ジャグリングがつなげるもの 欧州ジャグリング紀行2018 memory no.19

ロンドンでバレエを踊った話(後編)

スタジオからアパートは、歩いて15分ぐらいだった。そこは、大きな大きな体育館。
中に入るともう何人かが集まっていて、その中にショーンもいた。
ショーンは、もじゃもじゃでグレーの髪が特徴的な人だ。バレエやコンテンポラリーダンスが大好きで、ジャグリングとダンスを融合する試みを90年代からずっとおこなっている。もうおそらく50歳を過ぎた大人なのだけど、いつまでたっても好奇心を失わないでいる。自分でも、言っていた。「僕はジャグリングのことを考えると、いっぱい可能性があって、まるでお菓子屋さんに来た子供みたいにワクワクしちゃうんだよね」と。
「へーい、なんでこんなところにいるんだい」と、ショーンは僕を見るなり、肩に手を置いて優しく迎え入れてくれた。明日にはアゾレス諸島に行くんだけど、少しだけロンドンに滞在してるんだ、と僕は言った。
するとショーンは、はじめの笑顔を崩さず、いつもの高い声で一息にこう言った。
「そうかそうか。じゃあね、今日はダンスのレッスンをまずやるから、君も一緒に僕たちと踊ったらいいよ、ここに来ちゃったからには、踊っていかなくちゃダメだよ」
そういうわけで、一緒にみんなと踊ることにした。
適当に広がって、前に立っているバレエの先生の真似をする。バレエなんか一度もやったことがないので、本当に見よう見まねで恥ずかしいのだが、周りを見てみれば、何度もガンディーニジャグリングの作品に出演してきた人を除いて意外にみんな苦戦している。ショーン自身も、もう25年以上ガンディーニ・ジャグリングをやっているのに「こうかな、それともこうかな!」などと言いながら楽しくやっている。(しかも特別うまいわけではないのがまた微笑ましい)
ショーンは練習の最中、笑顔を絶やさない人だった。僕が見ている間ずっと、常にチームの人たちを笑わせながら、ジャグラーやダンサーたちを丁寧にまとめあげていた。彼の激しい作風からは想像しづらい風景である。また、今回作っていた作品が、バランスボールのように大きなボールを、十数名のジャグラーとダンサーが噴水の中でジャグリングする、という明るい作品だったこともあるのだろう。そして生演奏のジプシーミュージックバンドも来ていて、その演奏に合わせて、みんな楽しそうにしていた。ドミニクも、すごく楽しそうだった。