月別: 2016年1月

第38回「できない技は一時間まで」のリミット

カナダで修行中のディアボリスト浦和新が、TwitterとFacebookで4ディアボロハイトス3回転ピルエットを練習する動画を出していた。
彼は「一時間練習しても成功しなくて地獄だ」と言う。

「一時間練習しても成功しないこと」を「自分の実力を上回ること」だとする態度は、できそうでなかなかできない、プロとしてけじめのある意識だなと思った。
できない技があると、何時間でもだらだらと練習してしまうのが常である。

ジャグリングだけではなくて、文章が書けなくて、丸一日かけて書いてしまうようなこともある。それはそれで達成はされるが、俯瞰的な視野で見ると、「できないことを無理してやっている」というだけのことで、言うなれば運を待っているような部分がある。

浦和新の態度には、「時間は限られてるんだから」という前提が明確に見えて、自分を高めようとする者の覚悟が感じ取れる。そうか、そうだよなー、と、同い年のアーティストだが、全然そんなことは関係なく、我が身を恥じた。

一方で渡邉尚さんのように、「メニューを決めて練習するということをしない」というやり方もある。彼のやり方は「感じる引力に従ってジャグリングをする」という全く別のアプローチであるから、またそれはそれである。彼なりの、けじめのある練習の仕方が絶対にあるはずだ。

浦和君には、明確にどこまで「できる」必要があるのか決める姿勢がある。5分を無駄にしても「無駄なことをしてしまった」と言う。そりゃいくらなんでも厳しすぎるんじゃないの、と思うが、根本的な意識はそれくらいでいないと技術的な高みは目指せないよ、というメッセージにも受け取れる。

壁を登るのと同じように、「上に登るには手の届くところの石を掴み続ける」というのは、どんな分野でも共通である。「帰れまテン」もいいが、限界を決めて、一度悔しい思いで練習場を後にするのもまた大事なガッツだぞと諭されたようであった。

第37回「旅と引力」

実際に行くつもりで海外に目を向けてみる。いろいろなジャグリングイベントがある。もちろんあることは知っていたのだが、実際に行く仮定の下で眺めてみると、おおいにワクワクしてくる。インドでもジャグリングコンベンションがあるんだなぁ。

たとえばインドは一度行ってみたい。今どういう状況なのかは知らないが、やはり椎名誠や沢木耕太郎が描いたような乱雑さに一定の興味がある。行ってみればなんてことはなかった、というのも往々にしてケースではあるが。

それでもとにかく、まずはフィリピンのフロウ・フェスティバルが4月末にあるというので、行ってみることにした。ポイのYutaさんもゲストでいらしたことのあるイベントだ。一体どんな様子なのだろう。私はアジアのジャグリング事情をまだまだ知らない。

なんで急にこんなようなことを思い立ったのか考えると、旅をすることが今の自分にとって一番ワクワクすることだからだ、というのが答えである。畢竟、それぐらいしか「追いかけるべきもの」っていうのはないんじゃないかという気がしているのだ。

先日渡邉尚さんとひさびさに話していて、「引力」ということばが出てきた。自分がこの道具をなぜか選ぶ。引力。自分がなぜかあの人に惹かれる。引力。じゃあ今自分に最も美しく映るものはなんだろう。そう考えたら、それは旅をすることだった。

雑誌、つまりその体験を書く場所という格好の動機を既に持っていることも、ますます引力の信仰に拍車をかける。私は全く信心深い方ではないが、引力ということばには何か説得力がある。自分の背中を押す一言として、ちからがある。
しばらく私は、旅への引力に身をゆだねてみようと思う。

第36回「韓国で思い出すことなど」

韓国のジャグラーの中から5年以内くらいに、すごい人が出てくるんじゃないかと密かに予感している。日本や欧米諸国に比べれば、平均的な技術レベルも人口もアイデアの豊富さも、まだまだこれからで、今すぐにでもという感じではないのだけど、韓国は次なる鉱脈であるかもしれない。

今もし韓国から、突拍子もないことをしでかすジャグラーが現れたら、これは面白い。と同時に、少し怖い気もする。気を抜いていたら、日本のジャグリングが脅かされるかもしれない。別に各国のジャグリングスタイルに優劣があるというつもりもないが、やはり自国のジャグリングも応援したい。

日本が、20年くらいの間に飛躍的にジャグリングを発達させたことを鑑みると、韓国を起点に、再び爆発的に多様性が増す可能性もある。

しかし現在は映像も何も簡単に手に入る分、「自分の頭で考える」必要が比較的少なくなってきていて、かつての日本のような、ガラパゴス的な発達は見込みづらいのかもしれない。だから一概に、「みんなジャグリングし始めたら、どんどん面白いものが出てくる」というのも、ナイーブだ。

