週刊PONTE vol.106 2020/11/23

=== PONTE Weekly ==========
週刊PONTE vol.106 2020/11/23
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PONTEは、ジャグリングについて考えるための居場所です。
週刊PONTEでは、人とジャグリングとのかかわりを読むことができます。
毎週月曜日、jugglingponte.comが発行しています。
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◆Contents◆
・青木直哉…ジャグリングの雑想 5.O君
・ハードパンチャーしんのすけ…日本ジャグリング記 黎明編 第32回
・安田尚央…VRサーカス団「シルクドメタバース」旗揚げ告知(渡邊尚インタビュー抜粋 インタビュアー:尹雄大)
・寄稿募集のお知らせ
・編集後記
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◆ジャグリングの雑想◆ 文・青木直哉
5.O君
高校時代の同級生O君に会った。19歳の時以来だと思う。
事前にきちんと申し合わせて会ったのではなく、Facebookでたまたま近くに来ていることを教えてくれたので、会いに行った。
O君は昔、一緒にジャグリングをしていた。それほどジャグリングにどっぷりハマった人ではなかった。ただ、文化祭の出し物で、ジャグリングを小学生に教えるという、企画があって、それに参加してくれた時にボール3つの技を少しと、4つの基本を少し、習得した。野球部だったO君はボールの扱い方がやっぱり僕らとは違った。
O君は今では結婚もしていて、家なんかも建てちゃって、話を聞いていたら、なんともうすぐ女の子も産まれるんだという。あの一緒にふざけていたO君に。へぇ。名前まで候補を決めている。
自分がいないところでも、みんなそれぞれ、地続きの人生を送っているんだ。O君だっていろいろ経験してきて、電話に出た時も、「はい、Oでございます」なんて言っちゃって、なんだか大人びた会話をしていて、僕が想像のつかないようなこともいっぱいしている感じがした。でも決して、きつい目になったとかそういうことはなくて、むしろおおらかな、優しい雰囲気が増していた。
なんか、親父とおんなじことしてるよ、とO君は言った。休みの日に車磨いて、植物に水やって、夜、打ちっぱなし行くかー、とか。
こうやって、あのころ俺らが思っていた「父親」みたいなものになるんだ。
2人で笑った。
ラーメンを食べながら、昔ジャグリングやったよね、という話をした。
やったねー。
今でも、やっぱり3つ投げるだけでも盛り上がるよ。とO君は言った。
その時、O君は結構、嬉しそうな顔をしていたというか、ジャグリングやっててよかったよ、という表情をしていた。
そうか、こういうジャグラーもいるよなぁ、と思った。
僕はO君を「ジャグラー」だと思ったことは特になかったのだが、実際にはジャグリングを通して人と関わっていたのだ。
別れ際、柔らかい笑顔で「また」というとO君は歩いて行った。
アメフトをやっていたからだよ、と本人が言うその背中は結構幅広くて、随分変わったもんだな、と思った。
僕の頭には、昔一緒に教室でジャグリングをしていた頃のO君が思いだされていた。
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☆勝手にPM Jugglingを紹介するコーナー☆
【Weekly PM】#40:内と外の往復
https://pmjuggling.com/blogs/journal/20201120
「これからは意識的に、自分自身の楽しみ、表現のための時間をつくっていこうと思っています。」
(記事本文より)
この記事に出てくる削ったステージボール、なんだか別のスポーツのボールみたいですね。
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◆日本ジャグリング記 黎明編◆ 文・ハードパンチャーしんのすけ
第32回
(前回までのあらすじ)
大道芸を観に井の頭公園を散歩するのが週末の習慣であったハードパンチャーしんのすけは、ある時、シェーカーカップ(まだその名も知らない)に出会った。あちこちを探し回った末に、デュべのカタログの片隅に求めてきたものを発見し、注文した。そして、練習を始めた。
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当時(1997年くらい)、マラバリスタと静岡の大道芸サークル・Wapsは、その距離にも関わらず、何かにつけて交流がありました。大道芸ワールドカップin静岡が結びつけた縁だろうし、当時のネットワークが疎であったことの表れなのかなとも思います。
ジャグリングは当時マイナーで、今のひとたちがジャグリングについてどんな意識を持っているのかはわからないけれど、少なくとも今のひとよりもはるかに強烈なマイノリティ意識を持っていました。そして、そこに混じる微かな優越感…優越感をというのはぼくだけである可能性も否定できないけれど。
さておき。
Wapsのメンバーは学園祭に来てくれたり、静岡に行けば一緒に飲んだくれた気もする(しかし、ぼくは呑みすぎて記憶を失うことしばしなので、実のところよくわかっていない)
当時、アマチュアジャグラーが技術の先端を手に入れるのは、大道芸フェスティバルでありました。その中でも、大道芸ワールドカップin静岡はその最高峰。来日したパフォーマーがサークルに遊びに来てくれる、なんてのは幸せの極地でした。ワールドカップを通して新しい技術の輸入。それが一つありました。
