週刊PONTE vol.161 2021/12/13

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.161 2021/12/13
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆

・青木直哉…Object Episodesを聴く(9)

・ハードパンチャーしんのすけ… 日本ジャグリング記 舞台編 第22回

・寄稿募集のお知らせ

・編集後記

◆ジャグリングの雑想◆ 文・青木直哉
Object Episodesを聴く(9)

OBJECT EPISODES 9
https://www.juggle.org/object-episodes-9/

Object Episodesシーズン2、2本目。珍しくエリックが多く話す。今まで彼がジャグリングについて辿ってきた道のりについて。エリックは、この歳(1978年生まれ)にしては比較的珍しく、サーカス学校を卒業している。
古い学校としては、フランス国立サーカス学校のCNACが1985年からあるが、エリックの周りに本格的にサーカス学校が各地に現れたのは2000年ごろから。彼はスウェーデンのサーカス学校DOCH(現SKH)に1999年に入学している。サーカス学校がまだまだジャグリングの世界ではマイナーだった時代において、なぜエリックが学校に行くという選択をしたのか。その理由の一つとして、練習場所が欲しかったから、また、生徒との交流を期待した、という。
機関のあり方とともに、ジャグリング自体のあり方の変遷も語られる。かつてジェイが少・青年期を過ごしたアメリカでは、ジャグリングの習得に際しては、個々の「技」に名前がついているのが普通だった。そして様々な道具、技を満遍なく習得することが望まれた。しかし、ショーン・マッキニーなどはジャグリングの習得の仕方が偏っていた。ヘッドロールをやらないのか、と聞いたところ、僕はあんまり得意じゃないから、自分に合っている上手い動きだけ練習するよ、と発言したことが取り上げられる。そしてこれが、当時は珍しいことだったのだ。結果として、ショーン・マッキニーは独自のスタイルを貫いた人として今も名を残す。
かつてCNACで見つけられたという「全く新しいジャグリングのパターン」「ジャグリングの未来」の話も語られる。ビハインド・ザ・バックとオーバー・ザ・ショルダーを交互に同じ肩側からやる「カートホイール」さえも、あっと驚く発想であった時代はほんの20年ほど前。「要素を組み替える」という発想がまだ新鮮であった頃のこと、など。そして上記の、先人たちがしてきたジャグリングを改革する試行錯誤の話から、エリック個人の試行錯誤の話へと移っていく。
エリックはかつて、ボールのヘッドロールで有名になった人である。『Headache』というビデオでその名を世界に知らしめた。そのヘッドロールの発端は、まだインターネットも普及していない時代に、スペインのジャグラーが2つボールを投げてこめかみでキャッチできるらしい、という話を聞いて、それに挑戦していたところ、どうしても一個が乗ってももう片方が流れていってしまう、というので、逆にそれを技のベースとして発展させていくことに決めたから。今となっては本当にそのスペインのジャグラーが、2つのボールをこめかみでキャッチしていたのかすらもわからない。もしかすると、1個はこめかみで、もう1個は手でキャッチしていたのに、話に尾ひれがついただけかもしれない。だがとにかくエリックは、自分なりにヘッドロールを技術として発展させていく。ジェイが初めてエリックのヘッドロールのパフォーマンス見た時、なんて斬新なことをするんだ、と驚いたという。

それからエリックは、クラブのノブをあごに挟んでスイングさせる技術(チンスイング)、シガーボックス、リングなどでの技術で、同じように技術系統を探っていく研究を続ける(ここでインスピレーションを受けた日本人のジャグラーとして竜半、セバスちゃんの名前が上がる)。
2010年ごろからは、また発想が変わる。
キャリアの最初では、ヘッドロールという「既存の基礎」から技術を発展させた。次に、例えばクラブでは、チンスイングという「独自の基礎」から技術を発展させた。今度は、「独自の道具」を開発し、それを発展させるのはどうか。そこで、ゴーストキューブの開発が始まる。
ジェイも、この道具が発展をしていった頃の話については色々と発言し、日本の「ピタゴラスイッチ」から受けた影響などについても語っている(1:38:30ごろ。「パイタゴラスイッチ」と発音している)
そして、だんだんとジャグリングの歴史についても興味が移っていく。エリックがかつてやっていたスケートボードでは、歴史にやたらに詳しいオタクのような人がいたが、ジャグリングではいない。ならば自分がなろうと思った、と語る。

2007年に来日してJJFに来た時の話もしていた。筆者が初めてJJFに参加したのも2007年。その頃エリックは「ボールとシガーボックスの人」であった。その年にはジェイも一緒に来ていたが、二人とも、それ以降もずっと前線にいる。
変化をしながらそれでもジャグリングというジャンルについて興味を失わず付き合っていく、偉大な先輩だ、と思う。

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☆PM Jugglingのnoteを勝手に紹介☆
リズム
https://note.com/daigoitatsu/n/n48351d6f11c9
「仕事のリズム、ジャグリングのリズム、ひいては自分の調子は、こうした家庭生活でのできごとに大きく影響されている。」
(記事本文より)
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◆日本ジャグリング記 舞台編◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ

第22回

ジャグリングの舞台公演がほぼなかった00年代後半。
大きな会場での公演を終え、次に考えたのは、ロングラン公演でした。
「いつでも、なんなら毎日ジャグリングの公演が行われている状況を作りたい!」
その第一歩がロングラン公演の実現でした。

ロングラン公演といえば、一般的には一つの公演を何週間、あるいは何ヶ月にも渡って開催することを指すのだと思いますが……そこをストレートにしないのが、自分らしいというかなんというか。若干の逃げの姿勢も、振り返ると感じます。
さておき、それで企画したのが、「門仲ジャグリングフェスティバル」。
会場を江東区門前仲町にあった「門仲天井ホール」に戻して、5日間4つの公演を連日開催しました。

初日は「堀の外のジャグリング 第4回公演」。
二日目は「Live!」。音楽とジャグリングのコラボレーションをテーマにした公演。
三日目は「ながめくらしつ」。
四、五日目は「マナー&エチケット」。ナンセンス喜劇とジャグリングのコラボレーションでした。脚本演出は、女性だけのナンセンス喜劇劇団「げんこつ団」http://genkotu-dan.official.jp
主宰の吉田衣里(現・一十口 裏(いとぐち うら))さんにお願いしました。「げんこつ団」、ナンセンスが好きな方にオススメです。

ジャグリングと異なるジャンルのひとを巻き込むのが、もう一つのテーマである企画でした。
当時、目黒陽介さんと度々話すことがあり、その中で「他のジャンルのひととコラボレーションをすることで、ジャグリングが広がってゆくのではないか」と話していました。そんな意識の下で制作したのが、「門仲ジャグリングフェスティバル」。
目黒陽介さんが、現在もいろんなジャンルを巻き込んだ作品を創作してジャグリングの地平を広げ続けているのは、PONTE読者の多くが知るところかと思います。
余談ですが、目黒陽介さんと池田洋介さんとのコラボレーション公演「PLAY」を「門仲ジャグリングフェスティバル」よりも前に企画しました。これは、二人の天才が交わって、とても面白かったです。

この時期になると、ジャグラーもそれぞれの方法を持ってジャグリングで表現する道が見えてきたのではと思います。

◆寄稿募集のお知らせ◆

週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。

◆編集後記◆ 文・青木直哉

-どことなく、今週のメルマガは、日本とスウェーデンの00年代後半の話がかぶさっている感じ。

-そろそろ何か一区切りつけたくなってきました。

また来週。

PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。

発行者:青木直哉 (PONTE)

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