朝8時起床。寝たり起きたりで断続的ではあったものの半日寝た。夜半には重かった頭も、だいぶスッキリしている。昨日の夜は、正直なところ出かけられるかどうか確率は半々だなと思ったけど、見事に回復している。寝るのが一番。マーヴィンが昨晩解熱剤をたくさんくれていたけど(ジュリーももっとくれようとするので、まるで開けたてのヨーグレットぐらい大量の解熱剤が手元にある)なんとなく、自分の体の免疫反応に任せたほうがいい気がして、服薬せずにただ水を飲みまくって過ごした。
いつもの通り、おはよう、と言う。マーヴィンが起きていて、おはよう、といい声で返してくれる。今日は郊外にある自然公園に行く予定だ。でも待ち合わせは街中の中心駅、フリンダーズ・ストリートなので、マーヴィンに車でエルサムの駅まで送ってもらう。散歩に行くわけじゃないんだけど、犬のゼイダもひょこんと車に乗ってきた。
肌の、服と擦れ合う部分が少し敏感になっている。まだ風邪ひいているんだなぁ、と思う。でも、ゆっくり歩くぐらいなら問題なさそう。エルサムの駅は小さいけれど、プラットフォームは広い。改札を抜けると(と言ってもゲートはなくてただカードをタッチする機械があるだけ)すぐに電車が来た。
エルサムからフリンダーズ・ストリートへの行程、最初は長いなぁと思っていたのに、今ではもうちょっと乗っていたいなと思っている。日記を書いたり、日本から、オーストラリアからのメッセージに対応しているとあっという間に到着する。
フリンダーズストリートに着く15分ほど前から徐々に緑と家々の景色が、高層ビルの立ち並ぶ景色へと変わっていく。列車が、ひゅーんと終着駅に入る時、ようこそ、街です、といった風情の大きな建物の中にあるトンネルを潜って、「フリンダーズストリート」と放送が入る。
駅から出て僕はしばらく歩く。もうこの景色をそんなに何回も見るわけではないんだなぁと思ったら、ちょっとでも見ておきたくなる。一週間しかいないのに、すでに思い出と言っていいような記憶がたくさんある。
ジェームスから、ここで会おう、と写真と共に連絡が来て、すぐに落ち合えた。ジェームスは茶色っぽい髪に金のメッシュが入った、僕より少し背が高いくらいの青年。笑うとへへへッと本当に楽しそうに笑う。今日はバック・トゥ・ザ・フューチャーのマーティみたいな格好で来ててカッコよかった。
一緒にトラムに乗ってバイロンの家まで行く。30分ほど乗ったら降りて、歩いてすぐ、バイロンの実家。ジェームスがメッセージをするとバイロンがすぐに出てきた。中に入ってご両親に挨拶をして、バイロンがおやつをたくさんリュックに詰め込んだのちに車で出発。
バイロンが1時間ほど運転してくれて着いたのは、ウェロビー・ゴージ州立公園。乾燥質な土と崖、谷、底には少し水が流れる。だだっ広い自然公園だ。ここの中を一周するサークルウォークをやろうというわけだ。一周は4時間ぐらいかな、という。おもったよりながいけど、まぁ体も持ってくれるだろう。
歩き始めた時、まだ若干寒気が身体にあったけど(実際、気温が低かったのもある)登り下りを歩いているうちにだんだん温まってきた。延々とさほど変わらない景色を見ながら歩き通して、最後、本当にこれは一周しているのか、と疑心暗鬼になりながらも歩き続けたら、ちゃんと元のところに戻ってきた。もう30分ある、となっていたらちょっと挫けていたかもしれないが、ちょうどいい運動量だった。車に乗って、さあ帰ろう、という時にワラビーの群れに遭遇した。とてもラッキー。
帰りの車では眠くなかった。行きは病み上がり気分が満々で、11時間寝たはずなのにまだまだ眠かったけど、どうやら自然の空気が体によく作用したのかもしれない。
だがフリンダースの駅についてからジェームスと別れ、ちょっとだけ買い物をしてから電車に乗ったら途端に眠くなる。耐えきれずリュックを抱えて眠って、はっと気がついたらエルサムに着いていた。さすがに4時間歩き通したらそりゃあ疲れる。
疲れていたけど、マーヴィンにわざわざ迎えに来てもらうのもなんなので、駅前からバスに乗った。エルサムでは初めてバスに乗った。5分ほど待ってから発車したものの乗客は僕1人で、僕もたったの3駅先で降りた。
帰ったら、マーヴィンがおかえり、と迎えてくれて、自分で調理したという大きなポークチョップを2枚も食べさせてくれた。お腹はパンパン。まだ9時にもなっていなかったけど、早めに部屋に戻る。そして、お世話になったエルサムの家の絵を描いた。机に椅子がないので、ベッドに寝転がって描いた。深夜になったけど完成して、倒れるように寝た。■