週刊PONTE vol.6 2018/12/17

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE 2018 vol.6
(通算第6号)2018/12/17
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉…ジャグリングがつなげるもの 第6回「欧州ジャグリング紀行2018 memory no.6」

・Fuji…フジづくり 第6回「新たな歩み、布製ケース」

・板津大吾…たまむすび 第5回「EJC2019へ」

・きんまめ…デビステのてんぷら 7本目 「略称問題」(メルマガ第1回)

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

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◆ジャグリングがつなげるもの Weekly◆ 文・青木直哉
第6回「欧州ジャグリング紀行2018 memory no.6」

居場所を建てる。

大きなテントの設営、というのを初めて手伝った。
まだコンベンションが始まる前、ボブが言った。
「誰か暇な人、一緒にテントを建ててくれないかな。」
その「テント」というのは、普通のキャンプで使うようなテントのことではない。ちょっとした建物レベルの、デカい、かまくらみたいなテントのことである。
ボブが運転してきたトラックからは次々に資材が出てきた。木材の束。ボルトやナット。そして最後に構造物を覆う布。
全てを出し終わると、集まった十数人にボブが、手描きの絵を使いながら指示を与えた。
フランスにいるけれども、出自の違う人が集まると、共通語は英語だ。
ボブはカナダ人なので英語は問題なく使える。他の多くの参加者は、それぞれが頑張って英語を使う。
中にはうまく英語が話せない人もいるので、フランス語もスペイン語もポルトガル語も英語も話せる、ブラジル人のアルベルトが通訳をしたりもする。
アルベルトはキャップとTシャツに短パンが似合うファンキーな明るい兄ちゃんだ。
とてもうまいし外国語も実に達者だけど、そんなことは全然鼻にかけない、さわやかな人だ。
みんなで、長くて太い木材を一本ずつ放射状に組み上げて、ある程度のパーツができたら、それをまた組んで、全体をドーム状にしていく。
時々やることがなくなると、ダニエラが困ったような顔して「私は本当に必要なのかしら」とか聞いてくる。
作業を一段落させて水を飲もう、となると、ドイツ人の女の子がプラスチックのピッチャーに水道水を汲んできてくれる。
ピッチャーの中には、小汚いペットボトルが凍らせてつっこんであり、肝心の水の中には、少し草や砂がまじっている。
その日はとにかく太陽が照っていて暑かったし、構わずゴクゴクみんなで回し飲みする。
まるで動物みたいだな。
僕ももちろん飲んだ。暑い日の冷えた水はうまい。
みんなだらだらと汗をかきながら、南米の屈強な男たちは半裸になって、途中で組み方を大胆に間違えたりしながらもドームが完成した。
「じゃあ、最後、この布をかけよう」
そう言ってボブは屋根になる布のかけ方を指示した。
数人のボランティアが、さっきまでただの木材の束だった、自分たちの組み上げたドームを登って、これはすげえや、とか言いながら写真を撮って、布を引っ張り上げてまた向こう側におろし、ようやく、テントを完成させた。
朝から始めたが、もう午後の遅い時間である。しかし夏のフランスの昼は長い。午後5時や6時でも、まだまだ日はさんさんと照っている。

さっきまで酷暑だったドームの中は、覆いがかけられて、随分涼しい場所になっていた。
僕はやることがない日は、起きてから夕方までずっとボブのカフェにいた。
日記を書いたり、人の往来をただ眺めたり、友達と話したり、コーヒーを飲みにきたお客さんと話したりしていた。
居心地のよいところだった。

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※試験的に、ここからの話を、毎日のエッセイ集「ジャグリングの郵便箱」に移します。おそらく、来週のメルマガには、そちらで続いた話の、次の話が載るはずです。

ジャグリングの郵便箱
(12/17現在。こちらの住所も変わるかも。)

(第7回へ続く)
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◆フジづくり◆ 文・Fuji
第6回「新たな歩み、布製ケース」

前回までは、オリジナルで製作している3ボールを持ち運べる専用 Leather Ball Holder「OMUSUBI」用の革をもとめて、浅草橋周辺の革屋さんをまわりながらお店を紹介する内容でした。
今週は、新しく布製のボールケースを最近つくりはじめたので、お話します。

