7月26日(金)

 ついに出発日。昨夜は十一時まで起きていた。

 朝四時半ごろ、スマートフォンでセットした目覚ましが鳴る。僕の真横には、キジトラ猫のぽんちゃんが伏せっていた。僕が身体を起こすと同時に、猫もむくりと起き上がる。昨日部屋掃除をしたからいつもよりも風景がさっぱりしている。旅行前にはこうしておくと、気持ちがいい。帰ってきた時に、僕がいない間に誰か掃除してくれたのかな、と勘違いするくらい綺麗にしておくといい。

 猫は二週間家にとどまって留守番をする。猫を抱き上げ、じゃあね、と言いながら顔を擦り付けたら、ウゥー、と小さく唸ったので、そっと地面におろした。

 オレンジ色の大きなスーツケースを持って家を出る。天気は良い。朝五時。暑くもない。妙蓮寺の駅から各駅停車に乗る。乗客はまばら。武蔵小杉で降りて、長い長い横須賀線までの地下道を通って、優弘君と合流した。そこから、成田空港までの長い乗車。

 空港に着くなりラウンジへ向かった。僕はもともとラウンジなんて使う人ではなかったのだが、最近たまたまキャンペーンで手に入れたクレジットカードで入れた。受付のお姉さんが、サービスで一本ビールをおつけしております、と言う。こんな時間に空きっ腹にビールはよくないよね、やめとこうね、と言いながらプシュッと缶を開けてカンパイした。

 午前十時三十五分に飛ぶはずだった飛行機は、メールでお知らせが来て、三時間半の遅延となっていた。空港着いてから七時間待機だねえ、どーするよ、と笑った。とりあえず腹を満たそうか、とマクドナルドで朝ごはん。それから、ユニクロでお土産を買ったりして過ごす。こんなに長い時間どう過ごそうか、と懸念していたけど、優弘君が、最後に日本の味を、とお昼にラーメンを食べて、あっという間に搭乗時刻になった。

 いよいよトルコ航空の飛行機に乗り込み、いざ出発!……と思いきや、飛行機は一向に飛ばない。十分経っても、二十分経っても飛ばない。 

 機体の発進を待ちわびてまどろむ間、耳にはトルコ語が聞こえてきた。日本語話者にとって妙に親しみのある響きだ。全然わからないのに、わかる気がする。うしろではしゃぐ三人の女子たちの言っていることが、まるで日本語のように聞こえた。

 四十分待っても飛ばなくて、搭乗前に配られた棒状のピザのようなスナックを食べる。香ばしくて甘くて美味しい。

 待ちかねた隣のおじさんは、何か文句を言いながら(ペルシャ語かな?)立ち上がったり、トイレに行ったり、苛立った様子だった。一時間が経過して、ようやく安全のためのビデオが流れ出し、テイクオフ。やれやれ。

 もう、ちょっと猫が恋しい。