台湾初の本格的なサーカスフェス
Text by 青木直哉
Photos by 小野澤峻
台湾では初めてとなる本格的なサーカスフェスティバルが、台湾・高雄で2016年10月28日より開催中。「サーカスプラットフォーム(馬戲平台)」と称して現代サーカスを紹介する3日間。1ヶ月強続くアートフェスティバルの一環である。
サーカスといっても、今までのいわゆる伝統的なサーカスに限らず、たとえば上の写真のように、けん玉が舞台で舞うことだってある。いまや多様化した「パフォーマンス」を紹介することが目論見でもある。
ガラショー、ワークショップ、ジャグリングバトルなどイベントも盛りだくさん。ゲストの国籍もヨーロッパ、アメリカ、アジアと幅広い。PONTEが注目するジャグリングイベントもたくさん。
このイベントは、衛武營文化センターと、星合(シンホー)有限公司が共同で主催しており、また政府からの援助も出ている。
主催者にインタビュー/台湾サーカスの現状
出演者の選定、イベントの運営を担う星合有限公司の陳星合(チェン・シンホー)、江侑倫(ジュン・ヨウルン)さんはこう語る。
「台湾にはサーカスアーティストが沢山いますが、内にこもりがちです。ただ練習をたくさんすればいいという考えも根強く、演技も固定観念に縛られて似通ったものが多い。まだまだ可能性を持ったアーティストはたくさんいます。サーカスそのものは発達してきているので、今度は台湾の中だけではなくて、外の世界へと視野を広げるきっかけになったらと思っています」
主催の2人はEJC(世界最大のジャグリングフェスティバル)やフランスのアビニョン芸術祭を始め、海外のフェスティバルにも頻繁に参加している。特にヨーロッパから受けた影響は大きいという。「ヨーロッパでは、演劇、音楽、ダンスと並んでサーカスが紹介されているのを目の当たりにしました。ジャグリングのフェスティバルに行っても、人々は活発に交流して、シーンを盛り上げています」
フェスティバルの雰囲気
フェスティバルは入場無料で、一部のプログラムを除いて、全てが市民に解放されている。参加者は老若男女幅広く、家族連れや年配の方々からジャグリング、サーカス好きの人々まで、全員が親しみやすい雰囲気の中で、おもいおもいに楽しんでいた。ショーだけではなく、立ち並ぶ露店もお菓子や小物など様々なものを扱っていて、さながら夏祭りのようである。
台湾に現代サーカスは根付くか?
主催者二人は、イベントそのものが無事開催できたことを喜ぶ反面、この現代サーカスの祭典が台湾のサーカス認知の向上とアーティストの育成など、今後につながっていくかどうか、万全の自信はないという。確かに一朝一夕に状況を変えることは叶わないだろう。だが自然にショーを楽しむ市民たちの姿を見て、また積極的にゲストたちと交流する台湾のアーティストを見て、徐々に、見えないところで新たなつながりの端緒が生まれているように見えたのは間違いない。
真面目過ぎず、ゆるすぎず、適度なのんびり具合で人々がサーカスと付き合っているのを目の当たりにするにつけ、台湾での新たなサーカスの萌芽が十分に見えていると感ぜられた。台湾サーカス/ジャグリング界の今後には大注目である。
衛武營藝術祭サーカスプラットフォーム公式サイト:http://waf.org.tw/en/activities/circusseries/
2021年7月27日 内容を一部修正。