=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.26 2019/05/13
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆
・青木直哉…ジャグリングがつなげるもの Weekly 第25回「Dali日記後編」
・Fuji…フジづくり 第26回「レザー製のクリスタルボールホルダー」
・きんまめ…デビステのてんぷら 24本目 (メルマガ第18回)
・寄稿募集のお知らせ
・編集後記
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◆ジャグリングがつなげるもの Weekly◆ 文・青木直哉
第25回「Dali日記後編」
中国で行われたフロウアーツのフェスティバル。
先週に引き続き、日記(メルマガver.)の後編をお届けします。
【4/27】
ゲストたちが勢ぞろいする、目玉のイベント、ガラショーがあった日。僕も出た。
いや、もともとショーをするつもりでは来ていなかったのだ。
しかし本番2日前に、主催者のべべに「ガラショーに出る気、ある?ディアボロのアクトが無いからさ」と聞かれた。
もちろん、出してもらうことにした。
こういうことがあると、とっても嬉しい。(いや、それが割にあるんだよな。ニュージーランドでもこういうことがあった。)
主催者も参加者も感じのいいイベントなだけに、余計に嬉しい。
一応こういう時のために、いつでも演じられる演目は持っている。そのため急遽二日間、炎天下で練習をした。その間、やたらに日に焼けた。標高が高いので、紫外線も強い。
帰国してから、春先なのに腕の皮がぺりぺり剥けて、周りからは「季節外れだ」と笑われることになる。
ガラショーは、他の日と同じく、野外のステージで行われた。そして、都合の悪いことに、ちょうど夜のショーが始まる7時から9時ごろにかけて、毎晩のように強い風が吹いていた。いや、僕なんかはまだいいけど、火を使うパフォーマーや、もっと風に流されやすいボールやハットなんかを使っていた人は、ちょっとかわいそうだったよな。でも、最終的にはみんなそんなことをあんまり気にせず、愉快に楽しんでいました。
ショーが終わると、昨日も遊びに来ていた、「チューチュー」というニックネームの女の子が、二人の友達を連れてきていた。そのうち一人は、大きな太鼓を持ってきていた。何をするんだろうな、と思っていたら、ここで芸を見せたい、と言い出し、いきなり地面に横になって、その太鼓を足で蹴って操り始めた。他にも、チューチューさんは僕にディアボロを教えてくれようとしたし(確かに難しいコンボではあったんだけど)嵐みたいな人たちだった。学校でやっているらしい。
【4/28】
実質的な最終日。明日は帰るだけ。ずっと外に置きっ放しだったテントを畳んだりなど。
本当は、どこか大理周辺の観光地にでも行ってみようか、という話をしていたのだが結局どこにも行かないことにした。
その代わり、というのでもないが、ホテルに現金でお金を払わなければならなかったため、再び旧市街に繰り出す。
ATMが街中にあったのである。
そのついでに、まだ行っていないエリアに足を伸ばした。
その途中で、よい佇まいのお茶屋さんを見つけた。ためしに入ってみると、店員のお兄さんがとてもいい人だった。
茶器の値段を聞き、Fujiくんとしばらく二人で品定めをしていたのだが、「お茶を試飲したければ、飲んでもいいよ」と言って、お茶に招待してくれた。
ただの味見ではなくて、本式に茶器を使って淹れてくれて、30分ぐらい静かにお茶を飲んだ。
テキトウな中国語で色々と会話もした。
そのお兄さんは、僕らが商品選びに迷っている間も、カウンターで難しそうな本を無表情で読んでいた。
会話をしている最中も、必要以上に感情を表に出すことがなかった。
でも決して冷たい、というのではなく、むしろその逆で、お茶を飲み終わって帰る頃に、「また古城(旧市街のこと)に来ることがあったら、お茶を飲みにおいでよ」と、明らかに社交辞令ではない本心で言ってくれた。
とてもいい出会いだった。こういう出会いがあるだけで、大理が一層、好きになる。
【4/29】
帰る日。ホテルを引き払い、朝は会場に行って、見つけられた人には挨拶をする。
主催のサムとべべも、会場の中にある小屋でぐっすり寝ていたので、悪いとは思ったが起こして挨拶をした。
タクシーで駅まで。
大理駅から、乗り継ぎをして玉溪(ユーシー)まで行った。この日は、フェスティバルで出会った、シューさんという人のところに泊めてもらうことにしていたのだ。
ユーシー駅はとても大きかった。
駅に着くとシューもいて、一緒にタクシーで家に向かう。
家は立派な、3階建の一軒家。鶏も飼っていた。(食用。)
お母さんとおばあさんが一緒にいて、ついでに近所のおばあさんもいて、着くなりいろんな食事を出してくれた。
少し休憩してから、温泉に行った。
温泉といっても、日本のように裸では入らず、水着着用で入る、プールのようなもの。だから女性のシューさんも一緒。
さて、風呂に入ろうか、と思ったら、シューが「まずはお茶を飲もう」というので、お茶を飲んでから入った。
さすが中国。温泉も、気持ちよかったな。
【4/30】
朝はゆっくり起きて、空港に向かう。
シューのお母さんは、朝ごはんもたんまり用意してくれた。
こうして、たくさんの料理でもてなすのが中国式なんだそうだ。
