カテゴリー: ALL POSTS

【予約販売開始】エティエン・ショズィとのコラボレーションTシャツを作りました。

フランスが生んだディアボロ(とジャグリング全般)の天才、Etienne Chauzy(エティエン・ショズィ)によるデザインのTシャツです。

【Tシャツ制作の経緯】

先日エティエンより編集長あてに、メッセージが。
2019年6月に、来日予定だとのこと。

目的は、東京ソラマチで6/1(土)2(日)に予定されている、ラッドファクターフェスティバルの参加。ゲストショーや、ワークショップを行うそうです。東京近郊にお住いの方は、彼と触れ合えるチャンスですよ。ぜひぜひ。

さてさてそこで、イベントの後に空き時間もあるようだから、一緒に日本を旅行でもしようか、という話になりました。そのための資金をどうしよう、ということで、せっかくだからTシャツでも作って売ったらどうか、と提案したところ、向こうもノリノリで、「面白いね、いいよ!せっかくだから絵を描くよ!」と言ってくれました。

というわけで、いくつか届いたうちの一枚が、この絵というわけです。

とても素敵です。

PONTE君がロボットを駆使して街を踏み歩いている、恐ろしいTシャツです。

エティエンへのバックもあるので、この価格。まずは、彼の日本滞在中の資金の足しにするつもりで、初回ロット、30枚くらい作りました。追加生産は未定です。早い者勝ちです。実物が届き次第、また画像をアップ予定。今の所、イメージ画像でご容赦ください。

あと数日で入荷の予定なので、出荷は6月上旬に行います!

ぜひ、夏のお供に一枚いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

購入はBASEサイト(下記)より。

「書くジャグリングの雑誌 :PONTE」は、「旅とジャグリングの雑誌:PONTE」になります。

表題の通りです。

2014年からPONTE(ポンテ)は、「書くジャグリングの雑誌:PONTE」という名前で、雑誌刊行や記事の発表などを続けてきましたが、このたび2019年5月末より

「旅とジャグリングの雑誌:PONTE」

という名前で再スタートします。

PONTEは、編集長である青木直哉が、ジャグリングのことについて文章を書いて、発表する場所が欲しい、という想いで始めた雑誌でした。開始以来いろいろな人にお世話になり、迷惑もかけつつ、約5年間、紙の雑誌を発行したり、Web記事を書いたり、グッズを作ったりしてきました。

「書く」と銘打っていたのは、当時僕が「何かを『書いて』考えるというやり方」を突き詰めてみたかったからです。それを名前に入れることでずっと忘れないでいよう、と思っていました。

今でも、「書く」ことが大事な行為だ、という認識は変わりません。

しかしその過程で、どうしても「ジャグリングの今」を伝えるメディアのごとく期待をされているように感じてしまったり、また自分の方でも、そういう役割を演じようとしたこともありました。

もう一度、いったい何がやりたくてPONTEを始めたのか、またもっとさかのぼって、なぜ自分はジャグリングをしているのか、ということを考え直してみると、それはジャグリングによって僕は世界と繋がってきたからだ、そしてそのことをまずは「書いて」伝えたかったからだ、と気がつきました。

 

僕は、ジャグリングを通して、旅に出るきっかけができたり、素敵な人々に出会えたりすることが、すごく好きです。

そして、それを他の人と共有できるとき、とても嬉しい気分になります。

 

これからのPONTEは、「ジャグリングがきっかけとなって旅に出る」ことの喜びを、手をかえ品をかえ、明るく伝えていけるメディアであればいいな、と思います。

そこで、名前を変えて、そのことをわかりやすくして、再び出発することにしました。

「雑誌」という部分を取るべきかどうか、これも悩みました。

悩みましたが、やっぱり最後の最後に、残すことにしました。

なぜなら、やっぱり紙の媒体を時々は出そうぜ、という意気込みがまだあるからです。

 

というわけで、名前が新しくなったPONTEは、より「旅」にフォーカスを当てて、発信をしていきます。

今まで読んでくださってきた方々にとても感謝していますし、これからもどうか、よろしくお願いいたします。

 

