ジャグリングがつなげるもの 特別編 ジェイ・ギリガンに会いに。(1)

2016年7月4日発売『書くジャグリングの雑誌:PONTE』第12号では、編集長自らがニュージーランドへ行き取材をしてきた様子を掲載しました。その全編を毎週水曜日、8月3日まで全5回でWebに連載。

お楽しみください。

(2016年7月4日発売『書くジャグリングの雑誌:PONTE』第12号より転載)

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ジャグリングがつなげるもの 特別編 ジェイ・ギリガンに会いに。(1)

ニュージーランドに行くことを決める

その時私は白いシャツの上に黒いセーターを着ていて、平日の昼に暇な人たち(しわくちゃなおじいさんとか、読書がいかにも好きそうなおばさんとか)に囲まれて、近所の市立図書館の長机で茂木健一郎とジャズミュージシャン山下洋輔の対談本を読んでいた。そして急に、「そうだ、俺はなんか面白いことをしよう」と思い立った。
心を決めたら別に理由もなく机を立って外を歩きはじめて、じゃあ行こうか行くまいか迷っていたニュージーランドに旅に出よう、と決心した。その日家に帰ったら、まず海外に行くことを実家の両親に伝えてその場でパソコンを開いてチケットを取った。
出発は一週間後。
国について何も知らなかった。どれくらい時間がかかるかも知らなかった。一体いまどんな気候なのかも、果たしてビザはいるのかどうかも何も調べなかった。

出発の日の夜8時に、チャイナ・エアの飛行機は、ニュージーランドに向けて出発した。

 

コリンおじさん

ニュージーランドは二つの島からなっている。
その中でも北にある島の真ん中に位置する”オークランド”が最終目的地だった。
オークランド空港では5時間以上待つことになっていた。あらかじめ連絡をしておいたコリンおじさんに、町まで車で乗せて行ってもらうためだ。夜まで迎えに来られないというので、別に急ぎでもないから彼を待つことにしたのだ。コリンとはFacebookで知り合っただけで、面識はない。
空港に着いたのは17時。ずいぶん大仰な検疫があって、ロビーに出たのは18時過ぎだった。
2万円をニュージーランドドルに両替する。受付をしてくれたのは肌の浅黒いおじさんだ。マオリ族の血を引くのかもしれないし、東南アジア系なのかもしれない。そのお金を持ってマクドナルドに行ってお腹をみたしてから、残りの時間を過ごすために入国口前の黒いベンチに座った。
ずいぶんな数の風景を黙って眺めることになった。とんでもない金切声をあげながら半狂乱で待ち人に駆け寄るおばさん、ブロンドの若い女性を静かに微笑して迎える、刺青だらけの兄ちゃん、頑張ってみんなが映るように棒でセルフィーを撮る日本人の卒業旅行の団体。

コリンは青いクラブ3本を持って後ろから現れた。
「元気か」
と言って、ニンマリ笑いながら覆うように私の肩を抱いてきた。ずんぐりしていて、強そうだった。髪の毛はほとんど剃ってある。下はベージュ色の半ズボン、上は釣りに行く時に着るようなジャケットを羽織っている。アゴには白い無精ヒゲが生えており、シワといい、その手の大きさといい、大胆さと年齢の重ね方の重厚さが黙っていても伝わってきた。暇だし俺たちにはコーヒーが必要だし、カフェに行こう、というので、空港の二階でコーヒーをご馳走になった。
彼は軍人として海を渡ったこともあり、70年代には日本も訪れたそうだ。ラグビーが大好きで昔はプレイもしたし、今でも観戦はよくするという。キウイ(ニュージーランドの人は自分たちのことをこう呼ぶ)の誇り、オールブラックスが踊るマオリ族の舞踊「ハカ」や、原住民の文化、言語についても終始笑顔で語ってくれた。

 

ディーナとコリンと街へ向かう

もう一人私と同じように車に乗る、ディーナという女性がいた。ハワイ生まれだが今はアメリカに住む50代だという。もう時計は23時過ぎを指していたが、またさらに2時間ほど待つことになった。合計7時間も空港のロビーにいたことになる。
コリンと一緒にまたマクドナルドのポテトを食べていると、ブロンドの女性が出国ロビーの中に入ってきた。
コリンはニヤリとしてその人と抱き合い、積もる話を意気揚々とし始めた。これがディーナのようだ。それまで不完全な英語話者(私だ)とずっと話していたこともあって、ストレートに英語を話せるのが嬉しいようにも見える。足早に歩き始め、車に乗って、コリンはエンジンをかけた。

もう深夜であるが、交通量はそれなりに多い。空港から高速道路を抜けて、オークランドの街を眼下に臨みつつ郊外の町フアパイへと向かう。彼はフアパイでピッツェリア(ピザ屋)を経営している。その店の向かいのレストランで、フェスティバル前夜のジェイ・ギリガンによるショーも行われる。まずは初日の宿泊場所へと向かった。

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(2)へ続く

 

冊子で読みたい方はこちら。他にもインタビューなど掲載。

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文・写真=青木直哉


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