2019年10月公開! ジャグリング公演 「妖怪ケマメ」とは?

「妖怪ケマメ」について

大注目のジャグリングカンパニー「頭と口」が、ついに新作を引っさげて日本に帰ってきた!
その名も、『妖怪ケマメ

現時点ですでにヨーロッパツアーも決まっており、期待の高さが伺えます。初演が行われるのは日本。会場は横浜にある、KAAT神奈川芸術劇場ですスケジュールは以下。

  • 2019年10月5日(土)12:00/17:00
  • 2019年10月6日(日)12:00/15:00

(公演詳細・チケット予約はこちら

2016年11月の『WHITEST』以来、「頭と口」にとっては約3年ぶりの大々的な舞台公演。「頭と口」は、ジャグラー・渡邉尚によって2015年に作られたカンパニー。(公式サイトはこちら)その渡邉尚は、唯一無二の「フロア・ジャグリング」スタイルを提示したことと、その舞台上の存在感で、ジャグリング界のみならず、ダンスの世界などでも一躍注目を浴びるようになった、今や世界で引っ張りだこのジャグラーです。そんな渡邉さんが、今回はギヨーム・マルティネという、フランスのジャグラーとタッグを組んで作品を生み出しました。ギヨーム・マルティネも、フランスの現代サーカス界を代表する一人で、彼もまたとても力のあるジャグラーです。

今回の新作「妖怪ケマメ」について、渡邉尚さんから話を聞きました。

渡邉尚(頭と口)インタビュー:「妖怪ケマメ」のコンセプトなど

「妖怪ケマメ」という公演について、まずは大まかな概要を教えていただけますか?

「妖怪ケマメ」のコンセプトは、ジャグリング妖怪。僕は人間はみんな妖怪っぽいなと普段から思っています。横断歩道やお店などですれ違う人々を見ていると、尻尾隠せてないよ! とか三角の耳出てるよ! という感じの人がたくさんいる。でもそれが本来の人間の姿だなとも思うんです。では、ジャグラーである自分たちは一体どんな妖怪なのか? ギヨームと話し合い、「妖怪」という言葉をテーマに定め、ジャグリングを色んな角度から掘り下げていきました。

渡邉尚(頭と口)
渡邉尚(頭と口)
ギヨーム・マルティネ Guillaume Martinet (Cie Defracto)
ギヨーム・マルティネ Guillaume Martinet (Cie Defracto)

「妖怪ケマメ」では使うボールも自分たちで作っていると聞いています。これにはどういった思いがあるのでしょうか? 

作品で使われるボール
作品で使われるボール

僕は、商品というのは不特定多数に合わせたものなので、真に自分に合うものはないと思っています。ボールだけの話ではなく、生活を彩るあらゆるものに対してです。今までは既製品のボールを使って作品作りをしてきましたが、それでは限界があるなと感じ自作することにしました。儀保桜子(「頭と口」メンバー)と共に糸の素材や中の穀物を厳選し、彼女が独自の方法で手編みしています。大切にされた物につくも神が宿るように、ボールも大事に使われすぎて妖怪化したというコンセプト。実はタイトルの元にもなっています。

儀保桜子(頭と口)
儀保桜子(頭と口)

音楽も、予告編を見る限り既成の音楽をバックで流すのではなくて、かなりこだわって作られているようです。しかも楽器そのものもオリジナルのように見えます。この楽器は公演でも、その姿を見られるのでしょうか?また、公演のテーマとどのように関わってくるのでしょうか?

もちろん公演で見ることができます。この装置は今回のプロジェクトのために音楽家のシルヴァン・ケモンさん(仏)が作ったもので、竹や瓦を叩いて生音で演奏してくれます。ジャグリングを考えていく上で、自分たちが物を操るだけではなく物自身にも動いて欲しいという思いがありました。ボールと同じで、物が妖怪化して勝手に動くというコンセプトです。初めて装置の演奏を聞いた時には瓦の音の素晴らしさに驚きました。音楽自体はシルヴァンさんと野村誠さんの二人の音楽家によって作られています。シルヴァンさんはプログラミングで作曲し、野村さんはそれに合わせてライブ演奏します。野村さんが特別出演するのは横浜公演のみで、それ以降は野村さんの演奏を録音したものを使います。

日本、フランスで、それぞれ違ったやり方でジャグリングを究めてきた2人。2人がどのように関わりあうのか、どの程度「2人ならでは」の作品になっているのか、それも本公演の重要な見所だと思います。今語れる範囲で、創作のプロセスや、どのようにビジョンを共有してきたのか、大変な点、逆にすごくやりやすかった点など、教えてもらえますか。

きっかけはギヨームのアパートに泊めてもらってしばらく一緒に生活したことです。ジャグリングの価値観の話などで意気投合し、一緒に作品を作ることになりました。ギヨームはもう普通に立っているジャグリングに飽きたと言っていたし、タイミングがよかったと思います。初めは2人の共通言語としての身体の使い方やジャグリングの技を共有し、後半はそれぞれの身体のユニークさを追求していきました。

作品の内容としてもプロダクションとしても、1人ではできなかった作品になっています。ギヨームは音楽性が強いジャグリング、僕は身体性が強いジャグリング。その2つは大きい要素ですが、2人で作ったというよりはチーム全員で作ったという方が正しい。全員が既成のものは使わないぞという強い気概でアイディアを持ち寄り、お互いに影響し合って積み上げてきました。

大変だったことはやっぱり文化の違いです。同じ英単語を使っていても、文化背景により同じ意味で通じないことが多々あり、異文化交流は簡単ではないなと思いました。そのくらい微妙なニュアンスまでを話し合ってきた。やりやすかった点というか恩恵を受けた点は、現代サーカスの本場フランスのネットワークと資金力ですね。フランス各地を滞在製作で周ったり、初演もしていない作品にも関わらずヨーロッパツアーが決まっていることなどはコラボならではですね。

話し手 = 渡邉尚 文・構成 = 青木直哉 写真 = Pierre Morel

チケットも販売中

既成品を使わない、「妖怪たち」のジャグリング。大人もこどもも、楽しめる内容になっているとのことです。KAAT神奈川芸術劇場のHPからぜひご予約を。

「妖怪ケマメ」メインビジュアル。作者は絵本作家のスズキコージ氏
「妖怪ケマメ」メインビジュアル。作者は絵本作家のスズキコージ氏