7月25日(木)

 明日の朝、成田空港から飛行機に乗り、ポルトガルに向かうのだ。今回は、ジャグラーの高橋優弘君が一緒である。僕はこれまで、ヨーロッパに行く時はだいたい一人だったが、今年はふたり旅。

 午前中、部屋の片付けをさっさと済ませよう、と腰を上げた。絵の個展をやっていたせいで時間がなくて、散らかっていたのだ。そのあと、荷造りは三十分で終わらせ、少し配達の仕事でもして、気持ちよく出国を迎えよう、というプラン。

 だが、そんなにうまく行くわけがないのである。途中で始めたパソコンのデータ整理がうまくいかない。SDカードの不具合、データの破損、不可解なエラー。嗚呼。

 すべての予定していた用事がずれ込んだ。結局終わったのは夕方四時。お昼ご飯も食べていない。

 悲しい気分になったが、このまま何もせずに一日を終えるわけにはいかない。どうする。僕は自分を叱咤激励し、曇り空、湿った空気の中、バイクに乗って配達に出た。僕は日銭を、配達の仕事で稼いでいる。

 今日一日のノルマを決めて、これだけはやろう、と決意した。

 開始時点ではギリギリ雨が降っていなかったのが、走っている最中に雷鳴が響く。嫌な予感だ。そして予感通り、途中でじっとりした雨が降り始めた。僕は、防水ジャケットも着ずに耐える。やっぱ帰ろうかな、別に数千円余計に稼いだところで……と気弱になった。しかし、いやいや、そんなわけにはいかぬ、午前中俺はパソコンに負けたんだ。数千円の勝負にはなんとしても勝つ男になるのだ、と食い下がり、決めたところまで遂行。そう来なくっちゃ。途中、桜木町で雨宿りをしつつ、足りなかった靴下も無印で買う。結果的にやりたかったことはすべてやった。いいね。どうも旅行前っていうのは、時間があるようでないようで、余裕で構えているとあっという間に旅立ちの時間が来てしまうものだ。

 家に帰る前に、スーパーに寄って、夕飯とお土産のお菓子を買う。前回オーストラリアに持っていったパイの実が好評だったから、2袋購入した。

 夕飯の二割引きカツ丼弁当を食べたら、最後にもう一度、詰めた荷物を確認する。よし、大丈夫。時計を見たら、もう十一時だった。