「OMUSUBI」は一応、3ボール専用の革製ボールケースとしてつくりました。なので、それ以上のボールを持ち歩くとなると最低でも2つのケースが必要になります。(自分は普段それで持ち歩いてます。中にはPodpoiを入れてる方もいます!)実物を見たことない人は、平面状にまるで「おむすび」の様な三角形のかたちで置かれた3つのボールを革のケースがつつみ込んでいる形状。と、想像してもらえればと思います。
ただ、練習の時はボール3つ以上を常に持ち歩く人にとって、ひとつのケースに収められる方がやっぱり楽。でも、ときには3つだけでいいという日もある。そんな場合に上手く対応できるケースはどんな形状で、どんな素材なのかいろいろ悩んだ上で、出た結論が『布』です。ある意味、必然的とも言えますが、やはり汎用性が高い仕上がりにするには布でした。

そして、別のプロジェクトでボールと一緒に販売という案もあがっていたので、最近はそれに合わせたものを意識しながら試作に没頭しています。耐久性を考えると厚手の生地がいいので、まずはデニム生地で試してみたところ、見た目は個人好み、生地も丈夫で良かったんですが、ラバー素材のようなボールだと色移りする場合がありました。
その後も、青木さんと会議を重ね、また生地探しから始まり、そして見つけたのが…『帆布』です!

最近では帆布のカバンを街でよく見かけますが、不思議と、帆布のジャグリング用ケースは自分の知る限りほとんど見たことがありません。そもそも帆布とは、帆船の帆に使用されていた頃から名前が付いたそうです。例えば、誰もが子供の頃に触れている体操マットや跳び箱、CONVERSEのシューズなんかもそうです。あと一昔前だと学生の肩掛けかばん。このように帆布はとにかく丈夫なんです!
その帆布を使ったボールケースをただいま製作しております!

by Fuji

(第7回へ続く)
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◆たまむすび◆ 文・板津大吾
第5回「EJC2019へ」

PM Jugglingというプロジェクトでものづくりをしている板津です。ここでは僕が体験してきたジャグリングの良さや、そこから学んだことなどをつづっています。

来年の8月にイギリスで開かれるEJC(ヨーロピアン・ジャグリング・コンベンション)のチケットを、すこし早いですが購入しました。子育て中なので行くのは難しいかなと思っていたのですが、ありがたいことに妻が背中を押してくれて。PM Jugglingの活動的にも来年はベストタイミングだと思い、思いきって申し込みました。

EJCには2013年に参加したことがあります。その規模の大きさや、ジャグラーたちの「野良」感の強さに、自分がこれまで日本で見ていたジャグリングは、広い世界の、まだまだほんの一部だったんだなあと思ったものです。自分でテントを張り、外国語だけのジャグラーたちの中に入っていくのは、孤独でありながらも、ときには一体感も感じられて、楽しかった。ジャグリングが人種を越えた人の営みであることを意識して、イベント後はより広い視野で、ジャグリングとの関わり方を考えるようになりました。

そんなEJCへ、ひさびさの参加。2019年、世界のジャグラーは何を考え、どんな道具を使っているのか。あるいは、つくっているのか。自分たちの道具はどう評価されるのか。いま、ものづくりをしている僕なりの視点で、なにかを日本に持ち帰れたらと思っています。そのために、自分の道具と、ジャグリングへの考えを整えておきたいし、気になる人と話せる準備もしておきたい。そう考えると、来年の夏までに、やるべきことはたくさんあるなあと、なんだか楽しくなってきました。

EJCのチケットを買うだけで、こんなにわくわくするとは自分でも意外でした。早めに行くことを決めてしまったのは、なんだかよかったのかもしれません。楽しみな目標があると、日常がすこし違った景色にみえますね。

(第6回へ続く)

PM Juggling

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◆デビステのてんぷら◆ 文・きんまめ
7本目 「略称問題」(メルマガ第1回)

