第1便 (2018/04)Spin Circus Fest 2018レポート

2018年1月18日~22日、オーストラリア第2の都市メルボルンにて開催されたSpin Circus Fest (Spinfest 2018) に無計画弾丸ツアーで参加してきたので、レポートしたいと思います。Spinfestは、2010年より毎年開催されているサーカスイベントです。ジャグリングはもちろん、ダンスやヨガ、アクロバットなど様々なジャンルのパフォーマーが集まります。

チケット手配

以前からこのイベントの存在は知っていたものの、語学学校だけで精一杯だったため、よく調べもせず参加を諦めていました。参加を決めたのは、既にイベントが始まって1日目の夜のこと。チケットは$250(全日参加・大人料金)と少々高めでしたが、まだ間に合うと思い、速攻でチケットとメルボルン行きの飛行機を手配、翌日の語学学校は無断欠席しブリスベンからメルボルンへと飛び立ちました。

会場までのアクセス

メルボルンに着くと気温は45度。この日は特に暑かったそうです。実はこの時、空港から会場までのアクセスが未定のままでした。Spinfestの会場は山の中にあるキャンプ場。公共交通機関は無し。最寄りのGeelong駅からは45km程あり、Uberを使っても片道$80、徒歩だと約10時間との表示。イベント初日と最終日はシャトルバスの運行がありましたが、自分は2日目からの参加なので使えず。とりえあず運営のfacebookページにメッセージを送り、「このままでは最悪ヒッチハイクになるのでは……」とドキドキしながらGeelong駅へ向かいました。駅に着く直前、運営から「ちょうど今日来るジャグラーがいるから、迎えを手配するよ!」との連絡が。駅前でクラブを片手に30分ほど待っていると、沢山のポイとスタッフを積んだ1台の車がやって来ました。迎えに来てくれたのはサーカス学校出身のDan。初対面にも関わらず、沢山話しかけてくれました。私の拙い英語力でも、共通の趣味があるおかげか不思議と楽しく会話ができました。会場までは車で1時間半、想像以上の山道を走りました。道中、カンガルー飛び出し注意の看板があり、オーストラリアであることを実感させられました。

キャンプの様子

会場の様子

会場はキャンプ場で、広場と小屋の中で練習が出来るようになっていました。日差しが強く、とにかく暑いのでジャグラーはタープの下で練習していました。湿度は高くないので、日陰に入ると心地よく練習ができます。広場の中央にはトランポリンやシーソー、空中ブランコが設置されており、アクロバットの練習をしている人も沢山いました。小屋の中はステージが設置されており、主にゲストが練習用に使っていました。その光景は、これまで動画で見ていた海外のジャグリングフェスティバル。夢のような空間です。

会場

食事は会場内にあるレストランで朝昼晩、決まった時間にのみ食べることが出来ます。近くにスーパーやコンビニも無いので、時間を逃すと食べれません。メニューは3種類ほどから選べて、どれも美味しい物ばかりでした。

みんなで食事

宿泊

キャンプ場は自由に使うことが出来るため、各々でテントを持参してキャンプしていました。私はテントを持っていなかったため、ドームと呼ばれているコテージのような建物を使わせてもらいました。部屋の中は2段ベッドが4つあり、枕とシーツ、コンセントも完備されていました。日中と違い夜間は冷え込むため、持って行った寝袋を布団代わりにして寝ていました。

ドームの様子

トイレとシャワーは別の建物に設置されており、山の中にもかかわらず温水のシャワーが使えました。

参加者

男女半々くらいの計60人程度。殆どがオージー(オーストラリア人)で、メルボルン、シドニーからの参加者が多かったです。中には子供もいました。日本人は自分を含めて3人いました。トスジャグラーは少なく、ポイやスタッフ、フープを持っている人が多かったです。

ワークショップ

ジャグリングやフープ、ウィップや逆立ちなど様々なワークショップが行われていました。私が参加した中で印象的だったのは、ゲストのJoe FisherによるChuka ChuksのWS。中に砂の入った固いプラスチックボールを使い、リズムに合わせてジャグリングをするという物です。キャッチする度に音が鳴るので、リズムに合わせてキャッチするのですが、私はボール2つで精一杯でした。Joeは3つのボールを使いながら巧みにリズムを刻み、自在に音を出していました。彼はジャグリング以外にもドラムが叩けるらしく、音楽の才能にも溢れているようです。

その他にフィッシュテールのWSに参加しましたが、参加者のレベルが高く、「手を使ったフィッシュテールはみんな出来るよね」ということで、いきなり足を使ったフィッシュテールのレクチャーが始まりました。

