4月18日(木) 猫と余裕

 7時前に起きる。実家にいる。同じ部屋のどこかに猫がいるはずだ。とんとん、といつも通り布団を叩いて猫を呼んだら、暗くてよく見えないが、どこかから走って猫が来た。スンスン、フガフガと匂いを嗅がれる。起き上がり、カーテンを少しだけ開けて、パソコンを開いて日記を書く。しばらくすると両親が起きてきた。早起きだねえ、と言う。最近はこんな感じ。

 昔は僕は寝坊ばっかりしていた。今もするけど、この家にいたころより今の方が早起きだ。

 朝食が用意される。サラダと昨日のポトフの残りとチーズパンとヨーグルト。テレビをつけたら、山奥の死体のニュースと、昨日の夜に起きた四国と九州の地震のニュース。両親はテレビじゃなくて猫を見ている。窓辺で仕事をしていた僕は窓を開け、網戸にして過ごしていた。すると、いつの間にか猫が網戸を開けてベランダに出て、草のにおいを嗅いでいた。

 そういえば、演技で使う小道具がまだ出来ていなかったことを思い出す。食器を洗って片付けて、リュックから布を出して裁ちバサミで切る。とここで、母が、やってあげるよ、という。こんなのはプロに任せなさいと。母は裁縫が好きだ。いつも何か作っている。言葉通り、プロに任せた。「あなたにしかできないことをやってな」と言うから、僕はその間絵を描いていた。僕なら1時間かかるような作業をあっとういう間に終わらせていた。

 10時になり、のんびりくつろいでいる猫をおいで、と呼び寄せて最後にもう一度抱っこして顔をグリグリと猫の身体に埋める。ううー、と高い声で小さく唸られて、下におろしたら窓の方に歩いて行った。母とハグをしたら、用事があるという父と一緒に車で家を出た。

 横浜駅で降り、ルミネ8階の世界堂に寄る。足りていない紙を5枚買った。そして無印に。なんかほしいものがあったんだよなー、と思いだせず入ったけど、そうだ、マスキングテープだった、と買う。絵を描くときに必要。こういうのは地味にオーストラリアで見つけるのが大変なんだ、きっと。マスキングテープと一緒にF1サイズのスケッチブックを購入したのち、そうだ、世界堂でスケッチブックも見たいと思ってたんだ、と思い出し、世界堂までのもう一度歩いて7分の道のりを逡巡しながらも、もう今日しかない、と思ってもう一度世界堂へ。スケッチブック、見てみたら色々欲しくなってくる。これも必要経費だ、と勢い込んで、1500円分、3冊スケッチブックを買う。というのも、紙質によってテープのくっつきやすさが微妙に違うから、全部試してみたかったのだ。今いいものが見つかればあとが楽だ。

 家に帰ったら翻訳の仕事を一本終わらせる。そして小道具の試作品を作って、地区センターの体育館へ。12時から15時まで。休みを入れながら5回通す。休憩しながらさっき終わらせた翻訳仕事の原稿を最終確認して提出。ついでに、加工しようと思っていた音楽も加工。練習中に体育館でパソコンを開いていること、よくある。

 終わったら家に帰って、注文が来ていた分の発送作業。嬉しいことに10冊以上売れている。短い期間で集中してやったのがよかったかもしれない。ま、これからもずーっと死ぬまでこういうふうに自分でものを作って、自らの態度を伝える手段として、売っていたいと思う。

 本当はここで絵を描いたりしたかったが色々丁寧にやっていたら時間切れ。YDCに行く。と、母から連絡あり、小道具の予備ができたから、もし欲しいなら受け渡しできると。そこで、一瞬悩んだのち、えい、ここまできたら、ともう一回実家の方に行ってからYDCに行くことにした。

 YDCで練習が終わった。ヘトヘトになってる。一応本番通り2回みんなの前で通してみたけど、まぁまぁうまく行った。今回は、いつもよりは余裕があると言っていいだろう。

 「ステージに堂々と立つ」ことが僕の目指すべきところでしょう。「上手く」やることではないというか、普段自分が暮らしている中で鍛えていること以外は出てこないというか、あんまり、技術だけうまくあろうとしちゃあ、それはなんか、ステージに立つということを考えたら僕の日常の延長にある態度としては違うんじゃないか、とか、息苦しくなるだけだよなぁ、と思い、ついついストイックに、ああ、ミスしちゃったなぁ、とか落ち込みたくなるところだけど、そこで、ま、いや、変にうますぎず、ナオヤ楽しそうだったなぁ、と言われるくらいを目指したい。じゃないと僕のライフとのバランスが悪い。優れようとしてはならぬ。ただ続けて、その通過点がずーーっと続くだけにする。いちいち会心の作を出そうとしない。毎日続けていくという、定量と時の経過以外で、質の向上を狙わない。いや、向上ということすらもあると思わない方がいいんだろう。ただ、何かに相対する態度が、どんどんしっくりきて、自分にとっての日常生活であるようになってくるだけ。日本語を覚えた時と一緒。そうしたらずーっと、低空飛行でワクワクできるよ。■