ただ韓国に実際に行くまで(行ったことのある今でも少し)かの国の人々は、パフォーミングアーツにかけては至極ストイックだ、という印象があった。だが韓国ジャグリング協会事務局長のシンさんはじめ、皆さん本当に和気藹々とやっており、むしろ牧歌的なくらいで驚いたのを今でも覚えている。

果たして、お隣韓国から、アッと驚くようなジャグリングが次々に出てくる時代は来るのでしょうか。同じアジアの国とは言え、20年前の日本とは置かれている状況が違う分、多様性の伸び方も全く違うんだろうな。技術的にというよりは、コミュニティのあり方などで、革新が起こる可能性も有る。

まぁしかし、一番韓国のことでよく覚えているのは、大会の後食べに行ったサムギョプサルの深刻なウマさである。あれは、ウマかった。実にウマかった。
サンチュで包んだ肉の味を思い出すと、またKJFに行きたくなってくる。というか、サムギョプサルを食べたくなってくる。うーむ。

【PONTEレポート】ホゴノエキスポ2016/Hogono Expo 2016 review (JP/EN)

ホゴノエキスポ2016

(English ver.)

ホゴノエキスポという、ジャグリングがメインのイベントに編集長青木が参加してきました。

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牛タン定食

2000年代初頭から仙台でずっと開催されているイベントで、日本のジャグリングがまだ黎明期だった頃から脈々と続いています。
今回の開催場所は仙台駅から地下鉄ですぐの、三越の上にあるスタジオ。
主催はホゴムラ名人こと、本郷さんが率いる、「ホゴノプロフィス」。
運営を仕切っていたのは、JJFの審査員なども務めていらっしゃる結城(ゆうき)敬介さん。
 ゲストとして、今各所で活躍の場を広げている若手サーカスアーティストハチロウさんと、全国津々浦々、いろいろなところで長年愛されているマイムのベテラン、加納真実さん。

 

ホゴノプロフィス代表 本郷さんMr.Hongo
司会の結城敬介さん Keisuke Yuki
ハチロウさん Hachiro
加納さん Mami Kanoh
主催の方々は「数年前までは20〜30人規模で、大きなイベントではなかったが、最近は首都圏からも人が来て、50人以上が集まるようになった。でも雰囲気は変わらず、ゆるい」とコメント。
実際、雰囲気は参加者全員が垣根なく交流できる、気負いのないものでした。
開場も少し時間を押してのんびりと始まり、集まったジャグラーたちが各々練習を始める。
開会宣言の前に、加納真実さんとハチロウさん、結城敬介さんとiPadで音楽を奏でる南部大地さんのコンビ「マヤマ」によるパフォーマンス。

 

Daichi & Keisuke juggling
Hater warming up
Kano goes crazy
その後は自由練習時間。ハチロウさんのワークショップを挟んで、再び自由練習。
最後のプログラム、世界ハイパフォーマンス王選手権では、合計8組のパフォーマーが演技を披露。主催本郷さんとその娘さんによるパフォーマンスと、司会結城さんによるMCも、会場の温かい笑いを誘っていました。
3位は、自信がなさげでありながら堅実なパフォーマンスを披露したクラブの堀越さん、2位は同じくコメディチックなクラブの演技、たくぞーさん、優勝は、ギャグ路線で観客の心をつかんだ谷・杏ペア。

 

本郷さんと娘さん
自信たっぷりのたくぞーさん
たくぞーさん
こまつさん
谷・杏ペア
踊りだす谷・杏ペア
「温かい目で見てください」と堀越さん しかし3位の実力
気持ちのいい演技をしてくれたくまーさん
「じゃない方」と呼ばれ続けるJINさん
ホゴノエキスポ常連 パワーバランス広幡さん
商品として提供したPONTEは、優勝の谷・杏ペアへ。
他にも豪華商品がたくさん。
優勝 谷・杏ペア with PONTE
優勝 谷・杏ペア with PONTE
YouTube全盛の時代で、コンベンションの技術的な交流の場としての意味はかつてよりも薄れているようにも思いますが、かえって、「同じ興味を共有する人たちが集まる場」としてのコンベンションの面白さを実感した仙台滞在でした。

 

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会場前。仙台にしては珍しく、雪がしっかり降っていました。
記事文責・写真:青木直哉
記事の内容などでお気づきの点がありましたらお知らせください。
jugglingponte@gmaill.com またはコメント欄まで。