心遣いがとても嬉しかったし、シューも、お母さんも、おばあさんも、みんなニコニコとしていて、気持ちよく食事を振舞ってくれた。
最後にシューが車で駅まで送ってくれた。一方通行の道を無理やり逆に行ったり、運転は荒かったけど。
駅で電車に乗ろうとしたら、警察に止められた。
パスポートをやたらにチェックしてくる。
でもあと10分もしないで電車が出てしまうし、それを逃すと飛行機に乗れるか怪しいので、ここで悠長にしている時間はない。
「あと10分なんだけど」と伝えると、「早く早く」と同僚にもせっつかれて、僕らのパスポートを写真に撮ったりしていた警察官は、さっさとパスポートを返してくれた。
まぁ、あまり日本人がフラッと遊びに行くようなところでもなかったから、怪しいと言えば怪しかったよな。
無事新幹線にも乗り、空港に着き、経由地である香港へと向かった。
【5/01】
夕方、香港に到着。
次の日本行きのフライトは朝の8時だ。15時間くらいある。せっかくなので街に出ることにした。
あらかじめ連絡しておいた友人のウェンくんが、バス停まで迎えにきてくれた。
その足で、「まずは夕食を食おう」と言われ、わらわらと他の人も集まってきて、一緒にワイワイと、香港式の食事を楽しんだ。
日本の居酒屋のごとく、ばんばん食事が運ばれてきて、僕らはそれをばくばく食べる。
食べ終わると、ウェンくんや他のジャグラーたちが一緒に借りているスタジオに行く。
月10万円くらいで、練習場所として数人で借りているらしい。
雑居ビルの12階にあって、駅も近いし、広さも十分あって、なかなか良かった。
香港はそれまでいた雲南省とは違って湿度も高く、座っているだけで汗をかいてしまうようなところだが、スタジオの中では冷房が効いていてとても過ごしやすかった。
その後もう一度街に繰り出して、また別の友達とビールを飲み、終電もなくなったので歩いてスタジオまで帰った。
いきなり降り立った香港で、夜中にダラダラと話しながら歩いて夜道を帰るのは、不思議に満ち足りた気分だったよ。
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このあとは、スタジオで3時間くらいだけ寝て、次の日の早朝便で、香港から日本に帰りました。
特に問題も何もなく、『シュガーラッシュ・オンライン』を見て、気がついたら羽田空港でした。
中国に対するイメージは、きっと変わるんだろうな、と僕は行く前に思っていました。
そして、その予想通り、僕の中国のイメージは変わりました。
そして『予想通り』、その変わった後のイメージは、僕が予想していた「予想と違う中国」とは全然違いました。(しょうもない言葉遊びですよね、はは)
僕は今、中国が好きです。
いや、正確には、雲南省の僕の訪れたあの地域、昆明だとか、大理だとか、玉溪がとても好きです。
またすぐ行ってこい、と言われたら、嬉々として行きます。たとえまた情けないぐらい日に焼けても。
故にですね、また来年もこのフェスティバルをやるよ、というのであれば、再訪もやぶさかではありません。
うーむ。
こうやって少しずつ、地球の上に、お気に入りの場所と、訪ねるべき友人を増やせるのは、やっぱり幸せなことだ、と思う。
(完)
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”Juggling – From Antiquity to the Middle Ages: the forgotten history of throwing and catching”『ジャグリング 古代から中世まで:投げたり取ったりの忘れられた歴史』書評
「ジャグリングの歴史について考える」とは何について考えることなのか。
https://jugglingponte.com/blog/2019/04/12/thom-wall-book-review/
引き続き入荷予定です、続報をお待ちください。
☆中国紀行・番外編☆
PM Jugglingのサイトに、シューさんとの出会いのことを、もうすこしだけ詳しく書きました。
「ジャグリングのエッセイ #3 温泉のお礼にボールをあげた話」
https://pmjuggling.com/7020/
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◆フジづくり◆ 文・Fuji
第26回「レザー製のクリスタルボールホルダー」
最近忙しかったのが、やっといつも通りの日常に戻りつつあります。
中国のFlow Fesへ行く前にジャグラーの友人からクリスタルボールのホルダーケースをつくれないかと相談を受けていました。帰国してからGW中の繁忙期の仕事やパフォーマンスの依頼などを済ませ、やっと落ち着いた時間がとれるようになったので、製作に着手しはじめたところです。
クリスタルの大きさは76mmで、マルチ用に4つ製作します。ベルトタイプのレザーを数メートル、ハトメやボタンなどの金具をいくつか購入し、方眼用紙で型紙をつくり、サイズを調整しながらピッタリ合うように縫ったり金具をつけて固定しています。
リクエストでパフォーマンス中でも腰に取り付けられるようベルト穴を取り付けました。位置も工夫して演技中スムーズにクリスタルボールが取り出せるよう、ボタンを外せば下に落ちて手元にくる仕様にしています。
まだひとつめを製作したところで、残り3つ…。でも、久々のレザークラフトはつくっていてとても楽しいです!