そんな中で、Wapsとマラバリスタの中で技術交流がしばしば行われたのが、シェーカーカップな気がします。当時、交流があって、今なお交流があるのはぼくの場合、パフォーマーがほとんどなのですが、今も現役なのは、しゅうちょうやTOMIです(他にもいますが)
現場で一緒になった時、彼らがシェーカーカップをしているのを観ていると、度々20年以上前の空気感が蘇ることがあります…先日もTOMIのショーを見て、蘇りました。
あの時も今も、ぼくらはジャグリングをしている。
それは、なんだか幸せなことだな、と感じるのです。
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https://twitter.com/shinnosuke_hp
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◆VRサーカス団「シルクドメタバース」旗揚げ告知◆冒頭文・安田尚央
VRサーカス団「シルクドメタバース」を旗揚げしました。実際に収録して、VR動画は絶対にこれからのパフォーマンス動画のニューノーマルになると思える、素晴らしいものでした。
しかし、それだけだとIT技術の凄さばかりが目立ち、サーカスの魅力が出し切れないと思い、私が15年追っかけているプロインタビュアーに渡邊尚さんをインタビューしてもらいました。
一部を寄稿させていただきますが、全文は下記サイトで有料で読めます。
https://cirquedumetaverse.com/
11.27(Fri)-11.29(Sun) 開幕。
(インタビュアー:尹雄大)
ージャグリングに出会った時からジャグリングを極めるのではなくて、ジャグリングは何かの入り口だ、という風に思ったんですか。
初めは、とにかく7個ボール投げられるようになりたかったんですよ。これでプロになろう、これで食っていこうと思って大学を休学したんです。
そしたらある程度のところからあんまり上手くならなくなって、すごいしんどくなっちゃって、ボール触って投げようとしたら涙出てくるようになっちゃって。僕はジャグリングを続けたかったんだけど、続けられない身体になっちゃって。
その中でどうしたらいいのか、って時に横でブレイクダンサーたちが練習していて、気晴らしに一緒に練習するようになったんですよね。そしたら逆立ちの才能があったのか、上手くなってて、そこから徐々に徐々にジャグリングもまたできるようになってきて。
だから頑張ることは僕にとって害悪なんですよね。頑張るっていうことはそれは才能がないか認知が間違ってるっていうことだよ、って認識するんですよ。
人にストレッチとか倒立教える時もその人が一番やりやすい方法でしか僕は教えないんですよ。ジャグリングもたくさん投げるのが向いてなかったらさっさと3ボールにしたらいいじゃん、3ボールが多いんだったら2個でもいいじゃん、って思ってるんですよ。で最後一個のボールを手放したら0ボールジャグラーになるんですよ。その時に人はダンサーになるんです。
だからダンスとジャグリングの境目もないし逆立ちとジャグリングの境目もない。
ー型とか形がお好きじゃない印象を受けました。
だって、型っていうのは僕らが地層だとしてみんなの体が化石発掘場だとして、型はたまたま綺麗に出土された化石なんですよ。みんなそれのように掘ろうとしてる感じがするんです。
でもまだまだ未知の型が埋まってるはずなんですよ。だって人間の歴史なんてめちゃめちゃ短いじゃないですか。だからなんで短い人生を使って他人の、出土したものの真似をするんだろう、っていうぐらいの気持ちで僕は思ってるんですね。
もし世界がまだGoogleマップもなくてコロンブスもいなくて全然発見されてない状態で近くに未知の島があったら、そこぐらい泳いで行くんじゃないって僕は思うんですよね。自分ができることってなったら、自分ができる型を発見する、とかそっちの方が遥かに人類に貢献もできると思うし、役割だと思うんです。

VRサーカス団「シルクドメタバース」 https://cirquedumetaverse.com/ 11.27(Fri)-11.29(Sun) 開幕。
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◆寄稿募集のお知らせ◆
週刊PONTEに載せる原稿を募集します。
800字以内でお書きください。
編集長による査読を経たのち掲載。
掲載の場合は、宣伝したいことがあればしていただけます。
投稿・質問は mag@jugglingponte.com まで。
締め切りは、毎週金曜日の23:59です。
◆編集後記◆ 文・青木直哉
-また最近、パフォーマンスをする機会がありました。たぶん、何年かぶりに、コンタクトジャグリングを人前でやりました。昔取った杵柄。
-これから冬になって、一体どういう状況になっていくのか。また、いっそう外に出づらくなるかもしれない。でも、家にずっといなきゃいけない、という状況も、全くよくないわけでもないよな、とは思います。うちで踊るしかないですね。
また来週。
PONTEを読んで、なにかが言いたくなったら、mag@jugglingponte.com へ。
<END OF THIS ISSUE>
発行者:青木直哉 (旅とジャグリングの雑誌:PONTE)
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