English ver. (translation=Nao)

Hogono Expo 2016
Nao from PONTE team joined a juggling festival in Sendai (Northern Japan).
This event has quite a long history as a juggling convention in Japan, since early 2000’s, when juggling was still its dawn in our country.
The festival site was near from Sendai central station, at a hall in a department store which I found a bit strange, but the hall was nice anyway.
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Sendai main station
The event is organized by Mr.Hongo, who has his own production office “HogonoProffiCe”.
It was so nice having those talented guest performers, Hachiro (juggler), and Mami Kanoh (mime).
Hachiro’s fluid juggling style is remarkable, which I think should be known a bit more around the world!
cf.) Hachiro (Ball juggler)
“A few years ago, in the event there were only like 20-30 jugglers from Tohoku, but now more than 50, including those from Tokyo. Still, its cosy atmosphere has not changed” said the main organizers.
It was, indeed a very relaxed convention.
ホゴノプロフィス代表 本郷さんMr.Hongo
司会の結城敬介さん Keisuke Yuki
ハチロウさん Hachiro
加納さん Mami Kanoh
Opening show was delayed for 30 minutes, and yet juggling session with Hachiro, Keisuke Yuki, and a musician Daichi Nambu was flawless, and mime act featuring some Japanese anime by Mami Kanoh was just hilarious.
session
session
Most of the time, it was free practice session, so we just juggled, talked to each other, and had lunch together(Sendai is famous for good beef tongue, and of course I tried it, well, woo, it was extra delicious).
It had also a performance contest, which hosted 8 jugglers, and a performance by Mr.Hongo and his beloved daughter Momoka-chan.
The winner was a Tani&Kyo’s pair juggling.
谷・杏ペア
Winner Tani & Kyo

In this YouTube era, maybe the meaning of a convention as a opportunity to exchange their technique is less, yet Hogono Expo this time taught me again the joy of juggling, and the meaning of a convention as just an opportunity to “meet” people. And having a good speciality food.

 

Text and photos by Nao

ギヨーム・カルポウィッツ(ディアボリスト) インタビュー Interview with Guillaume Karpowicz (Diabolist)

(English ver.)

一ヶ月ほど前、ギヨーム・カルポウィッツ(Guillaume Karpowicz)というフランスのディアボリストが、YouTubeで新しいビデオをリリースしました。

“One Diabolo”

筆者はFacebookでこのビデオが流れてきた時、思わず叫び声を上げてしまいました。
彼なりの新しいスタイルである上、面白い。技術も卓越している。

現在のディアボロ世界全体の技術レベルは、日進月歩です。
反面、スタイルにおいては、似通ったものが多い、というのが正直なところです。
このビデオは、そこに現れた光明でありました。
PONTEは、すぐに彼にメールを送って、インタビューを行ってみました。

質問・翻訳:青木直哉(編集長)

ギヨーム・カルポウィッツ インタビュー (2015年12月)

-ディアボロはどれくらいやっていますか?

2015年時点で、12年です。

-現在、DOCH(スウェーデンのサーカス学校)では何年生で、いつ卒業する予定ですか?

3年生で、2016年の6月に卒業する予定です。

-1日どれくらい練習しますか。どのような練習方法をとっていますか。たとえば、練習中にノートをとったりなどしますか。

僕は、ある期間がっつりやって、ある時はぱったりやらない、というタイプです。
なので、1日何時間もやる日を毎日続けて、ある時は全く練習しなかったりしますね。
新しいことを見つけたい時は、即興を試すか、コンセプトを決めて、それに沿ってやります。

コンセプトなら、まず制約を決めるか、特に掘り下げることをひとつ決めたあと、自分にとって自然だ、明快だ、と思える動きを模索していきます。
ノートは基本的にはほとんど取らないですね。
必要だと感じたら取ることがある、くらいです。

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(photo=Einar Kling-Odencrants)

-ダンスは、学校で習いましたか、それとも自分でやりましたか?

学校でダンスの授業はあるにはありますが、基本的には自分でやりますね。
およそ練習ということに関しては、なるべく無理にやらないようにしています。特に決まった練習方法があるわけでもありません。
好きな動きを何回も何回も繰り返したら、そのうちに勝手に身についてきます。

-スティック2本、あるいは4本を使って形をつくるアイデアはどこから来たんですか?

