日記

  • 3月28日(木) はじまり

     数日日記を休んだ。漫然と書くより、もっと大事なことを書く方に力を使ったほうがいいんじゃないか、と思ったから。でもひとつをやめたからって、もうひとつの方を書くわけではない。むしろ、キツキツなスケジュールのほうがクオリティは上がる。なんかパッとしないなぁ、というとき、サボっても良くならない。何かのクオリティを上げたければ、忙しくするほうがいい。ちょっとキツくする方がかえっていい。

     なんてったって文章書くのは僕の仕事なんで、真剣にやるのがいい。

     そんなわけで、ここで書くことを本にしよう。そういう意識で、ちょっとでも面白いことを書くんだと思えていれば書きやすい。「何にもならないけどとりあえず続ける」のが一番きつい。それよりも、「完成形に向かって続ける」ほうが、同じようにキツくても充実感がある。はるかに練習にもなる。先に楽しみがある負荷にしないとね。

     計画を立ててみよう。僕はどんな本を書きたい? 真っ先に思いつくのは、「『オーストラリアに行く』ということへの不安と、それに対して何をしているのか」ということ。帰ってきたら、実際にどうだったか検証する。オーストラリア行きを、ただ呼ばれて行ってきました、ではなくて、自分から積極的に、一個のプロジェクトとして成り立たせる、ということである。「ジャグリング」は、それ単体で存在しているわけではない。ひとりの人間の生活があり、その周りで起きることがあり、その上に成り立つものだ。それを、捨象しないで書いて、残したい。

     昨日はYDCで練習した。YDCってのは、桜木町でやっている集まりである(本当は大道芸クラブなんだけど、ほとんどの人がジャグリングをしている)。僕はもう15年近く通ってる。ノートをつけつつ、ディアボロをやった。技を練習する、というのではなくて、自分の練習の取り組み方を追求する、という意識でやっている。今の最大の関心ごとは、「わたしたちはどうジャグるか」ということ。これが、僕がワークショップでやる内容と、自分の演技、どちらにもつながっていく。英語でやるから、英語でノートをつけてる。

     僕がやる予定のワークショップは、

    1. Vertex Technique
    2. Introduction to Diabolo and Movement
    3. Confortable Juggling

     この3つ。1個めはまぁ、具体的な技術の話なので特に台本の準備はいらない。僕がディアボロの中でも得意なバータックスという回し方の、細かいコントロールのコツをやる。上級者向け。僕は2012年にフィンランドで、「バータックスで、自分が回らずにその場で回す技術」(やらない人には分かりづらいですが、そういう特殊な技術があるんですね)を教えてもらって、それを度々人にも教えている。これにはたったひとつの重要なコツがあって、でもそれさえわかっちゃえば自由自在です、ということを教える。

     2個目は、「ディアボロと動き:入門編」ということで、ディアボロを扱いつつ、どう身体を使うか、というテーマでみんなとワイワイやりたい。ワークショップってのは、ワイワイやるのが好きだ。僕は何かを教える、ってのが苦手なんだ。端的に言って、僕が人からものを教わるのが嫌いだから。枠組みだけを知りたい。あとは自分でやるから。ワークショップって、なんか講師がなんとなく全体をリードする役割としてそこにいて、あとは参加者が独自に考えて欲しいな、みたいに思ってる。でも、それを笑いの溢れる空間でやりたい、と思ってる。で、なんだっけ、そうそう、ムーブメント。僕はディアボロを操っているときにぶらぶら動く。これをテーマにやるんだ。で、動くったって、なんとなく、クリエイティブに!動いてください!って言っても具体性がないし、そもそも芸がないんで、一応説得力のあるメソッドみたいなのがあったらいいんじゃないか、と思って、そのメソッドを作るためにワークショップをやることにした。けどこれはいい選択だった。なんだか、自分のジャグリングを深く見直すきっかけになってる。今のところ大事だと思っているのは「効率」というキーワード。ジャグリングは、練習を効率よくやるために、効率のいい準備、効率のいい練習方法、効率のいいボールの拾い方をどんどん身体が覚えていくので、とにかく全体的に効率がいい身体の動きになっていく。つまり普段練習していることが「技」という単位で考えられていると、その「技」の習得に最適化された身体の作り、動きになっていくのだ。そしてときに、それは効率が良すぎるのだ。その効率を逆行させ、非効率にする、という意識が、強力なツールになるんじゃないか、という仮説を今自分で検証中。それを、まずは向こうでシェアする。これからも育てていきたいワークショップ。

     3個目が結構重要で、これは「いかに気持ちよくジャグリングするか」ということを考える時間。単純に、腕を大きく振ってボールを投げると気持ちいいですよ、ということを超えて、それ以上に行きたいんですね。いや、そういうこともエレメントの一つで、すごく大事である。でももっと大きい話に持っていきたい。そもそも、ジャグリングの「技」を一生懸命練習して、習得しようと試みる、というのが、僕は疲れちゃうんだ。落としたらその度に悔しい。汚れるし、怪我するし、ああ。それはそれで楽しいんだが、それ以外の楽しみ方も持ちたい。そして、ジャグリングを「する」ということ以外の関わりにも、ジャグリングの気持ちよさというエレメントは宿っているんだよ。その辺りを、実践と会話で共有したい。こんなこと僕は考えています、と発信して、みんながどんな反応をするのか、見たいのだ。つまり、ワークショップ、ってのは、ここでこうして書いて、ネットに置いている、とか、本にしよう、みたいなことともほとんど同じなんだ。■

PONTEは「旅とことばとジャグリング」をテーマに活動しています。

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