週刊PONTE vol.189 2022/07/17

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.189 2022/07/17
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉… ジャグリングで書くこと 第9回 ジャグリングに考えさせる

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

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◆ジャグリングで書くこと◆
第9回 ジャグリングに考えさせる

事前に内容について考えすぎてから文章を書くと、うまく文章が書けない、というか、文章そのものが書けない。
いや、本当のところは、じっくり入念に考えた上で書き始めてもうまくいくのかもしれない。でも少なくとも、今までの人生で「文章を書いて楽しかった時」を振り返ってみると、それはいつでも、何も考えないで書き始めた時だった。自分が文章に引っ張られていくような感覚があった時だ。そちらの方が圧倒的に楽しい。自分でもこれから何が起こるのか分からない時が楽しい。即興で、話をするようにサラサラと書いて、後で修正を入れるのがいちばん面白い。他人が読んでも面白いかどうかは保証の限りではない。けど、自分が楽しむことがまず先立つ方が、生きていく上では自然なことであると思う。
「まずは矛盾などは一切気にせずに、どんどん書いていってしまうのだ」と言っている作家がいた。僕はそれをお守りのようにしている。
文章を書くのは、自分がどんなことを考えているのか、それを自分自身が知る行為だ。頭で考えていることが、そのまま文字になって出てくるわけではない。
そもそも「頭の中にあるビジョン」と「文章」は、あまりにもかけ離れている、といつも思う。質感が全然違う。だから、文章を書く前に「よし、こういうことを書こう」とわかったつもりでいても、実はわかっているようで、全然わかってない、と思うのである。
「やってみるまでわからない」というのは、意外な結果になるかもよ、という意味ではない。本当に「わからない」のだ。知らないのだ。全くわかっていない、と断言していい。言語による思考は、現実の質感体験とはまったく別のものである。
これって、結構間違いやすいところなんじゃないか。
僕はつい、言語を文章として読んだときに、それで現実をある程度捉えられていると感じてしまっている。でも、実際には、言語が呼び起こしているのは、どこまで行っても、僕が「今、脳内で」感じている感覚でしかない。それは、身体が、ある場所に行って、ある行動をして、そこで脳内に発生するパルスとはまったく違うのだ。
僕は考えるのだが、言語というものには、その場限りの条件で刻一刻と変わっていく現実を無視する作用がある。そしてまさにそれが言語の役割でもある。言語というのは、一つ一つをみたら少しずつ違う現実を、概念として再現できるように音に変換してまとめるられるものだ。「桜の木」という一語で、一本一本全然違う桜の木をまとめて指し示すことができる。なんとなく、社会的なコンセンサスでぼんやりと「桜の木」と言われたときにつながっていく会話の文脈を、呼び起こすことができる。
言葉は、現実を大幅に抽象化することで、「個別の差異を一旦無視」しているからこそ、他者への(時に自分への)伝達の手段として利用できるのだ。そのおかげで達成されることもある。でも同時に、言葉で把握できることに縛られていると、どうも実際の現実の方を見つめる力が疎かになる気がする。
これはもはや、人間が言語を獲得したことの一つの弊害でもあるような気がする。

ジャグリングの話をする。
ジャグリングをするにも、自分が考えてジャグリングをするよりも、とにかく「ジャグリングに考えさせる」というあり方を心に留めておくとどうか、とふと思いついたので、書いておく。
でも注意だ。今だって、こうして書いたからと言って分かった気にならないのが大事だ。どれだけ僕が抽象的な思考を言語で展開しても、それで行動したことにはならない。あくまで、こういう言い方を思いついた、というにすぎない。文章は、実際の行動のモチベーションとなることしかできない。だから「把握した」とは思わず、ただ自分で書いたこの文章がある、という認識にとどめておくのがいい。

さて、ジャグリングに考えさせる、とは何か。まず、ジャグリングも一つの表現の手段である。その「表現する」というのはどういうことか。
僕にとってジャグリングが表現の手段である、というのは、「脳が出した指令が、脳内の電気信号とは別の形で外部に表出される手段」という程度の、ずっと表層的な、ステップワン、というような意味である。
だから、ジャグリングは「死」を表現できる、とか、そういう少し詩的な意味まではここで言及していない。「ジャグリングが『死』を表現する」と音声言語(あるいは書かれた文字)で言明する時、それはすでに、「『死』というコトバが表現することを、ジャグリングが同等に表現できるか」という議論になってしまう。「青色を使って黄色を表現できるか」みたいな、かなり回りくどいことをしているんじゃないかと思うのだ。ゲームとしては面白いかもしれないけど、そうじゃない、ジャグリングは、まさにジャグリングなのだ。
でも再び、このことをどれだけ言語で他者に伝えようとしても、それは「言語が伝えられること」の壁に阻まれてしまう。実際に何かが身体に起きており、それを体験している、という質感とは全く別のものになってしまう。

文を書く、絵を描く、踊りを踊る、そういうことと同じ地平で、「ジャグリング」と総称されるような身体の動きがある。大事なのは、これらを同等に扱ってみよう、と覚悟することじゃないだろうか?
文章には文章が伝えられる質感があり、絵には絵が伝えられる質感があり、というふうに、各々の表現手段は、それぞれ全く別の次元のことを表出する。そして、これらは全部「考える」行為だ、と言ってみたい。
僕たちは「考える」ということを、どうも、言葉による論理の積み重ねだと思ってしまいがちだ。頭の中でだけ起きることなんだと思ってしまいがちだ。けれど、考えるということの本質は、「身体を動かして現実に作用を与える」ことなんじゃないだろうか。身体を動かして、なんらかの直感を得る、それがまた次の身体の動きを促す、それを全て僕は、「考える」と呼んでみることで、どこか、より自由になれる気がする。

こんな文章を書いたのは、僕がすぐになんでもかんでも言葉で把握しようとしてしまうからである。そして、それがなんだか嫌になってきたからである。
頭の中で言葉を巡らせることだけを「考える」ことだと捉えていると、「考える」という行為に息苦しさを感じてしまう。そして多くの場合、言葉による脳内だけの思考では、悲観的な結論が導き出されることが多い。これは、生物の防衛本能だと思う。危ないことを避けるために、「もしこれが起きたらどうしようか」など、ややネガティブな方に思考を整えておく性質があるのだ。きっと。
「言葉で考えてからジャグリングをする」のではなくて、「まずジャグリングに考えさせる」というような姿勢でいたら、より、ジャグリングが固有で表現できるフィールドをのびのびと探検できるんじゃないか、とも思うし、実際にジャグリングに触れている時間を長くできる気がする。
僕はこの「ジャグリングに考えさせる」という言葉、ひいては「行動で考える」という一般化した言葉を、しばらく大事にして生きてみる。やたらに何かの判断に迷ってしまうのは、きっと「言葉で考える」ことの限界に達した時なのだ。
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☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介☆
選択肢がありすぎても
https://note.com/daigoitatsu/n/na0017919b61e
「普段は便利に感じる東京の選択肢が、実は異常なほど多すぎる、むしろそれが大変な労力である、というように感じられてくる。そういう想像をすることが旅行の効能だとあらためて思った。」
(記事本文より)
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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-新作『ジャグラーのぼうけん』発売中。https://store.jugglingponte.com そろそろ「新作」というにはもう古い感じがするので、また新しいの、出さないとね。

-先週の分、休刊になってしまってすみません。そして今週分もやや遅れて発行。文章を見直していたら、もう少し書きたくなってしまって、書き足したり修正をしていたら遅くなってしまいました。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (PONTE)

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