週刊PONTE vol.95 2020/09/07

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.95 2020/09/07
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆
・青木直哉…ジャグリングがつなげるもの Weekly 第80回「キャンピングカーとクマ」
・Fuji…フジづくり 第95回「竹製ハンドスティックつくってた」
・ハードパンチャーしんのすけ…日本ジャグリング記 黎明編 第22回
・寄稿募集のお知らせ
・編集後記
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◆ジャグリングがつなげるもの Weekly◆ 文・青木直哉
第80回「キャンピングカーとクマ」
このところクルマに興味がある。
Uber Eatsで原付を乗り回しているせいでしょう。これまで全く興味がなかったものの、道路を走って、横目に乗り物を眺めていると自然と興味が湧いてきます。
車の種類は数あれど、キャンピングカーっていいなと最近はよく思います。
キャンピングカーを買ったら、生活にはさぞさまざまな変化が訪れるでしょうね。
移動手段が増える。そうですねえ。それから部屋が増える。うん、いいですね、コンパクトなプライベート空間ってのは素敵ですね。そして夢が増える。キャンピングカーでどこか山奥に行って、星空なんか眺めたら最高でしょうね。いいね。
あとは、税金も増えますね。
まぁとにかく、いつかキャンピングカー暮らしなんて一度はしてみたい。
さて、キャンピングカーにはいい思い出がいくつかあります。
とはいえ移動式住居を持っているなんて友人は日本におらず、日本での思い出ではありません。
乗ったことがあるのは、イタリア、ニュージーランド、そしてフィンランドです。
なぜかといえば、ヨーロッパのサーカスアーティストには、各地をツアーで回る人も多いため、キャンピングカーを持っている人も少なくないのであります。そんな友人たちに、単に移動の手段として、キャンピングカーに時々乗せてもらうことがあります。
今回はフィンランドの話。
ロヴァニエミという北の町には、小さなサーカス学校があります。その名もシルクス・タイカ・アイカ。フィンランド語では、「魔法の時間」なんて意味なんだそうで。そのロヴァニエミから、南はエラヤルヴィという、誰も名を聞いたことのないような村まで、キャンピングカーでずーっと南下しました。フィンランド人サーカスアーティスト夫婦が交代で運転してくれて、後ろの居住スペースにはもう二人のフィンランド人と、僕が乗りました。ヴァディックという小さい犬も同乗して、ハタハタと尻尾を振っていました。
フィンランドの幹線道路というのは、南から北までおおよそまっすぐ伸びているのですが、そこをドライブしている大半の時間は、森と湖しか見えません。だから、どこで目を上げてもだいたい見える景色は同じです。
みんな疲れた顔をして、少し気だるげに変わり映えのない外の風景を眺めていました。
後ろへと流れる森を尻目に、時々現れる湖の形を味わいながら南へと進む道程は、興奮を誘うという種類のものではないものの、フィンランドへ来たんだな、という旅情は喚起させます。
そうやって進んでいくと、あるところでみんなが騒ぎ始めました。
フィンランド語で会話しているので僕にはよくわかりませんが、英語で聞いてみると、「クマがいた」ということ。
フィンランドでクマ、と言えば、多くのブランドのアイコンになったりして(ビールとか、スニーカーがあります)親しまれていますが、実際にクマを野生で見るなどということは、滅多にないそうです。
車の中にいた30代の大人たちも、初めて見たと言って興奮しています。
少し話した後、車をUターンさせて、元来た道を戻りました。なぜクマ一匹でそんなに夢中になるんだ、というくらい車内はクマの話で持ちきり(たぶん)で、必死で目を凝らして、さっき見かけたあたりで草むらや森を凝視しました。
でも、もうそこにクマはいなかった。
まぁ野生の動物ですから、いつまでもじっと見世物にはなっていないでしょうね。もう、そのクマは去ってしまったあとでした。
別にキャンピングカーだからこそ起きた事件でもなんでもないのですが、その時の、クマを見られるという期待と少しだけ不安の入り混じった気分を、キャンピングカーの姿を思い浮かべるたびに思いだします。
犬のヴァディックは、なんだかわからないけど周りが興奮しているので、尻尾をいつになくハタハタさせて、ワン!とか言って喜んでました。
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☆勝手にPM!
