ジャグリングがつなげるもの 欧州ジャグリング紀行2018 memory no.11

 リヨンからイギリスに来た。

 イギリスには以前にも来たことがある。6年前のことだった。BJCという、イギリス最大のフェスティバルのためだ。

 今回は別のジャグリングフェスティバルに参加する。CATCH! という名前の、比較的小さなフェスティバルだ。それで、イギリスはマンチェスターへ、ロンドンを経由して、来た。

 イギリスの英語は聞き取りづらい。日本の学校教育では基本的にアメリカン・イングリッシュが採用されている。だからそれ以外の発音については、やっぱり同じ言語とは思えないくらいの隔たりを感じる。前に来た6年前は、今より英語が下手だったからすっかりお手上げだったけど、今でもやっぱり何回も聞き返す。だんだん申し訳なくなってくる。でも向こうも、しばらく話していると、「ああ、こいつには少し手加減してやらないとな」と思ってくれて、だんだん話がしやすくなってくる。

 冗談を言われて、わからない時は辛い。わかったとしても、外国語で冗談を言い返すのだって、すごく難しい。最近は英語のコメディばかり観ていたおかげか、少しは面白いことも言えている気がするが、あるいはみんなが優しいのだろう。

 マンチェスターでは、市街から少し外れにある、ジョーという人の家にお邪魔させてもらった。

 なぜ僕はジョーの家に泊まったのか。

「誰かフェスティバル会場まで、車に乗っけてくれる方、いませんか」とジャグリングフェスティバルのFBページで尋ねたら、全然知らない、リーナさんという人から連絡がきた。

「とりあえずジョーの家に行ってね」

 と言われた。

 ジョーが誰かも知らないし、それ以前にリーナさんも知らないんだけど、言われるがまま住所をたどって家に行ったら、僕が開ける前にドアが開き、「はいはい、入って入って」という雰囲気で、細身の女性が僕を中に招き入れてくれた。

 いきなり「疲れてない? シャワーとか浴びる? 寝る?」と聞いてくれた。僕は、ひとまず荷物を置いて休みたいな、と言うと、「オカイ(Okay)」と微笑んで、リビングルームに案内してくれた。そこには、もう三人、ジョーの友達がいた。しばらく話したあとにシャワーを浴び、仮眠を取った。

 何が何だかわからないまま、しばらくして目が覚めた。いったい何しにきたんだっけ、としばらく考えた。

 外から声が聞こえてきたので、はっとした。

 庭に降りると、バースデイパーティが開かれていた。今日はジョーさんの誕生日なのだそうだ。バーベキューと、ケーキがあった。

 僕は、そこにいるのはみんな知らない人だと思っていたんだけど、ジョーは3年前、福島のジャグリング日本大会に来ていたんだ、と言った。そこには僕もいた。はじめに声をかけてくれたリーナさんは、6年前のBJCで、会っていた。「BJCのあの演技、よかったわよ!」と6年越しにコメントをくれた。ほかにも、続々と庭に集まってきたジャグラーたちの話を聞くと、今までのEJCや他のイベントなど、至る所ですれ違っていた。

 だんだん、自分が何者なのかわからなくなってきた。

 それは、イギリスに住んでいるほとんど話をしたことがないジャグラーと、「接点が多い」という事実が自分を困惑させるからだ。

 そして、彼らがあまりにもすんなりと僕のことを受け入れてくれるからだ。
僕がこれほどまでに「受け入れられる」理由がまったくわからなかった。日本から来た、その土地の人とはまったく縁もゆかりもない人間がなぜこれほど、優しく受け入れられるんだろう。

 そして、自分がどういう人に受け入れられるのか、ということは、とりもなおさず、自分がどういう人間であるか、ということを示しているような気がした。だから、こんな風にほとんど知らないイギリスの人から、さも近所の知り合いのように話しかけられると、自分がいったい何者なのか、全然わからなくなってしまう。

 

ジョーさんは僕に、控えめな笑顔でもう一本ビールを勧めてくれた。