日記

  • 4月25日(木)

     7時には起きて、リビングに降りて日記を仕上げる。映像もアップする。今のところ毎日できている。今回の旅の目標のひとつは、日本での生活の延長を続けることだ。というか、日本の延長、という意識すらない方がいいかも知れない。ただ生活がある、ただ流れている感じ。

     いよいよフェスティバルが始まる。サイモンは主催者なので9時前に、家の他のみんなは9時半ごろに家を出て、僕たちは11時近くに会場へ行く。12時からの僕のワークショップに間に合えばよし。と、着いて早々、別のワークショップを手伝うことになった。外の芝生でディアボロを教える。といっても初心者向けの簡単なもの。子供から大人まで和気藹々と楽しそうにディアボロをしていた。サイモンはディアボロのパスを教えていて、盛り上がっていた。これ、いいなあ。

     それから、ガラショーの順番などを決めるミーティング。部屋に集まってみんなで話す。ジェームスが仕切っている。彼は溌剌としてていい。なんだか、この旅のキーマンになる気がしている。深く繋がれる人だ、という感じがするんだ。部屋を閉め切って20人ほどが集まるものだからちょっと空気がこもっていた。

     お昼の時間。近所のインド系の人が経営するバーガー屋へ。僕はハンバーガー、昂汰くんはホットドッグを注文。家に帰ってジュースと一緒に食べた。

     そして14時にまたジムに戻り、最初のワークショップ。いきなり「Comfortable Juggling」のワークショップ。これは、僕が今回一番うまく行くか懸念していたワークショップだ。要点もメモして、しっかり準備していこうと思ったけど、結局大した下準備もせず、流れに任せることにした。気負わずやろう。別に僕のワークショップが目当てでみんな来ているわけではない。ただ、こんなジャグラーがいるんだ、とわかればそれで良いのだ。失敗とか、ない。大成功はあるかもしれないけど、別にそれを狙ってもしょうがない。ただ経験から結果が生まれるだけだと思おう。

     「なんで、気持ちいいのがいいんでしょうか」

     と始める。大声で始める。輪になって、みんなこちらを向く。僕は14歳からジャグリングをしていて、若い頃はみんなよりもうまくなりたいという思いがとても強くて、苦しいときもありました。でも、32歳にもなると、ジャグリングとの向き合い方って、変わってくるんです(同じく32歳のバイロンが頷く)……

     最初の10分僕はしゃべっていた。自分でもなんで僕は英語でこんなに饒舌になれるのかよくわからない。いったい僕はどこでこんな能力を身につけているのか。自分の身体から言葉が出てくる、という感じがする。僕はここに辿り着くまで、13歳で英語を勉強し始めてから、20年近くかかったなぁ。別に今が到達点だ、というのじゃないのだけど、でも、今の自分の姿を、20年前の僕に見せても、15年前の僕に見せても、10年前の僕に見せても、5年前の僕に見せても、そして5日前の僕に見せても、驚くだろうなと思う。喋る、ということが、「英語」と「日本語」という区別ではなくて、ただしゃべっているか、しゃべっていないか、という区別で行われている感じがする。これは、僕の最近人生に訪れている変化と呼応している。自我の感じ具合をコントロールできるようになってきている。とても心地がいい。

     みんなに道具を持ってもらい、気持ちいいジャグリングをする、という意識で、同じ技を5分間続けてもらう。みんなふわふわと動く。果たしてこれが効果的なのかどうか、よくわからない。最終的に楽しければ、いい、ということになるんだけど。

     「これ違うわ、と思ったらすぐいなくなってくれて構わないですから、それがあなたの気持ちよさですから。僕はあなたに、あなたがどう気持ちよさを感じるかを教えることはできないんです。だから、自分でモニタリングしてください。自分の身体のことは自分に聞いてください」

     僕はジャグリングを教えるつもりってほとんどなくて、ただ、僕がジャグリングを通して自分自身をより楽な方へ導く、という態度について、自分で理解しようとしている。みんながこれに興味があるかどうか、とかももう関係ないかも知れない。ただ僕はこうだ、って言ってるんだ。それを強く言う。僕は人を退屈にさせることを極度に恐れてきた。多分今も恐れている。でも、少しずつ、受けてが退屈することを恐れる心と、自分が「こう」であることをただ「こう」であることで見せる、ということのバランスを取るのがうまくなっている気がする。僕はこうしてどんどん文章を書いていく。こんな感じで、僕はワークショップでみんなと話していた。ジャグリングも、ワークショップも、生活も、オーストラリアも、日本も、

    全部一緒になっていくんだ。

     2時40分にはネタ切れになって、さて、どうしましょう、と言ったら、バイロンが、「静かな部屋で話そうぜ」というから、半分ぐらいの人と一緒にミーティングルームへ移動した。そこでもずーっと、話した。

     17時からは昂汰くんのワークショップ。通訳として参加した。30人ほどが参加し、基礎的な動きをみんなで学んだ。そしてここでもバイロンが、明日以降で一回、静かな部屋で話そうぜ、と言う。というわけで、明日の内容も決まった。

     それから、AJCの5周年を祝うんだ、と言って、バースデーパーティが開かれる。食パンにバターを塗ってデコレーションの砂糖をまぶしたフェアリーケーキ、と言うのをみんなで食べる。シンプルだけど、疲れた体には美味しかった。

     一度夕飯を食べに帰る。スーパーでソーセージを買い、焼いてマギのめんと一緒に食べる。美味。やっぱ肉だね。オーストラリア。

     それからもう一度会場に戻って、ファイヤージャムをやっていたから参加。みんなで、火のついた道具を回す。ニクラスと言う青年が、ファイヤボールとトーチを貸してくれた。

     体育館に戻るとバイロンがいて、昂汰くんと小一時間話した。馬が合うようだ。よかったよかった。いつか日本にもきてほしい。

     早めに家に帰ったが、色々と作業をして12時ごろに絵を描き終わった瞬間、バッタリとねた。■

PONTEは「旅とことばとジャグリング」をテーマに活動しています。

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