【Weekly PM】#29:リングの厚さ
https://pmjuggling.com/blogs/journal/20200905
「たった1mmの厚さの違いで、ジャグリングのスタイルが変わっていくかもしれません。」
(記事本文より)
この記事で紹介されているアルットゥに会ったことがあります。
「このリングは重さがあるから、きちんと投げないとジャグリングできなくて、フォームが良くなったんだ」と言っていたのが印象的です。わかりきってはいた事実だけど、やっぱり道具が違うことでジャグリングは変わるんだなと。
「このリング、僕に似合ってるって言われた」とも語っていました。それもあるな。人によって、似合う道具、ってありますよね。似合わない道具もあると思う。僕は、ロシアンボールが似合わないと言われました。
(アルットゥに会った時の話はこちら:https://pmjuggling.com/blogs/column/20190201?_pos=1&_sid=4127ce7d3&_ss=r)
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◆フジづくり◆ 文・Fuji
第95回「竹製ハンドスティックつくってた」
そういえば、先月ディアボロのハンドスティックも竹でつくっていました。
アイディア自体は1年くらい前に青木さんと手作りの道具について話していた時に出て、すぐさまホームセンターに行き、ちょうど良さそうな太さの竹を探して買っていました。
しかし、普通のハンドスティックと構造が似ていないと、結局使い難くいという結果になると思いました。なので、ただ竹を切り落とすだけでなく、中の構造やグリップなども工夫しないといけないのではと考えているうちに、部屋の片隅に立て掛けてある、ただ一本の竹と化してしまいました。
2ヶ月くらい前に、青木さんがその竹製ハンドスティックの製作を実践しました。
穴を開けるためのキリを貸してほしいということで、持って行くついでに少しだけお手伝い。竹を切って、穴を開けて、麻紐を通す。たったそれだけの工程なのに、実際につかってディアボロを回してみると、特に大きな問題もなく、普通に使えました。竹まで準備しておきながら、悩んで結局つくらなかったのがもったいなかったと思うくらいです。
自分の場合、一発で完成形を目指してしまいがちなので、構想を練りながらだんだんと先延ばしにしてしまい、挫折してしまうことがあります。
今回の製作に触発され、部屋の角で眠っていた竹を本来なるべき姿にすることにしました。
工程は同じく、ただ切って、穴を開けるだけ。正直それでもう完成なのですが、それに加えて見栄えも良くしたかったので、やすりがけもしました。表面やカド全体を木工やすりで粗く削り、形を整えて、さらに紙やすりで細かく削って滑らかにしました。そうすることで、竹の表面のくすんだ色のシミや汚れが削れ、内側の均一で綺麗な黄金色が出てきました。両端のカドも丁寧に削ることで全体的に丸みおびて、手に馴染みやすくなりました。仕上げにオイルフィニッシュをして、竹の繊維も木目のように強調され、そのおかげで高級感がありつつ、落ち着いた色合いにもなりました。
最後にグリップ部分。レザーをつかいたいとは思っていたのですが、一枚貼って縫い縛るか、レザーコードを巻くかを悩みました。
最初はレザーを一枚巻いて縫い縛ろうと思ったのですが、わずかに太さが変わっていく不均等な円柱の大きさに合わせるのが大変なのと、貼り付けてきつく縫い縛っても、使っているうちに伸びて緩くなってしまうのではないかという、懸念がありました。よって、緩くなりにくいレザーコードで巻いてグリップにすることにしました。
以前、「ツインイット」というボードゲームの専用ケースをつくった際にも使用した(編集註:https://jugglingponte.com/2020/06/16/ponte-weekly-vol83/)、鹿革を何本も細くカットして、竹スティックに巻きながら貼り付けていきました。この時も、革の表側ではなく裏側をグリップの表にして巻き付け、最後にトコノールを塗って、床面を綺麗に仕上げました。やはり、ツルツルとした表側(銀面)より、しっとりと手に馴染む裏側(床面)の方がグリップには適していると思います。
ただ、スティック1本目の巻き終わりは綺麗に縛れたのですが、2本目が微妙に革の長さが足らなかったので、仕方なく貼り付けて始末をし、長さを合わせるために1本目も少しほどいてカットし、貼り付けることに。縫い終わりなどが目立たないように何かでカバーできれば完璧なんですが、そこだけがちょっと気になったところです。
でも、正直全然問題はないです。ちょっとしたこだわり程度。
(ちなみに青木さんの竹製ハンドスティックのグリップは、無印良品の麻紐を巻いています。)
