祖母が出てくる夢を見た。かなり生き生きとしていて、まだ髪の黒い、とても若い頃の祖母だった。ちょうど数日前に祖母の五周忌の法事があったところだった。日本でやっているので当然僕は参加できていないので、こうして祖母のことを思い出すことができてよかったなと思った。起きたら大粒の涙が出てきた。
まだ誰も起きてきておらず、リビングで日記を書いていたらベックが起きてきた。英語しか載っていないキーボードでどうやって日本語を打つのか、と仕組みを聞かれる。ローマ字打ちの仕組みを説明したらなかなか驚いていた。
ベックの車でフライング・フルーツフライ・サーカスへ。通称フルーティ。オフィスの机で座ってていいよ、と言われるので、お言葉に甘えてここでじっと過ごすことにする。落ち着いて描きたかった絵や日記に取り組む。久々にタイムラプスで描画の様子を撮る。とても充実した時間。絵を描いているとほんとうに癒される。絵葉書を2枚と、スケッチブックに1枚の絵を描くことができた。
朝のクラスから夕方4時のクラスまで、バイロンはずっと時間があったので、一緒にジャグリングの練習もした。僕はディアボロ、バイロンはリング。バイロンのリングジャグリングは面白い。そして、何をしたいのか、ということがよくわかるので、僕としても客観的な意見が言いやすい。たびたび、「これどうだ」と聞いてくるので、こうしたらもっとおもしろそう、とか、それ最高、とかコメントしていた。
バイロンが、ちょっと休憩しよう、と言って紅茶を淹れて、外のテラスに出る。天気が良くて静かだ。仕事をする環境の話から、小さなまちでサーカスを教えることの孤独感の話、そして、バイロンは最近あまりジャグリングを素直に楽しめないのだ、という話になった。身体にもガタが来ているし、時に自分に厳しすぎて、その責めるような感情がきついのだ、と言う。
「自分が思うようにうまくならないで、いつもフラストレーションがあるね」
「まぁ、バイロンはとてもいい批評眼を持ってるんだと思うけど、そういう人って自分のことも同じ目で見るからきつい時があるのかもね」
「そうなんだよ」
「けど、不思議だよね、いつからジャグリングをしていてキツくなったんだろう、最初にジャグリング始めた時は、楽しくて始めたはずなのにさ」
「本当にそうだよね」
「なんかでも、僕がやってるワークショップは、そういうことに関する僕なりの考えの実践でもある。競争志向に疲れるのは、オーストラリアにも日本にもジャグリングに限らずどこにでもあるけど、けど、そこから完全に降りるんじゃなくて、どう頭をつかって自分なりのすぐれ方を見つけていくか、っていうことなのよ。『すぐれていたい』っていう欲を抑えるんじゃなくてね。すぐれかたを変えるっていう。『すぐれたジャグラー』は、他の人だってなれるからいつも他人を意識することになるけど『すぐれた自分』だったら、他の誰にも代わられることがないから、安心して生涯追い求められるし楽しいじゃん」
「なるほどねぇ……なんか、日本に帰ってからも、よかったら時々話そう」
こういう対話ができて僕も嬉しいなと思った
暇な時間にスーパーにも行って、カップヌードルがあったので思わず買ってきて食べたんだけど、それだけで随分元気が出た。
夕飯はインド料理。パラックパニールとブロッコリーのカレーを頼んでシェアした。せめてものお礼として、僕はカレーを2人にごちそうした。■