by Fuji
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◆デビステのてんぷら◆ 文・きんまめ
25本目 「中間甘味食」(メルマガ第19回)
なぜ我々人類は、オレオのクッキー部分を取り外して食べてしまうのか。
ジャグラーがついついペットボトルをシングルスピンでトスしてしまうように、オレオを前にした我々は無意識にクッキーを剥いでしまう。
本当にクッキー部分だけを食べたいのであればココアクッキーを買えばよく、クッキーとクリームの組み合わせがお好みなら、最初っから普通に齧って食べれば良い。わざわざ挟んであるのになぜ剥がすのか。
その理由を考えてみたところ、この不可解なオレオ分解行動の根底に流れるのは、もったいない精神、ではないだろうかと思い至る。一口で食べてしまうのは、すぐになくなってしまうので惜しい。なので、二口で食べる。二口で食べるのも、惜しいので、三口に分ける。チビチビ食べる。さらに、もったいない精神が暴走すると、単調に食べ進めるだけに飽き足らなくなってくる。クッキーをわざわざ剥がすのは、できるだけ複雑な工程を踏むことで、擬似的に時間がかかっているように自身を錯覚させているのではないだろうか。
ヤンヤンつけボーとかねるねるねるねとかもぎもぎフルーツとかに対して、「つけとけよ!」「練っとけよ!」「もいどけよ!」というツッコミをする者はいない。これらの、あえて手間をかける系のお菓子が根強く市場に生き残っていることからも、前述の説の有力性が伺える。
食べたいのだが、食べ終わりたくないのである。その相反する欲求と欲求の板挟みの末に生まれたのが、この、手間をかけて食べるという妥結点なのだ。ややこしく言うと、オレオを食べるという幸福Aと、その幸福Aの可能性を所持しているという幸福B、の2つが存在していて、できるだけ幸福Bを増幅させるために、幸福Aを先延ばしにしてしまうのだ。
好きな食べ物は最後まで残してしまうし、デートの前日はなかなか眠れないもの。ジャグリング道具も、カタログを広げながらアレコレ迷っている状態が一番楽しかったりする。
人間とは、2つの幸福というクッキーに挟まれながらも新たな甘みを見出す、オレオのクリームのような存在なのである。
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きんまめ:ジャグリングサークルジャグてっく元部長。くらいしか経歴がない。デビルスティックをやっていました。ピザを作る工程がジャグリングになったりする世界だから、お菓子の食べ方から生まれるジャグリングもあるかもしれないと言い訳しながら書いています。好きなジャグラーは特にいません。
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◆寄稿募集のお知らせ◆
週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。
◆編集後記◆ 文・青木直哉
-きんまめさんの原稿を読んでふと思い出したこと。
タピオカミルクティー、という昨今ものすごい勢いで流行っているドリンクがあります。
あれも、「行列に並ぶ一時間」がかけがえのない時間なんだな、と思います。
友達と一緒に行って、「楽しみだね」という興奮を共有する、その時間こそが、タピオカミルクティーの本質であり、600円(だか700円だか)という対価を支払って獲得しているものなのでありましょう。
そう思うと、その時間が終わる頃にドリンクがついてくる、という大変に質の高い娯楽ですね。
いや、別に皮肉じゃなくて。
また来週。
PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。
<END OF THIS ISSUE>
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