…あっ、そうそう、旅先で出会った人たちのインタビューや、ジャグリング一般のお話も載せていきますから、「なーんだ、旅は興味ないや」という方も、よろしければ、時々のぞいてみてください。

それでは、再び、よろしくお願いいたします。Webサイトも、これからどんどん変えていきます。

 

青木 直哉 2019年5月 横浜

編集長、いま日本にいる? 1

(この内容は、毎週月曜日発行のメルマガの一部を転載したものです。メルマガ登録はこちら。)

「旅するジャグラー」の編集長が、先週の出来事について振り返るコーナーです。1000文字前後で書いていきます。

最近PM Jugglingのほうで、「道具と人」に関する連載をしています。そちらに力を確保するため、(さすがに毎週何本も何本も無尽蔵にエッセイを書けないので)しばらくこんなことをしてみます。「エッセイが読みたいよ」という方は、手作りのジャグリング道具のお店「PM Juggling」のホームページで、人とジャグリングが織りなす話を楽しんでいただければと思います。隔週ぐらいで更新したい。
https://pmjuggling.com/category/essay/

-タイトルは、僕がよく聞かれるフレーズです。いや、1年のうち330日ぐらいちゃんと日本にいるんだが、「大事なときに日本にいない」と思われていて、こんな風に聞かれる。僕としては、嬉しい。嬉しいんだけど、「日本にいるよ」というと、期待を裏切っているみたいな気分になる。

-最近ベトナムに興味がある。というか、ベトナム「語」に興味がある。Youtubeで、ベトナム在住の日本人女性のチャンネルを見つけた。彼女が流暢なベトナム語を話すのを見て、触発された。僕が今住んでいるアパートの隣にはベトナム人が住んでいる。そこで、ベトナム語を少しずつ教えてもらうことにした。「私は日本人です」と言えるようになった。これからどうなるだろう。
aNcari room
https://www.youtube.com/channel/UCLmX_OViU8KVy8vPvlsvuOw

-金曜日はPM Jugglingの仕事。このところは毎週PM Jugglingのオーナーであるだいごさんの自宅付近まで行って、仕事をしている。仕事といっても、翻訳などをする以外、最近あった面白いことや、それぞれの進捗を、コーヒーを飲みながら(ゲラゲラ笑いながら)話すだけであるが。面白いっす。

-6月の中旬に、フランス人のディアボリスト、エティエンと北海道に行くことになった。もともと僕自身、北海道で行われるWorld Juggling Day2019 in Hokkaidoに行く予定だった。それが、たまたまその時期にエティエンも日本にいる、ということを知る。なので、一緒に行くことにした。先週、飛行機を取った。ひょっとすると、渡邉尚さんに会いに沖縄にも行くことになるかもしれない。というわけで来月は南北ダイナミックに日本を移動できそうで、楽しみである。
そうそう、エティエン君には、現在PONTEの新しいTシャツをデザインしてもらっています。6月には出します。
WJD2019 in Hokkaido公式サイト https://wjdinhokkaido.jimdosite.com
BASTON by Etienne Chauzy https://bastonetienne-chauzy.dpdcart.com

-先週の読書。
『ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅』下川裕治(中経の文庫)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321708000336/

最近、道端で出会ったトルコ人と意気投合して、家に泊めた。そのためか、にわかにアジア諸国に興味が湧いてきた。そのトルコ人は、横浜駅の近くでブレスレットを売っていた。それを資金に、9ヶ月もヒッチハイクの旅を続けているそうだ。日本だけではなく、イラン、マレーシア、フィリピン、韓国など、たくさんの国を回ってきたという。初めて会ったとき、「日本の人はなんだか、冷たい」なんて言うので、僕は悔しかったから居酒屋に連れて行ったり、「すき家」のカレーを奢ってあげたり、できる限りのことをした。日本を好きになって帰ってくれるといいけど。

以上、先週は、日本にいました。

——
☆PONTE Tシャツ再入荷しました☆
PONTE君が描かれた白いTシャツ、再入荷!これから訪れる夏にもってこいです。白シャツ党の皆様、いかがですか。ちまちまとしか入荷できておらず申し訳ないのですが、各サイズ、数枚ずつ入荷しております。ご注文はお早めに。
http://store.jugglingponte.com/items/2189103