ファイヤー&LEDジャム

こっちの人たちはとにかく火と光る道具が大好き。大抵ファイヤーor LEDの道具を持っています。夜になるとファイヤージャムが行われ、これぞflowといった感じの音楽がガンガン流れる中、枠の中で各々が自由にパフォーマンスを楽しみます。最初はゲストパフォーマーなどの数名だけ参加していましたが、次第に盛り上がっていき、順番待ちの行列が出来ていました。私は一度もやったことがなかったのですが、「お前やってみろよ!」と火のついたトーチを渡され、ファイヤー初体験でパフォーマンスをしてきました。ポイやスタッフ、フープはもちろん、ウィップやファンなど日本ではあまり見かけない道具もあり、とても新鮮でした。ファイヤージャムの後はLED ジャムが深夜遅くまで続きました。見ているだけでも飽きませんが、光る道具を持っていないと少しつまらないです。

ファイヤージャム

ガラショー

3日目の夜にガラショーが行われました。全体で10組程がパフォーマンスを行いました。私は運営の方に誘ってもらい、トップバッターとして参加させてもらえることになりました。火飲みのカリスマとして知られているShade Flamewaterのパフォーマンスは、火をまるで道具のように自由自在に操っており、圧巻でした。フープジャグリングのカリスマEmma Hörnell は、とても美しく繊細にフープを操り、最後は5フープを投げるというダイナミックな演技でした。一方、私のパフォーマンスは、内容はさておき、日本人であるおかげか大いに盛り上がりました。初めての海外イベントで、いきなりステージに立つという大変貴重な経験になりました。

ガラショー出演

サーカスオリンピック

4日目の日中には、ジャグリングやアクロバットからボトルフリップ、何でも有りの競技会が行われました。エンデュランスやコンバットはもちろん、ディアボロを飛ばして水の入ったバケツの中に入れる競技や、ポイを的のリングめがけて投げ入れる競技がありました。一番印象的だったのはペアを組んで、片方が投げたブドウを相手が口でキャッチする距離を競うというもの。10mくらいの距離があっても成功しており彼らの動体視力には驚きました。

レネゲードショー

4日目の夜はレネゲードショーがありました。レネゲードショーとは何でもありのパフォーマンスショーで、参加者は何かしらの仮装をしなければ入場することができません。私は何も用意していなかったので、フェイスペイントをしていたジャグラーに絵の具を借りて、顔に適当なペイントをして入場しました。トップバッターはByron Huttonによるクラブアクト。無音の中でとてもハイレベルな3、4クラブの演技を行い、見ていて鳥肌が立ちました。Joe Fisherのクラブアクトはテンポの速い曲に乗せて5クラブやバウンス技を決めており、最後は観客のスタンディングオベーションが起きていました。会場では抽選会も行われ、景品のファイヤー関連の道具がずらりと並んでいました。

総評

Spinfestは運営がしっかりとしていて、本当に充実した時間を過ごせました。帰りは参加者に駅まで乗せてもらい、無事にブリスベンへ帰ることができました。今回のイベントにて、日本のジャグリングイベントでは感じられない、オーストラリアの文化をいくつか感じることができました。1つ目は、彼らが練習する理由です。彼らは夜間に火を使ったパフォーマンスをするために日々練習していました。実際に会場では、日本でよく見かけるテールポイを使っている人は1人もおらず、コンタクトポイを使用している人ばかりでした。理由を聞いてみると、ファイヤーポイの形に近いからとのことでした。2つ目に、彼らは「flow」の考え方を大切にしているということです。実際に参加してみて、私にもなんとなくflowというものが分かりました。ある参加者は「僕たたちにとって、flowはlifeなんだよ」と言っていました。彼らの動きは無理をせず、自然に任せてリラックスしているようで、見ていて気持ちよかったです。3つ目にイベントの開催日程についてです。日本最大のジャグリングイベントであるJJFの開催期間が3日間であるのに対し、Spinfestは平日を含む5日間の開催でした。参加者の中には、1週間程休みを取って来ている人もいました。どうやらオージーには気軽に休みを取って良いという考え方があり、会社も休みに対して寛大なようです。

終わりに

英語が十分に話せない私に対しても、彼らは決して笑ったりすることなく話を聞いてくれて、コミュニケーションを取ることができました。ジャグリングという世界共通のツールは、異国の文化に触れるための強みになると思います。もし海外のジャグリングイベントへの参加に迷っている人がいたら、とりあえず行ってみることをおすすめします。

(左から)筆者、ジョー、ヘイマッシュ、バイロン