朝一番で車で近所の大きな公園まで行く。歩いて行ってもいいくらいの距離だけど、マーヴィンは車を出してくれた。犬のゼイダも一緒。ゼイダは朝僕が起きて階下に行くと、必ず嬉しそうに近寄ってきて、ぐいぐい僕の脚に身体を押し付けてから、ごろんと横になってくれる。ぺんぺんとお腹を叩く。ちょっと硬い。嬉しそうに今度は立ち上がってクネクネとまとわりついてくる。
公園はとても広かった。入り口から、反対側にあるカフェまで1時間近く歩いた。もともとは農場だったという。途中でカンガルーの群れを見ることができた。そもそもカンガルーを見に連れてきてくれたのだ。最初は全然いないなあ、このまま見られないかと思っていたけど、40分ほど歩いたところで、「見て!」とマーヴィンが言って指差したその方向に、数十頭の(百頭いたかもしれない)カンガルーがいた。フェンスがあるから近づけない。でも、目の前30mほどの距離にたくさんのカンガルーがいる。マーヴィンはゼイダをしっかり足元に止めて、見ておいで、と言ってくれる。ゼイダはカンガルーを追いかけたそうにして、クーンクーンと鳴いている。
僕はじっくりカンガルーを見た。
空は晴れ渡り、天気はいいけど、濡れた芝生の雫が靴にたくさんついて、防水の靴だったのだけど、中まで濡れた。
一度家に帰って、パンにハムやチキン、野菜を挟むバーガーを食べる。それからジュリーも一緒に三人で、モンサルヴァという芸術家の隠れ家のような施設を見にいく。フランスの田舎の風景を模して作られた家家が並ぶ庭園のようなところ。たまたま中で葬式が行われていたので一部の建物が使えないために、入場料が半額だった。
マーヴィンとジュリーがここで過ごした思い出を聴きながら、歩いてまわった。帰ろうとした時に、僕が使っているのと全く同じ無印のペンが落ちていたから自分のだと思って拾ったら、どうも別に誰かが落としたペンだったらしく、ポケットをみたら僕のペンはまだあって、2本に増えた。
また家に帰ってきて、すこしうとうとした後、部屋でいくつか仕事を片付けて、軽い夕食。昨日のラムの残りをもらう。それから、サーカスネクサスという施設までマーヴィンに送ってもらう。ここでは、毎週水曜日にジャグラーの集まりが開かれている。中に入ると、まだジャグリングの集まりは始まっておらず、アクロバットやエアリアルの練習が行われていて、少し待つことになった。が、しばらくしたらデイルとダニがきて安心した。部屋を移動して早速ジャグリングを始める。合計で8人参加者が来た。
デイルとダニ以外も、ほとんどみんなAJCでも会っている人たちだ。長身メガネのエリスに、いつもヘッドホンをしているジェイ。ほんの数日だけど、ジャグラーから離れていたこともあって、久々のジャグリングが面白かった。みんな話が通じる人である、という感覚もあって心が休まった。デイルと、今までにいったコンベンションの話や彼とダニがオーガナイズするメルボルンジャグリングコンベンションの話を聞いた。今までに来た日本人の話もした。
21時に活動が終わって僕はジュリーに電話する。ちょうど近所で友達とお茶をしていたので、そのまま帰るついでに僕をピックアップしてくれる。サイモンがまだ若かった頃の話をした。家でジャグリングをしてるの、時々めんどうじゃなかった?といったら真顔でイエース、と返してきた。家に帰ると、またゼイダが嬉しそうに脚の周りをぐるぐる回っていた。■