☆中国紀行・番外編☆
「ジャグリングのエッセイ #3 温泉のお礼にボールをあげた話」

—————————

「ジャグリングの歴史について考える」とは何について考えることなのか。

”Juggling – From Antiquity to the Middle Ages: the forgotten history of throwing and catching” 書評

シルク・ドゥ・ソレイユ『TOTEM』にも出演したジャグラー、トム・ウォール氏が、ジャグリングの歴史をたどる本を上梓。その名も、

”Juggling – From Antiquity to the Middle Ages: the forgotten history of throwing and catching”

『ジャグリング 古代から中世まで:投げたり取ったりの忘れられた歴史』(訳筆者)

(PONTE STOREから販売中です。)

非常に優れた本でした。編集長による書評です。

 


「『ジャグリング』はいつ生まれたのか」

「ジャグリングはどこの国が発祥で、いつからあるのか?」

こんな疑問を持ったことがあるだろうか。

さて、と腕組みして考える。

ジャグリングはどこで生まれ、いつから存在したか。

もちろん、ホモ・サピエンスが地上に現れた時から、我々人類は、「モノ」と共にあった。石を弄(もてあそ)んでみたり、ちょっと変わった木の棒の使い方を披露してみたり、そういう「技巧的なモノの扱い」という意味で「ジャグリング的な行為」は、有史以前から脈々と存在し続けたはずである。

それは疑いの余地なく、真実だろう。

ジャグリングは、人類の歴史と同じくらいだけ長く存在してきた。

…いや、しかし、「ジャグリング」= ”Juggling”という単語を用いて、現代の私たちがくくっているような分野を指すようになった歴史、となるとどうか。

ずーっと昔から、そう呼ばれてきたんだろうか。

ところが、これが意外にも最近の話なのである。


ジャグリングの「始まり」と本書の構成

本書は二部構成である。

各国に存在してきた「ジャグリング的なもの」を紹介する前半。

そして近現代的な「ジャグリング」という言葉の使われ方の歴史を述べる後半。

前半では古代エジプト、古代ローマからインド、トルコ、中国、日本、果ては南太平洋の島、メキシコ、ヴァイキングなどなど、数多くの地域と文化圏の文献にみられる「ジャグリング的なもの」を紹介する。

そして、歴史に関連づけて、ちょっとした面白い話も随所に差し込まれる。

たとえば「マラバリスタ(西/葡)」という単語が、インドのマラバール海岸の人々と関わりがあったポルトガル商人発祥で使われるようになった言葉だ、など。

▼本書に登場する写真の一部(写真提供:Thom Wall)


▲トンガの女性ジャグラーたち


▲日本の「ジャグラー」たち


▲ノルマン・コンクエスト時代のジャグラー

そして次に、物を技巧的に投げて取る芸が「ジャグリング」という名前で呼ばれてきたのは、どれぐらいの期間のことなのか、ということに関する考察が述べられる。

そこで参照されるのが伝説的ジャグラー、ポール・チンクェヴァッリ(Paul Cinquevalli)である。

チンクェヴァッリは、物を器用に扱って披露する自分の芸は、「鍛錬によって培った技術」であり、「タネも仕掛けもない」ことを強調した。そして、他に類を見ない高度な技で、世界に名を馳せた。

記録によれば、彼の死後「サッカー界のチンクェヴァッリ」というような言い方も一般的にされたほどの有名人だったらしい。そしてチンクェヴァッリが登場する以前は、実は「ジャグリング」という言葉は、エンターテイナー全般を指して、つまりマジックなども含めてすべて「ジャグリング」(とそれの祖先に類する単語)を用いて呼ばれていたようなのだ。

それがついに、チンクェヴァッリの時代を境に、今日的な「ジャグリング」という意味の囲い方を獲得した。

それが20世紀の初頭前後の話。

つまり「ジャグリング」が純粋に物を投げて取る行為のみを指すようになってから、まだ100年と少ししか経っていない。

これは一つの例に過ぎず、本書にはその他にもジャグリングに関わる歴史物語の紹介や考察が、多彩な写真とともにテンポよく、かつコンパクトに進められ、非常に広範な地域からの参考文献や資料がまとまっている。


