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パフォーマンスを身体から切り離す。ジャグラー・小野澤峻さんの美しき試み。

編集長の青木です。小野澤峻さん、というジャグラーの友人がいます。
彼が、”Movement act”と名付けられたこんな作品を発表していました。
(註:記事公開時現在、展示は終わっています。)

 

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小野澤さんは現在、東京藝術大学4年生。
今春には学部を卒業予定。
この作品は、卒業制作として提出されました。
8方向から次々にボールが打ち出されて、中心で交わり続けるこの美しい作品。
ジャグリングをモチーフとして制作された、とのことですが、一体どのような経緯で制作されたのでしょう。

“Movement Act” 作者の小野澤さんインタビュー


青木:この作品のもとになった考えは?

小野澤:「パフォーマンスを身体から引き剥がして展示することはできるのか、ということです。この機械は5分に一回くらいの確率で失敗もするんですよ。そういう風に調整しています。全く失敗せずに終わる回もあれば、(註:この展示会では、15分おきに一回起動して、3分ほど動かしていた)はじめの1分くらいで衝突してしまう回もある。ちゃんと失敗するので、見るたびに異なる結果が引き起こされて、まるでパフォーマンスを見ているようなライブの緊張感、ワクワクする感じが引き起こされる、と思っています。」

作品の説明をする小野澤さん(右)

青木:どんな経緯でこれを思いついたのでしょう?

小野澤:「大学に入ってから4年間ずっと、ジャグリングを美術で表現するにはどうしたらいいんだろう、と考えてきました。でも、そもそも美術予備校に入ったのも高校3年生の9月で、本当に遅かった。入ってからも全然美術の知識がなくて。ジャグリングを演じるという手法しか知らない自分にも嫌気がさしていました。そこで2年生でいったん、わざと直接的にジャグリングを絡めた作品を作って、そこで区切りをつけたんです。」

「3年生の時は、写真をやっていたんですよ。その時の作品で、『こういう細かいところの感覚は、小野澤くんらしい、ジャグリング的な作品だね』と講評されたものがありました。それは、ジャグリングを絡めていないものだったんです。その時に気づいたことがありました。それは、自分に宿るジャグリング性は、身体の技術だけじゃなくて、むしろ世界の捉え方や、ものごとの見方の中にあるんだな、と。」

青木:ではどのようなプロセスで、ジャグリングのパフォーマンス、考え方を展示に置き換えていったのでしょう。

小野澤:「ジャグリングでは、キャッチと投げる、という行為があります。だからはじめは、投げる、取る、という構造でできた、世の中にあるものを洗い出しました。ピッチングマシンなんかも調べました(笑)最終的に、スマートボールにヒントを得て。」
「当初は上方の投げ上げで表現しようとしましたが、それではジャグリングそのものに寄り添い過ぎている。それより、展示をするということに特化した条件で模索をしていった結果、転がす、という結論にたどり着きました。」

(このアカウントで、他にもプロトタイプの動画が公開されています。)

「はじめのプロトタイプは十字のクロスで、これができたのが昨年の6月。そのあといろいろ試行錯誤があり、レールが8本になってから、難易度が飛躍的に上がりました。最終形態の調整には、4ヶ月かかりましたね。レールを0.1mm削ってはテストし、また削り、の繰り返しです。中央のレールがない部分は制御ができないので、バネとボールの距離、そしてレールで工夫するしかないんですよ。でもそこは、ジャグラーとして、あくまでお金を出して解決するのではなくて、手仕事での解決にこだわりました。」

この美しいレールも、全て自身で削って、着色している。

青木:実際の制作はすべて自分で?

小野澤:「発射を制御するプログラムは知人に作ってもらいましたが、それ以外は全て自分で作りました。盤面は木製で、それを削るところから、盤面を支える金属の台は溶接から、ソレノイド(註:発射を担う装置)の配線の格納まで、全てデザインと作業を自分でしています。」

配線について説明する小野澤さん(左)

青木:これからの予定は。

小野澤:「今所属している、先端芸術表現科の院試があと数日に迫っています。そこに受かったら、作品作りはやめて、まちづくりなどの現場に積極的に入りたいと思っていたんです。アーティストやジャグラーを、社会のどこにフィットさせるのかを俯瞰する立場の仕事がしたくて。ただその前に、作家の気持ちもわかるようにしておこう、と思った。だからこの4年間は表現活動に捧げて、それで終わりにしようと思ってきたんですが、まさかこの作品にこんなに反響があるとは思わなくて(笑)ありがたいことに、ぜひ続きが見たい、という声もいただくので、どうしようかな、と迷っているところです。」


小野澤さんのお話を聞いてから見ると、より芯のある作品だ、と感じられました。
ジャグラーとしての、4年間にわたる美術の研究が、シンプルに表されているような気がしました。
ジャグラーが、別の形でジャグリングを表現する、ということの、非常に秀逸なかたちだと思います。
今回の展示は東京都美術館で行われたもので、2019年1月28日から2月3日までで終了しています。
いち観覧者として、ぜひまた多くの人に見てもらう機会があったらいいな、と思う素敵な作品でした。

小野澤さん自身について

小野澤峻(おのざわ しゅん)。ボールジャグリングが得意。本格的な映像制作・写真撮影もお手の物。大きなジャグリングの舞台にも出演経験があり(ながめくらしつによる作品)、「SLOW MOVEMENT」という、障害者とともに作り上げるサーカスの活動にも積極的に参加。さまざまな方面に興味を持つジャグラーです。

小野澤さんが撮影した映像作品

PONTEより

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