4月17日(水)

 朝から地区センターの体育館を予約してある。9時から3時間。

 練習前に綴方に寄って、学報の手持ちがなくなったので取りに行く。工房には中岡さんがいて、リソグラフを使っていた。トラブルが発生して困っていた。その場で昨日作った本を見せたら、お金ちゃんと払いますよ、と買ってくれた。最初の買い手。本がコミュニケーションのための貨幣として機能している感じが心地いい。ありがたく受けとる。本当に嬉しい。実は、インターネットで売り始めてからまだ半日も経っていないけど、特に反応がない感じが不安で、これは売れないんじゃないか、と一瞬頭をよぎった。もちろん万が一売れなくても、特段生活に支障が出るわけではない。何万もかけて印刷に出したわけでも、不良在庫を200冊抱えているわけでもなく、在庫は自分で作った分しかないから危険はないわけだが、それでも、もし鳴かず飛ばずだったらちょっと寂しいなぁとは思った。でも、中岡さんが気前よく、餞別も含めて、と言って本の代金に上乗せしてPayPayしてくれて、なんだか元気になった。そもそもまだ数時間しか経っていないのに不安になっている僕も随分せっかちだなと感じる。

 今日の練習では、体育館だからできるヴァータックスの練習を重点的にして、いよいよ全編通せるようになった。要点はもう決まった。演技をする際に決めなきゃいけないのって要点だけかもしれない。あとは、その場その場で失敗したりなんだりすることも含めて、練習しておかないといけないんだから、何回も、本番だと思って通すのがいい。もう随分何回もジャグリングを人に披露してきているはずなんけど、いまだにこういうことに関して自分なりの方法が確立してない。でも、今回に関してはちゃんとなんとかなりそうで安心した。演技の中で、いくつか、好きなパートもある。ここは決めたい、というところがいくつかある。そこが見せ場になっている、ということの証拠かもしれない。

 昼12時ごろ帰宅。シャワーを浴びて、まだ天気がいいので洗濯を回す。パスタを茹でて食べる。出来合いのソースをかけてスペイン語の動画を見ながら食べる。喉が渇いているので、お茶をがぶ飲みする。今日は家の猫を実家に移す予定の日だから、夕方までに色々とやっておくべきことをやる。ボツボツと本が売れ始めている。信じなければね。本当に嬉しい。溜まらないように、黙々と発送作業をする。

 6時ごろになって父が車で迎えにきた。出発するため、猫をキャリーバッグに入れようとするのだが、随分嫌がって、ロフトに登っちゃったりするので、30分格闘した。悪いなぁ、と思う。なんで猫なんか飼っているのかな、という気分になる。実家に帰る途中にあるホームセンターに寄って、今持っているものより大きいキャリーケースを買った。こちらの方が負担が少ないかもしれない。今のはうちに来た時に使っていたけど、その頃よりも今の方が猫が大きくなっている。成長した、というより太った。

 家に着くと母が、なにしてたのかと思った、と出てきた。実家で猫をケースから出すと、くんくんと周りのにおいを嗅いでしばらく歩き回ったあと、テーブルの下でゴロンと横になった。前にも一度、僕が台湾に2週間行っていた時に実家に来たことがあって、その時のことを覚えているのかもしれない。ケースの中ではずっと鳴いていたけど、すぐに落ち着いてくれて安心した。1時間も経つと、カーペットの上でころんころんと踊るようなポーズで何度も寝返りをうっていた。両親に、今本を売っていてね、葉書も送るプランがあって、と話すと、へえ、知り合いばっかり買うんでしょう、と笑っていた。別に全然嫌な感じでなくて、ただ、そんなことやってるんだ、という感じ。僕はこういう感じで育ったのを思い出した。将来のこととかも、とやかく言われたことはなかった。本を渡したら、しばらく眺めて棚に飾ってくれた。■