これからの「研究の裾野」

ではこの百数十ページの本に、どれほどの内容が詳しくまとまっているか。

本書が開いた広大な「ものを投げては取る技術」の歴史の世界は、あまりにも範囲が広い。

まだまだ、本書が拾うことのできなかった歴史もたくさんある(が、それでも、これほど多くの情報をジャグリングの視点からまとめた本はかつてなかった)。

だがそれは当然、著者であるトム・ウォール氏も承知の上。

まずは研究の裾野を作り出す目的でこの本を書いていることを、本書冒頭で明言している。

I challenge future writers on juggling history to dig deep – to find forgotten primary texts and continue to fill in the gaps our knowledge. This book is a step toward a better understanding of the history of the juggler, but the work is far from complete. (p.10)

「これからジャグリングの歴史を紐解いてゆく方々には、さらに深い追求をしてほしい。誰も知らない一次資料を探り当て、私たちの知識に空いた穴を埋めていってほしい。本書は、ジャグラーの歴史を知るための第一歩ではあるが、完璧とは程遠いのだから。」(訳筆者)

 


ジャグリングの過去を知る意味

では、ジャグリングの過去を広く追求し、書き残すことの意味とはなんなのだろう?

最後にその疑問に対する筆者なりの答えを述べて、本書の紹介を終わる。

私たちは、常に過去を参照しながら、新しいものを作り出している。

たとえばボールジャグリングの新しい技に取り組む時、「『今までにない』新しいことをしてやろう」と考える。

ではその「今まで」とはいつのことなのか?

普通それは、「身の回りで参照することのできるもの」を指している。

いつかの舞台で見た圧倒的な技術。周りの先輩。InstagramやYouTubeの映像。

そのようなものから得た知識を参照の軸にして、ジャグラーたちはしのぎを削って新しいことを模索する。

ではもしその参照の時間軸を、「古代」にまで引き延ばすことができたらどうだろうか?

「ジャグリングと呼ばれてこなかったが、ジャグリングとみなしうるもの」まで広げられたらどうだろうか?

たとえば、今は失われてしまった、日本のかつての大道芸の文化を意識して自分のジャグリングを考える。

トンガの女性たちが5個の球をお手玉していたことに思いを馳せながら、自分のジャグリングを考えてみる。

インドの芸人たちのジャグリングはどういうふうだったか、考えながら自分のジャグリングをしてみる。

そんな妄想をし始めた時、そこにはまだまだ「知るべきこと」が山ほどあるように思えてくる。そして、その知識を元にしてあっと驚くような「『今まで』にないもの」を作り出せるかもしれない。

そう思えば、ジャグリングの歴史研究とは、広大な過去の遺産とジャグラーが真っ向勝負できるようになるための、とても有効な手がかりなのだ。

※ ※ ※

この本は非常に優れた「ジャグリングの歴史入門書」であり、また個々のジャグラーのジャグリングを今まで以上に豊かにするための大きな一歩でもあり、そして未だ誰も上梓することのなかった良著である。

文=青木直哉(PONTE編集長)

紹介した本 

”Juggling – From Antiquity to the Middle Ages: the forgotten history of throwing and catching”『ジャグリング 古代から中世まで:投げたり取ったりの忘れられた歴史』(訳筆者)

2019年3月15日から、紙の本と電子書籍で、アメリカのAmazon.comで販売開始。

紙の本はPONTE STOREで取り扱っています。

 

▲著者のThom Wall氏 thomwall.com

 

