4月12日(金)

 朝起きてすぐ、Slackを見たらJJF関連の仕事がたくさん来ていたから、後回しになってたまる前に全部片付けることにした。本当はこのタイミングで絵を描いたりしようと思っていたけど、そんな時間はなかった。そうこうするうちに午前11時、逗子に行く時間になった。電車を乗り継いで逗子に行って、R君に英語を教える。でも最近は教える、というか、一緒に僕も英語を(そして他の外国語を)学んでいる感じ。いつも通りNHKのラジオテキストの内容を一緒に学習したのち、コーヒー休憩を挟んで、エド・シーランの曲(Shape of You)を歌えるようになってみよう、と歌詞を見ながら歌う。覚え方にもコツがあるから、闇雲に歌詞だけ見て頭から歌うより、とりあえず分割しよう、と歌詞を紙に書き出して、必要ならふりがなもつけてとにかく近い音を産出できるようになることを目標にする。それなりにうまく行っている感じ。何より本人が楽しそうだからそれがすごくいい。成果はもちろんいますぐ出るわけではない。当たり前。だけど、楽しいなぁ、ということがふたりで共有できて、それで十分。僕はそれ以上のことは教えられない。自分で一生懸命楽しく学んだら、教わる方は、怠惰な教師なんかより、よほど遠いところに行ってしまえる、ということを知っている。

 帰り道、横浜駅で世界堂に寄る。この日記を本にするための表紙を買う。「てまり」という紙で、白い糸が中に織り込んで漉いてある。綺麗だ。生活が連綿と続いているイメージに合っている。それからまだ少し体力が残っていたから、そこから駅の反対側、ベイクオーターまで。徒歩10分ほど。そこにあるユザワヤに寄り、布の切れ端をいくつか買い込んでくる。昨日からいきなり始めたボールバッグ作りの日課に使おうと思っている。布、さまざまな色で、さまざまな生地で、たくさんおいてあって目移りしてしまう。なんだか、新品をしっかり買ってくるのは何か違うという気がして、セールになっている端材を見る。これぐらいがいい。気合いを入れてさあやるぞ、ではなくて、自分がやっていて気持ちいい塩梅のところで全力でやる。この場合、僕は新品の布を買うと、きちんとしたものを作らなきゃ、という気分になるから不適切だ、と思ったのである。だから、なんとなく捨て子のようにレジ前のカゴに大量に入っていた布の中から適当に見繕って、しかも安いので気兼ねなく買える、ということで手頃な布を選んで買ってきた。

 これは、僕自身のジャグリングそのものに対する態度と重なる。特に最近そういう考えを強めている。気持ちのいい塩梅でジャグリングをするのを忘れないこと。

 一般的に言われる難しい技ができるようになるには、もちろん、それ相応の修練を積み重ねないといけない。それは当然で、それはそれでやったら面白い。僕は最近3つのディアボロをポンポンと投げ続けるハイトスを練習していて、それが非常に楽しい。で、一方で、そういう「修練」としてのジャグリングを行う時間だけでジャグリングの時間が形成されていると、どうも、飽きちゃったり、苦しくなったりする。やってもやってもできない、と、焦ったりする。他の人はあんなに上手いのに、とか。で、そこで、何か自分なりに帰ってくるホームのようなジャグリングがあったらいいなぁ、と思うのだ。くつろげるジャグリングの場所。それは、自分の身体感覚を探って、これって今、やってて気持ちいい? と絶えず聞いていくようなジャグリングである。

 家に帰って、早速ボールバッグを作る。昨日「P nuts」と命名したもの。これは、ナッツを入れるシェルじゃないか、と思って、ピーナッツシェルがいいかも、とか考え、そう呼びながらいつも通りスペースを開いて、ちくちくバッグを縫う。30分ぐらいで終わるかなと思ったんだけど、ボール7個分のケースは流石に大きいから、なかなか縫い終わらなくて、1時間ちょっとかかった。でも、完成した。縫っている途中で、そうだ、今日は体育館で練習もしよう、と思いついたから、調べる。地区センターの体育館が空いている。ここで、すぐに行きたいけど、でも絵も描いておきたいから、絵も描く。で、ボールとボールケースの絵を描いたら、急いで体育館に行って1時間練習。ヴァータックスの演技を曲を分割して作る。

 「自分は素晴らしい存在であらねばならない」という厄介な思い込みを捨てよう、と思った。素晴らしくなきゃいけない、と思うから焦ったり、絶望したりする。なんで自分はできないんだろう、と。なんで直前になってこんなに焦っているんだろう、と。でも、そんな、素晴らしいもんでもないんだから、今俺ができることを見せる、この、サボっちゃうことも紛れもなく全部俺で、これをただとにかく堂々と、見せてやれ、とそういうイメージで、自分では未熟だと思っている部分をあえてそのままバン、と出せばいいじゃないか、その代わり、ずっと見せることを続けていこう、そんなふうに思っている。で、そんなふうに思っていたら、いつもと違ってスムーズに演技の中でやることが決まっていった。家に帰り、サイダーを飲んで寝る。■