ストリングもジャグリング専用のものではなく、レザークラフトで使用する「エスコード」という麻の手縫い糸の一番太いもので試してみたのですが、それでも通常のストリングと比べると細かったので、切れてしまいそうな不安感がありました。ただ、スティック自体は全く問題なく、使いやすかったです。なにより、「自然のもの」かつ「手づくり」というだけで、持っていて幸せな気持ちになります。道具も自分でつくれるんだといことを実感できました。つかっていない時も置いてあるだけで、高級な民芸品のようにも感じられます。手間暇かけて製作もしていますから、愛着も湧きます。
そして、壊れても、土に還ります。
(壊れた時はそれなりにショック受けそうですけど。)
by Fuji
写真「竹製ハンドスティック」
https://jugglingponte.com/wp-content/uploads/2020/09/sticks.jpg
製作物
・PM Juggling 「otomodama」持ち運び用の巾着ケース 製作 by Fuji
https://pmjuggling.com/product/otomodamaset/
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◆日本ジャグリング記 黎明編◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ
第22回
大道芸におけるジャグリングは、当初の外国人パフォーマーが行うバスキング重視のパフォーマンスから、独自の「笑い」を求めるパフォーマンスへと進んで行きました(そこからジャグリングのテクニックに重きを置くパフォーマンスが出てくるには、さらなる年月を要します。)
さらに、「プロ」の世界に「アマチュア」が飛び込んで行く。そんな流れがジャグリングクラブの起こりとともに生まれます。
以前「つぶつぶオレンジ」などを紹介しましたが、今回はそれよりもやや後に活動していたマラバリスタの大道芸人を。
大道芸で起きていることの流れの影響を受けてか、少しずつ以前と異なる色を帯びるようになったと感じる時期です。
「平安貴族」
コンビでのジャグリング。従来の大道芸の笑いを踏襲しつつ、東京的な笑い?を感じるやり取りが印象的でした。メンバーは郡山さん(関西)と水町さん(東京)で、その笑いのセンスの違いが混じりあっていました。普段でも、二人が揃うとその場が二人のトークの独壇場になっていたのが印象的です。
「大道バカ一代」
たいぞうくん根岸くんの二人で活動。空手着を着た師匠と弟子(馬並さんと鹿並さん)が繰り広げる大道芸。
たいぞうくんは、当時は珍しい大学入学以前からジャグリングをしていたひと。新歓時に5ボールをポリポリと投げ、一同びっくりしたものです。根岸くんは、飄々として変なひとでした(笑)もともと大道芸志向で、水町さんと行動を共にていました。
芸は、シュールな雰囲気が持ち味でした。「牛飼い小出と牛くん」の牛くんに、稽古を観てもらいつつ、ネタを磨いていましたので、そんな影響もあったのかもしれません。
この時になると、海外ジャグラーよりは、クラウンカレッジの影響が強かったように感じます。
そう言えば、水町さんと根岸くんは、当時マラバリスタの中でどことなくIJAへの意識が高かった中、ぼちぼちと情報が入ってきていたEJCにも遊びに行っていたような。意識の向けどころが、より広くなっていったのが、2000年がまもなく来らんとするとするこの時期であったのかもしれません。
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◆寄稿募集のお知らせ◆
週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。
◆編集後記◆ 文・青木直哉
-ふじくんのスティックの革グリップ、なかなかよかったです。
-昔EJCに行った日本人、というのに話を伺ってみたいんですよね。IJAも気にならないではないけど、やはりEJCという、当時はあまり知っている人が居なそうなイベントに行った方々に。昔はどうだったのか聞いてみたい。
-そう、それで思い出しましたが、今度の9月26日(土)に、「EJCのすすめ」と称して、オンラインでかいしゅーくんというジャグラーとEJCの魅力についてを話します。(詳細はこちらのアカウントで https://twitter.com/ZeroJugOfficial/status/1302196285156409344)まぁ、すすめ、というよりは、思い出話を延々とすることになりそうですが、結果として、聞いたらEJCに行ってみたくなる話になるかもしれません。よろしければ。(夜中の12時からですが)
また来週。
PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。
<END OF THIS ISSUE>
発行者:青木直哉 (旅とジャグリングの雑誌:PONTE)
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