紙雑誌PONTE休刊のお知らせ

PONTEの紙雑誌の刊行を、いったん中止することにしました。

最新号の紙面で「定期購読を開始します」と宣言しておきながらお恥ずかしい限りです。

中止に至ったいちばんの理由は、読者の方が満足するような形で紙の雑誌を定期的に発行することが、少なくとも今の段階では難しい、と判断したためです。

「今後紙媒体の発行を一切しない」というわけではありません。

むしろ、ここぞというときに質の高い紙媒体を発行したい、と思っています。

そのためいまは、「定期刊行」を中止する、という考えです。

今までどおり、Web上では記事を発行していきます。

PONTEを「雑誌」と呼んでいくことはまだ続けていきます。

紙の出版をたまに行う、「ジャグリングについて考えるWebマガジン」のように捉えていただければと思います。

書いて考える以外のプロジェクトも、少しずつ進めていきたいと思っています。

現在は、看板プロジェクトとして、「Juggle Pack」という、ジャグリング道具を持ち歩くためのいれものを研究、開発するプロジェクトもすすめています。

仮ロゴと試作品

紙雑誌のしっかりした定期刊行を辛抱強く期待してくださっていた皆様には大変心苦しいのですが、ぜひこれからも、メルマガ、Webマガジンならびに、ジャグリングに関わるプロジェクトをいろいろと公開していきますので、何卒、PONTEをよろしくお願いいたします。

書くジャグリングの雑誌:PONTE編集長 青木直哉

2019/02/13

パフォーマンスを身体から切り離す。ジャグラー・小野澤峻さんの美しき試み。

編集長の青木です。小野澤峻さん、というジャグラーの友人がいます。
彼が、”Movement act”と名付けられたこんな作品を発表していました。
(註:記事公開時現在、展示は終わっています。)

 

View this post on Instagram

 

Shun Onozawaさん(@shun__z)がシェアした投稿

小野澤さんは現在、東京藝術大学4年生。
今春には学部を卒業予定。
この作品は、卒業制作として提出されました。
8方向から次々にボールが打ち出されて、中心で交わり続けるこの美しい作品。
ジャグリングをモチーフとして制作された、とのことですが、一体どのような経緯で制作されたのでしょう。

“Movement Act” 作者の小野澤さんインタビュー


青木:この作品のもとになった考えは?

小野澤:「パフォーマンスを身体から引き剥がして展示することはできるのか、ということです。この機械は5分に一回くらいの確率で失敗もするんですよ。そういう風に調整しています。全く失敗せずに終わる回もあれば、(註:この展示会では、15分おきに一回起動して、3分ほど動かしていた)はじめの1分くらいで衝突してしまう回もある。ちゃんと失敗するので、見るたびに異なる結果が引き起こされて、まるでパフォーマンスを見ているようなライブの緊張感、ワクワクする感じが引き起こされる、と思っています。」

作品の説明をする小野澤さん(右)

青木:どんな経緯でこれを思いついたのでしょう?

小野澤:「大学に入ってから4年間ずっと、ジャグリングを美術で表現するにはどうしたらいいんだろう、と考えてきました。でも、そもそも美術予備校に入ったのも高校3年生の9月で、本当に遅かった。入ってからも全然美術の知識がなくて。ジャグリングを演じるという手法しか知らない自分にも嫌気がさしていました。そこで2年生でいったん、わざと直接的にジャグリングを絡めた作品を作って、そこで区切りをつけたんです。」

「3年生の時は、写真をやっていたんですよ。その時の作品で、『こういう細かいところの感覚は、小野澤くんらしい、ジャグリング的な作品だね』と講評されたものがありました。それは、ジャグリングを絡めていないものだったんです。その時に気づいたことがありました。それは、自分に宿るジャグリング性は、身体の技術だけじゃなくて、むしろ世界の捉え方や、ものごとの見方の中にあるんだな、と。」

青木:ではどのようなプロセスで、ジャグリングのパフォーマンス、考え方を展示に置き換えていったのでしょう。

小野澤:「ジャグリングでは、キャッチと投げる、という行為があります。だからはじめは、投げる、取る、という構造でできた、世の中にあるものを洗い出しました。ピッチングマシンなんかも調べました(笑)最終的に、スマートボールにヒントを得て。」
「当初は上方の投げ上げで表現しようとしましたが、それではジャグリングそのものに寄り添い過ぎている。それより、展示をするということに特化した条件で模索をしていった結果、転がす、という結論にたどり着きました。」

(このアカウントで、他にもプロトタイプの動画が公開されています。)

「はじめのプロトタイプは十字のクロスで、これができたのが昨年の6月。そのあといろいろ試行錯誤があり、レールが8本になってから、難易度が飛躍的に上がりました。最終形態の調整には、4ヶ月かかりましたね。レールを0.1mm削ってはテストし、また削り、の繰り返しです。中央のレールがない部分は制御ができないので、バネとボールの距離、そしてレールで工夫するしかないんですよ。でもそこは、ジャグラーとして、あくまでお金を出して解決するのではなくて、手仕事での解決にこだわりました。」

この美しいレールも、全て自身で削って、着色している。

青木:実際の制作はすべて自分で?