きんまめという。紙媒体PONTEでも連載していたので、ご存知の方もいるかもしれない。ご存知ない方もおられるかもしれない。ご存知ない方は、朝日新聞を想像してほしい。社会問題や国際情勢、スポーツのニュースから芸術の話題まで、ちゃんとしたことが書いてある朝日新聞でも、ののちゃんの母が4コマの中でぐうたらしている。つまり、デビステのてんぷらとはそういうことなのである。(ホントは天声人語になりたかった……)
第2第4月曜、ツキ1、隔月、季刊、年刊と指数関数的に発行間隔が延びていったPONTE。最近見ないなぁ、編集長からもメール来ないし、そわそわ、え、これってもしかして恋!? と疑い始めたところで、久しぶりにTwitterのタイムラインを見てみたら、まさかの週刊である。タケノコとヨソの子は少し見ない間にすぐ育つ、と博多華丸は言っていたことを思い出す。これが、燃えるゴミの日のペースになっていくのか、資源回収の日のペースになっていくのか、これからが楽しみでならない。当連載は本家PONTEを見習って不定期掲載という形にしますが、こちらでもお付き合いのほどよろしくお願いしたいと思う。どうか末永く。
ということで、2年ぶりのてんぷら執筆なのだが、筆者もPONTE連載中に関東から関西に拠点が移り、生活の変化があった。日本という国は地球儀上じゃ切った爪くらいのシルエットなのに、東と西では手の爪と足の爪くらい文化が違う。似ているようで違う。エスカレーターの左右に始まり、うどんの出汁の濃い薄い、電気保安協会のメロディも異なれば、休日のテレビは王様のブランチなのかせやねん!なのかと、同じところは皆さんヒートテックを着てるくらいなものである。そして、筆者を含む多くの関東―関西転居者が目の当たりにして、アレは本当の話だったのかと驚愕するのが、マック/マクド案件なのである。関東ではマックとしか聞かなかったし、こちらに来てからはみんなマクドなのである。しかもマ『ク』ドなのである。真ん中に強調がくる、マクドなのである。
こうしてマックなのかマクドなのかという永遠のテーマを直に体感すると、どうしても考えたくなるのが、デビルvsデビステ論争というこちらもやはり永遠テーマ。デビルスティックという長くてややダサな名前を略すに、デビルと言うか、デビステと言うか。天下を双割せしこの問題に終止符を打たんとしたところで紙面が尽きた。続きはまた次の機会に。

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きんまめ KINMAME: ジャグリングサークルジャグてっく元部長。くらいしか経歴がない。デビルスティックをやっていました。
最近はいくつかサメ映画を観ました。好きなエンドロールはジュラシック・シャークの。好きなジャグラーは特にいません。

(8本目へ続く)
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◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

・今これを書いている最中に、友人のスウェーデン人、エリック・オーベリさんからメッセージが来た。
彼が長年作り続けてきた「ゴーストキューブ」を、クラウドファンディングで売り始めたから、ぜひ宣伝してくれたら嬉しいな、とのこと。箱がいくつもくっついたものがうねうね動くおもちゃ(なんか失礼な言い方してますかね)。
いや、これ、すごくいいのです。別に言われなくても宣伝しようと思っていた素敵な道具なので載せておきますね。
https://www.kickstarter.com/projects/ghostkube/ghostkube

・以前紙雑誌に連載をお願いしていた、きんまめさんが戻ってきてくださいました。とても嬉しいです。いろいろと、なんだかすみません。「マクド」ですが、フランスでも、「マクド」と言うみたいです。まぁ、なんか、「マぐ『ド』ー」みたいな感じでしたが。

・先週読んだ、『空をゆく巨人』という本が印象的でした。アーティストの蔡國強と、彼を支える志賀という男(とその周りの人)を描いています。蔡さんは考えついたことの実現に対して妥協が全然ないし(万里の長城を火薬で10km伸ばすとか)志賀さんもいきなり北極に行ってしまったり、9万9000本桜を植えようとしていたり、まるでスペインのサグラダ・ファミリアみたいなスケールです。さーて、俺も何かやるか、という気にさせられる、実に面白い本でした。
あとは、そうそう、『ボヘミアン・ラプソディ』も、もし時間があるなら、あれはやはり観て後悔はしないと思います。ママ〜。
さて、また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

<END OF THIS ISSUE>

○電子メールマガジン「週刊 PONTE」2018/12/17

発行者:青木直哉 (書くジャグリングの雑誌:PONTE)

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