弘、あたみくんと一緒に、街に向けて、暑い中会場を出発することにした。
街の中心部は、はっきりと観光的なものがあるわけではないのだが、可愛らしいアズレージョ(タイル壁画)を持つ家々が並び、街の建物も歴史を感じられ、その間を石畳が縫う、味のある風景だった。
結局パレードには参加できず、スーパーで水やビールなど買って、終着点(同時に次のショーの会場になる)で休憩しつつ、ショーが始まるのを待った。ポーランド人のウーカシュが隣にいて、その前に黒い犬がいた。犬は退屈そうに伏せたり、時折モゾモゾとどこかに行こうとして、飼い主に引き戻されていた。
ショーが終わり、観客がゾロゾロと帰る。ウーバーを捕まえようとしたが、あいにくみんなが一斉にウーバーを捕まえようとしているがゆえに、全然ダメだった。仕方なくみんなで歩く。台湾人のジョーイが、どうせならビール片手に歩いてこうぜ、というから、スーパーに寄り道して、ゾロゾロとアジア人数人のグループで一時間弱、会場まで歩いて戻った。こうすれば歩くのも辛くない。むしろこういう時間に、仲良くなれるのである。
会場に戻ったら、初めて、最寄りのスーパーに行った。日本人で大挙して向かう。レジにはたくさんのコンベンション参加者が並んでいる。これだけ近いと非常に便利。お惣菜やお酒を買って、ショッピングモール外のテラスへ。アメリカからの参加者マイケルとレイモンドも一緒にご飯を食べる。干し鱈とじゃがいものサラダや、ピラフのような食べ物、美味しかった。途中でドイツのアニも参加し、しばらく話して、解散。
寝る前に明日のパフォーマンスの練習をしなきゃ、と思って会場内で練習できそうな場所を探す。ジムの奥の方に誰もいない広い空間があった。これはいい場所を見つけた、と思い十五分練習して、一旦水を飲んでいたら、女の子三人組が来てクラブやポイを投げ始めた。これにて本日の練習終了。