小野澤:「発射を制御するプログラムは知人に作ってもらいましたが、それ以外は全て自分で作りました。盤面は木製で、それを削るところから、盤面を支える金属の台は溶接から、ソレノイド(註:発射を担う装置)の配線の格納まで、全てデザインと作業を自分でしています。」

配線について説明する小野澤さん(左)

青木:これからの予定は。

小野澤:「今所属している、先端芸術表現科の院試があと数日に迫っています。そこに受かったら、作品作りはやめて、まちづくりなどの現場に積極的に入りたいと思っていたんです。アーティストやジャグラーを、社会のどこにフィットさせるのかを俯瞰する立場の仕事がしたくて。ただその前に、作家の気持ちもわかるようにしておこう、と思った。だからこの4年間は表現活動に捧げて、それで終わりにしようと思ってきたんですが、まさかこの作品にこんなに反響があるとは思わなくて(笑)ありがたいことに、ぜひ続きが見たい、という声もいただくので、どうしようかな、と迷っているところです。」


小野澤さんのお話を聞いてから見ると、より芯のある作品だ、と感じられました。
ジャグラーとしての、4年間にわたる美術の研究が、シンプルに表されているような気がしました。
ジャグラーが、別の形でジャグリングを表現する、ということの、非常に秀逸なかたちだと思います。
今回の展示は東京都美術館で行われたもので、2019年1月28日から2月3日までで終了しています。
いち観覧者として、ぜひまた多くの人に見てもらう機会があったらいいな、と思う素敵な作品でした。

小野澤さん自身について

小野澤峻(おのざわ しゅん)。ボールジャグリングが得意。本格的な映像制作・写真撮影もお手の物。大きなジャグリングの舞台にも出演経験があり(ながめくらしつによる作品)、「SLOW MOVEMENT」という、障害者とともに作り上げるサーカスの活動にも積極的に参加。さまざまな方面に興味を持つジャグラーです。

小野澤さんが撮影した映像作品

PONTEより

PONTEは、ほぼ個人プロジェクトとして継続しています。
以下リンクから、雑誌バックナンバーや、Tシャツなどのグッズを購入していただけると、とても励みになります。

PONTE STORE
毎週届く、無料メルマガの登録もぜひ。


第7便 (2018/12) シドニーのジャグリング・バスキング事情

こんにちは。オーストラリア滞在中(編集部註:この原稿は12月に執筆されたもので、2018年1月現在、芹川さんは日本に戻られています。編集部都合で掲載が遅れてしまいました。)のエクストリーム芹川です。4月から連載させて頂いているワーホリ×ジャグリングも今回で最終回になります。最後はオーストラリア最大の都市シドニーのジャグリング事情をレポートしていこうと思います。

ハーバーブリッジの下から見たオペラハウス

シドニーについて
オーストラリア最大の人口(500万人以上)を誇り、観光客はもちろん、留学生からの人気も高い都市です。オペラハウスやハーバーブリッジといった有名な観光名所があります。
2018年11月、私の住んでいるブリスベンでは悪天候が続きバスキングが出来なかった為、思い切ってシドニーに行ってみることにしました。ブリスベンからシドニーへの移動手段は飛行機が主流ですが、電車やバスを使っても行くことが出来ます。シドニーでバスキングをしようと思っていたので荷物も多く、飛行機だと金額が高くなってしまうため電車(片道65ドル)を使うことにしました。移動距離は900km以上あり、約16時間の長旅です。車窓からは美しい広大な大地と、野生のカンガルーや野ウサギ(オーストラリアでは外来生物として有名)の姿を沢山見ることが出来ました。