ダンサーと一緒にいるうちに思いつきました。
もっと具体的に言うと、ニキ・ブロムバーグ(Niki Blomberg)という友達が、フィンガータッティングを教えてくれて、その振り付けを模して作ったのが、最初のスティックの動きになったんですね。4本を使うアイデアは、自然に湧いてきました。見た目も悪くないし、可能性が広がるのは明らかだったので。
始まりはそんな感じなんですが、それ以降はフィンガータッティングを教えてもらうのはやめたんですよ。なんでかというと、あんまり影響を受けすぎたくなかったから。もっとスティックを使って何か作ろう、と思って。タッティングの基礎は、もう分かったし。
他に僕がやっていることに近い分野では、スティックを使ったコンタクトジャグリングもありますよね。
もうそれはすでにいろんな技が開発されています。アンチスピンとか、アイソレーションとか。でも、とにかく僕は、スティックとディアボロを使ってでしかできないこと、を研究したいんですよ。

-音楽を練習中に聞きますか?聴くなら、どんなものを聴きますか?

音楽はだいたいどんなジャンルも好きです。けど、特にハウスとアンビエントが好きかな。進化が早いので。ミニマル音楽も好きで、まぁ要するに、やたらに音が多くなくて、限られた音が使われている感じの音楽が好きなんですね。

-次のEJC2016には来ますか?

んー、たぶんね、行きたいとは思っているよ!

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Guillaume
 

ギヨーム・カルポウィッツ:フランスのディアボリスト。長身。ワインを、3ミルインワンハンドをしながら飲んで見せてくれたことがある。

(photo=Einar Kling-Odencrants)

紙雑誌PONTEの最新号も発売中です。

English ver. (translation=Nao)

Last year when I saw his new video, for the first time on Facebook, I almost cried.
His style was totally original, and technically hard at the same time.

“One Diabolo”

In diabolo scene these days, the general technique level is skyrocketing (there are some players who spin 5 diabolos at a time, on one string, can you believe that? 10 years ago, there were only a few who could do 3.), but honestly speaking, the variety in style is not that much diversified.
Now this video by Guillaume, a talented French diabolist studying at circus school DOCH is one of the breakthroughs.

PONTE interviewed him by e-mail.

Interview with Guillaume Karpowicz (Diabolist)  (in Dec. 2015)

Interviewer=Nao (PONTE chief Edt.)

1. How long have you been diabolo-ing in your life?

I have been doing diabolo for 12 years now.

2. What grade are you in DOCH, and when are you supposed to be graduating?

I am in my third year, and graduate in June 2016.

3. About how long do you practice/research a day, and how do you proceed the research mainly? Do you take notes in practice for example?

I work by periods, of intensive work and no work at all. So I could practice sometimes many hours a day for a while and then nothing at all for another while. When I want to come up with new material, either I improvise or I work with concepts. When it’s the case, I am starting with a general idea or focus and then I just explore what feels obvious or natural to me. I rarely take notes in the practice but I do take some afterwards, If I feel I need to.

4. Did you learn dance at DOCH, or you just trained it by yourself?

We do have the occasion to learn dance at school but I mainly do it by myself. In that case, I really avoid to force myself when it comes to practice and I don’t have any method. I often just repeat the same moves so many times because I like it and it just evolves with the time of the repetition.

5. Where does 4(or 2,) sticks shape making idea come from?

It came from being around dancers. More concretely, a friend of mine, Niki Blomberg, taught me Tutting and the first stick shapes were translated from a choreography I learned. Then it came naturally to me to add extra sticks. It was an obvious way to make it more visual and to give it more possibilities. That was the starting point, but since I explore that, I stopped learning more Tutting stuff because I don’t want to be influenced too much in that direction so I rather explore with the sticks, I already know the basics anyways. Another close field is the contact juggling with sticks where many techniques already exist such as anti spins, isolations etc. But again I rather try to focus on the things that only my props can do.

6. What kind of music do you listen to while you practice, or you don’t listen to any?

I can listen to many genres of musics. I especially like house music and ambient because those genres often evolves progressively. I like minimal music and by that I mean music that tends not to have so many different sounds and that stick with few of them only.

7. Are you planning to come to the next EJC2016?

Probably yes, I would like to!

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Guillaume Karpowicz : French diabolist. He’s tall.(At least for a Japanese’s eyes) He once showed me drinking a bottle of wine, doing 3 diabolos in one hand.

(photo=Einar Kling-Odencrants)

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2015年冬号訂正とお詫び

【訂正用画像】PONTE2015年冬号

 

PONTE2015年冬号/P37に誤りがありました。

正しくは、以下のようになります。

【P37/筆者紹介】
誤:ツイッターアカウント @botamoti28
正:(ツイッターアカウント無し)

混乱を招き大変申し訳ございません。
お詫びして訂正致します。