5月13日(月)

 キャンベラを観光する日。朝8時にクリスに車で中心街に近いところまで送ってもらい、そこから自力でトラムでAlingaという終着点まで乗る。そこから、Googleマップを頼りに最寄りの美術館まで歩く。美術館に着いたときはまだ9時少しすぎで、とりあえず併設のカフェでフラットホワイトを注文して、絵を描いて過ごす。日本に送る予定になっている最後の絵。これで一旦仕事としての絵は終了。晴れた朝のカフェで仕事を終えると、とても気分が良い。そのまま美術館を見る。小さな展示だったのですぐに見終わって、そこからバスで、美術館、図書館が密集しているエリアまで。

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 ずっと、何かを作りたいな、作りたいな、と思いながら歩いている。もう旅の中にいなくていいなぁ、と思っている。

 きっとこの夏のEJC行きのチケットが高い、ということが影響している。もう次の目標に向かっていきたい、という欲がある。

 ひとまず、昨日InstagramでEJCチームとやりとりをして、オーガナイザー側からサポートをしてもらえることにもなった。この調子で、自分が本当にやりたいことに素直に体当たりでぶつかって、失敗したら「あちゃー!」と言ってまた次の目標に走っていくようでありたい。

 国立美術館の片隅の椅子で、誰もいない空間で、座ってすこし居眠りをした。やっぱり、帰りたいなと思っている。「1ヶ月オーストラリアに行く」という響きが面白いだろうと思って1ヶ月間こっちに滞在している。でも、言葉で捉えていた1ヶ月間と、実際に、スキップすることのできない1ヶ月を過ごすこととの間にはとても大きな差がある。

 旅の疲労を作る要因は、「すべて味わわなければいけない」という思いがたびたび去来することかもしれない。特別なことをした方がいい、という観念。でも今は、何も特別なことをしなくてもいい、と思える状況を欲している。

 そういう意味では、AJCに参加しつつ、宿でのんびり動画を編集したり文章を書いている時間はとても心地が良いものだった。「コンベンションに参加している」という事実が、すでに僕の「何かしなければ」という強迫観念から生じる、満たさねばならない(と思っている)条件を満たしてくれているので、他の全然関係ないことをしていても、それはあくまで余計に追加されているだけのものだから、幸せな気分でいられる。

 美術館を出て、図書館に行く。少しだけ中を見学したのち、ロビーで日本とオンラインで繋ぎ、JJF関連の会議をする。Wi-Fiがあったおかげでスムーズだった。その会議に入っていたショーグンと、1時間ほど話しながら街を歩いて、中心の方に帰っていく。ショーグンとも一つ計画が進んでいて、これもさささっと実現させて、どんどん次のことをしたいなぁ、という気分でいる。とにかく、どんどん次に進みたいのである。

 夕暮れの中、大量のウサギたちを横目に(キャンベラの街にはウサギがたくさんいる)歩いた。途中道路工事をしているところで行き止まりになって右往左往したが、なんとか目的の中華屋に着いた。友人がかつて留学していた頃に通っていたという中華屋である。メニュー表を見るとやや高かったけれど、せっかくなので食べていくことにした。どうもこの店は、キャンベラでも一番古い、という触れ込み。まるで家の地下室に入っていくようなドアを開けて、実際に地下に行く。ちょっと店内は暗かった。でも、店員さんの笑顔がとても素敵で、ああ、これはpromising だな、と思ったら、案の定味もとてもよかった。量もたっぷり。

 それから少しあるいて、咥えタバコの変なおじさんに、おい聞いてんのか、カンフー野郎とかどうのこうのと知性をかけらも感じない絡み方をされて、完全に無視して、スーパーをちょっと覗いてから、バスで家まで帰った。最寄りのバス停まで車で迎えにきてくれたクリスの顔を見て、声を聞いて、なんだか安心した。■