シドニーのジャグリング練習会「Newtown Jugglers」
人口500万人越えの都市というだけあって、ジャグラーも沢山住んでいます。今回、私は滞在期間中にNew Town Jugglersという練習会に参加してきました。毎週水曜日にシティから電車で10分ほどのNewtownという場所で開催されています。練習会には10人ほどのジャグラーが集まっていました。昔教会として使われていた場所を練習に使っているそうです。主催はクラブジャグラーのJulian。彼はパッシングが大好きで、複雑なカウント数でのパッシングや、テイクアウトを混ぜたパッシングを教えてもらいました。WJFにも出場していた世界的に有名なトスジャグラーのKennyも参加していて、一緒に3up360°バランスを同時に成功させようとしていたらあっという間に時間が過ぎてしまいました。練習会後は近くのカフェに集まって、深夜まで和気藹々とジャグラー同士の話で盛り上がりました。毎週恒例らしく、シドニーのジャグラー達の仲の良さを感じました。


(動画:Kennyとの練習動画)

Newtown Jugglersのfacebookページ

シドニーのバスキング事情
シドニーには主に2つの区分のバスキングライセンスがあります。シティ圏内とダーリンハーバーという区域で、それぞれ管轄が異なります。シドニーのシティ圏内のバスキングライセンスは市役所に行ってお金を支払えばバスキングのライセンスを取得することが出来ます。私は滞在期間が短かったので、10ドルで3か月分のライセンスを申請しました。オーディションや説明会に参加する必要も無く、申請用紙を記入して窓口でパスポートを見せて顔写真の撮影をするだけで手続きが完了し、20分ほどでライセンスを発行してもらうことが出来ました。ダーリンハーバーのバスキングライセンスは年に一度のオーディションに合格する必要があるそうで、大きなサークルアクトを行うバスカーは皆ここでショーを行っています。

発行されたバスキングライセンス。可能な場所が印されたマップも貰えました

シドニーでバスキングに挑戦
私が取得したスタンダードライセンスだとサークルアクトを行ってはいけないルールになっていたので、常駐スタイルで挑戦してみることにしました。場所はピットストリートモールという、人通りが多くバスカーの人気も高いショッピングモールです。他の場所とは違い1時間までというルールがあります。1時間帽子を置いてクラブを投げ続けた結果、平日の夕方だったにも関わらず40ドルほどチップが入りました。ここでサークルアクトが出来ればもっと稼げるのに…と思いながら終了しました。(実際はサークルアクトを行っているバスカーもいるそうです)

Pit street mallで入った投げ銭

シドニーのバスカー達
年末のシドニーは多くの観光客でにぎわうため、オーストラリア中からバスカー達が集まって来るそうです。ダーリンハーバー区域に行くと、プロバスカー達による大規模なショーを見ることが出来ました。ニュージーランド在住でプロのパフォーマーとして活躍している日本人のKozoも年末年始はシドニーでバスキングを行っていて、彼のファイヤーショーはとても盛り上がっていました。

ダーリンハーバーでのKozoのショーの様子。写真に納まりきらないくらい大勢の観客がいます

まとめ
私のオーストラリアワーホリも終了したため、今年4月から連載させて頂いたワーホリ×ジャグリングも今回で最後になります。今まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました。
私はジャグリングというスキルがあったからこそ、海外でも沢山の友達が出来て、バスキングでお金を稼ぐことが出来ました。そして何より、自分の人生の中で最も挑戦した1年になりました。
この記事がきっかけで、少しでも海外に興味を持ったり、実際に海外のジャグリングイベントに参加する方がいたら幸いです。絶対楽しいですよ。
最後に、声を掛けて頂いたPONTE編集長のNaoyaさんにこの場を借りてお礼申し上げます。

1年住んだブリスベンにて最後のバスキングショー後に撮った記念写真

おまけ
2019年のオセアニアはジャグリングイベントが目白押し!
日程の分かるものをまとめてみました。1月~2月にオセアニアをジャグリング旅行するのはいかかがでしょうか。
1月9日 Capital Fight Night(キャンベラ)
1月17日~21日 Spin Circus Festival (メルボルン)
1月25日~28日 Newcastle Juggling Convention(ニューキャッスル)
1月31日~2月4日 New Zealand Juggling & Circus Festival (ニュージーランド)
4月25日~28日 Adelaide Juggling Convention(アデレード)


芹川さんご自身のブログはこちら。

この他にもジャグリングに関する話が毎週読めるメールマガジン、「週刊PONTE」にもぜひご登録を。