ナコタ・ラランス ネイティブアメリカンフープダンス・ワークショップ 2016年3月30日(水)

取材・文・写真=青木直哉

2016年3月30日、シルク・ドゥ・ソレイユの演目TOTEMでプリンシパルダンサーを務めていたこともある、 ナコタ・ラランスさんのワークショップに行ってきました。フープダンサーAYUMIさんに声をかけていただいたのがきっかけ。
AYUMIさんはフープ東京の代表で、以前PONTEでも取材したことがあります。

「ネイティブアメリカンフープダンス」?
ナコタ・ラランスさんは、ネイティブアメリカンフープダンスの名手。
といっても、それってなんだろう、というのが正直なところでした。
実際にナコタさんによるデモを見ると、技巧をバリバリ見せるようなタイプではなく、フープとともに、大地を踏みしめながら舞う、という印象の踊り。
ナコタ・ラランスさんの父スティーブ氏に話を聞くと。
スティーブ氏
「ネイティブアメリカンの伝統で、葦を編んだ輪を使う踊りがあった。
もともとは「癒し」をもたらす儀式だった。各々の部族で、似たような伝統がある。
モダンなネイティブアメリカンフープダンスはここ20年ほどで発達したもので、それまでは踊りそのものが忘れられていたんだよ」

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(下)赤いチョッキがスティーブ氏。ワークショップ後のトークセッションで。
つまり、最近になって「再発見された文化」だとも言える。
アリゾナ州フェニックスにあるハード博物館(1929~)では、1990年から毎年フープダンスの大会が開かれているのだという。
開始当初は20人だった競技参加者も、昨年は86人が参加したと言います。
今は、スティーブさんとナコタさん、子供達にも熱心に教えているようです。

 

ナコタさんのバックグラウンドとワークショップの中身
ナコタさんは、4歳から今までずっとフープダンスをしている。(現在26歳)
マイケル・ジャクソンのビデオに触発され
スティーブ氏「ビデオが擦り切れるほど見ていたね」)
ヒップホップやブレイキンも習得し、今ではそれらを組み合わせたスタイルで踊っています。
 ワークショップでは、ネイティブアメリカンフープの基本的な動作をレクチャー。
1本に始まり、2本、3本とだんだん数を増やしていき、最後には「世界」の形を作るところまで。
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これが「世界」
多くの形にはモチーフがあり、(ワシ、水蛇、馬、人生など…)それについてスティーブ氏は
「フープは、人々、四季、自然といった世界のあらゆる美しいものを象徴している」
とのこと。
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これは水蛇(=ワニ)

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参加者は女性のフーパーが圧倒的に多かったです。

他に東北の郷土芸能「鹿踊り(シシオドリ)」の踊り手、アニメーターの方、スピナー、ジャグラーが何人か、総勢20名でした。
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アニメーター 山本美佳さんとラランス親子
特にアニメーターの山本さんは、ナコタさんの大ファンだということで、彼をモチーフにした圧巻の絵を描いて持ち込んでいました。

 

21世紀のパフォーミングアーツ
伝統から出発しつつも、様々なものを取り入れていくその姿勢は、ジャグリングと似ているところがあるな、と思いました。
しかしネイティブアメリカンフープダンスには、「精神性」が色濃く残っている。
聞いた話だと、大会に出るにはネイティブアメリカンの血を何かしらの形で引いていなければならないのだとか。
もちろん見かけ上のパフォーマンスとしてこのダンスを行うことは誰にも可能で、ナコタさん達もまた、自分たちの踊りを我々日本人と共有することを楽しんでいましたが、一方で「ネイティブアメリカンのアイデンティティー」としてのフープダンスの姿も垣間見えました。


【お知らせ】

AYUMIさんが特集されたPONTEです。
ハード博物館公式サイト http://heard.org
Pueblo of Pojoaque Youth Hoop Dancers(ラランス親子も教えている)