4月15日(月)

 朝起きてXを見たら、「投げないふたり」公開告知が流れてきた。自分で設定したツイートなのに嬉しい。今日は出版フェスをする日だ。長らく取り組めずにいた港北外国語大学学報をプリントして、それからこの日記をまとめた本を制作する。

 天気はすこぶるいい。陽光がさんさんと降り注いでいる。部屋は暑いくらいだ。窓を少し開けると、猫がくんくんと外の匂いを嗅いでいる。気持ちいいよね、と話しかけて、さて、学報の校正に取り組む。最後の仕上げのテキストを書いたのが昨日で、新コーナーのロゴを描いたのも昨日で、おかしなところがあるかもしれない。でも今の僕は、おかしなところがあったってなんだい、と思っている。開き直っているわけではなくて、「おかしなところが一つもないこと」よりは、「スピードが早くて気持ちがいいこと」が優先される、という心境なのだ。これやっちゃお、と思ったらとにかく早く動いて、一刻も早く形にするんだ。見ていてちょっとこれは気持ちよくないな、と思うおかしなところは直すけど、それ以上に追求しすぎない。名前が間違ってないか、とかそれくらいは確認するけど、求めすぎない。とにかく、満を持さない。一度完成させて離れてみればどんどんおかしなところは勝手に見つかるものだから、最初に完成させる時は、プロトタイプを作るつもりで。でも、一生プロトタイプ作り続けてたっていい。それで自分が楽しくて、かつ周りが喜んでくれていたら、もう御の字じゃないの。自分はもっとできるんだ、と思わず、これぐらいの人間だよ、と思ってあとはそこで一番楽しいやつ、をやるのがいい。自分だって本当はそんな自分が好きなんだ。機械で印刷して学報なんか出しちゃってる、ってだけですごいことだ。昔の自分が聞いたら驚くよ。本当にねえ。

 生活綴方に行ってリソグラフで学報を刷る作業へ。もう7号目なので慣れたもの。途中で紙詰まりのエラーがあってもすぐ解決できる。これができるのは、僕がマニュアルを読み込んだからではなくて(マニュアルなんか読んでない)誰かに教わったからでもなくて、ただ自分でたくさん経験したからである。もう、それ以外に何かができるようになるための原則なんかいらない、という気がする。先達の知恵を参照にとどめつつ、規則はいつでも自分で抽出する。既出であったって構うもんか。それが自分で出した信頼できる規則であることが大事なのだ。

 220部印刷かけて、実質200部が配れる状態である、としている。印刷費もなんだかんだ毎回6,000円くらいかかっている計算。これを無料で配っていて、僕はすでに楽しいんだけど、なんとかこれも、さらに楽しく回収できないかな、と思っている。篤志家が毎月5000円くれたらもうほぼそれで完結するから、まぁ、そういう仕組みをつくればいいということだな。篤志家、というのはまぁ言葉のあやだけれど、僕が作るもので目一杯楽しんでくれていて、かつ楽しんで余裕を持ってお金を出してくれる人ということである。大道芸と同じだね。別に無料で見て行ったって全然構わないというか、本質はそっちなわけだ。で、任意で(本当に心からの任意で)もしお金を払いたい方がいたら是非ともお願いします、すごく嬉しいです、というわけだ。お金を払わない人も、払う人もどっちもハッピーでいい気分になるのが一番いい。

 作業が終わることに店番スナダさんが入ってきた。学報折るのを手伝ってくれた。「最近学報が出てなくて、あれ、と思っててて、ちょうど一年たって区切りで終わっちゃったのかなと思ってたから嬉しい」と言ってくれる。別に無茶苦茶期待されているわけではないけど、でもあったらうれしい、と思ってくれている人がこうしているのはとてもありがたく、温かい気持ちになる。スナダさんは、学報をすごく丁寧に折ってくれた。そのあと、Twitter上だけで知っていたさすらいのアリクイさんが綴方に来る。大阪の方で出たイベントの時も来てくれていたので、絶対にすれちがっているはずなんけど、一度も話したことがなかったので、これを機に話をした。刷りたての学報を渡した。

 ちょっと疲れて、昼は豚骨ラーメン食べる。まだ14時で、明るい。公園に行って次の本の校正をすることにする。と言っても、まだ原稿ができていないから制作と言った方が正しい。ベンチに座って作業していると、木から種子みたいなものや花のようなものが落ちてきてパソコンが植物まみれになる。僕の周りでは、2人の女の子が、お母さんと相撲をとって遊んでいた、女の子が「はっちぇよーい、はちょった!」と掛け声をかけて相撲が始まり、お母さんは思わず吹き出していた。ここでもやはり、僕はこの景色の中にいて、仕事をしていて、別に仕事という文脈があってそれに従っているのではなく、今、自分が感じている欲望、つまり陽にあたって風に吹かれていたいという欲望をある程度満たしながら、やったら楽しいことをやっていて、これを忘れずにいたい、と思う。だいたい校正が終わったら家に帰って印刷をする。一度読み返して、また全体のバランスを見つつ、もう一度データで直して、を繰り返す。

 今日はまだジャグリング練習していない、ということが気がかりになってきた。17時。あと1時間は明るいだろう。ここで出なかったら気分が落ちる気がしたので、30分だけ出るつもりでディアボロを掴んで徒歩30秒の公園に行った。音楽を聴きながら、昨日の復習と、新しい箇所の構成を練る。1時間経っていた。気分は非常に良かった。家に帰ったらまた本制作の続き。今日中にできそうな感じがしてきた。途中、印刷の品質の問題が発生してそれに手間取ったけど、その問題が解決した途端に一気に作業が加速。そして夜10時半になって、完成。嬉しくてスペース始める。10分弱喋ってそれはやめて、10部分だけ印刷をして、製本作業進める。とても嬉しくて猫にも感謝を述べた。猫はきょとんとしてる。表紙の絵はこの猫だ。

 出来上がった本を目の前にして、僕は感心してしまっている。決意をして、とにかく遂行すること、質じゃなくて、やり終えることを徹底的に気にするんだ、と思ったらモノはできていくんだと実感する。■